Destinyバトル ~勇者なんて御免被る!~

いちごさき

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2 ダンジョンに潜入してみました!

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2 しゃべる剣ってあるんですね


 洞窟内は、予想以上に奥へ広がりがあった。

 次々と現れた獣型の魔物を、サクッと剣で倒して奥へと進む。
 この洞窟に生息してるた魔物はワイルドウルフ、ダンジョン猪、ミノタウロスといった獣型ばかりで、しかも瘴気に汚染されたタイプじゃなかった。なので、ありがたく今後の食料と活動資金の足しになってもらう。ちなみに瘴気に侵された魔物は凶暴化するうえ、皮や骨などの素材はすべて劣化して売れない。せめて食料としてと思っても、肉は毒塗れで食用にならないのだ。

『今夜は焼肉パーティーだねぇ』
 ミノタウロスの焼き肉が大好きなシフが、嬉しそうに周囲を飛び回る。確かに美味いし、俺も熟成させたミノタウロス肉はお気に入りだ。
「だな。まさに魔法鞄様様だ」
 軽口抜きした、かつてミノタウロス現在肉と素材を手早く収納する。
 魔法鞄とは、容量増加の魔法がかけられた特殊な鞄のことだ。鞄といっても腰に取り付けた小さなポーチ程度の大きさで、しかしその容量は、見た目の何百倍も収納できる優れもの。しかも値段さえ出せば、収納したものが劣化することも無くなるのだ。おかげで手に入れた獲物も苦労なく持ち帰れるため、大概の冒険者は必ず一つは所持していた。

「これまで手に入れたのは宝箱5つで鎧とアクセサリーが3つ、回復薬か。にしても」
『なんか、みーんな古そうだねぇ』
 そう。宝箱から手に入れたものすべてが、何処かしら汚れていたり傷んでいたのだ。
 一番頭を悩ませたのは回復薬で、巷に出回っている薬師製の物とは似ても似つかない代物だった。
 通常、回復薬は効果の高さによって詰められた瓶のデザインが定められている。
 一番効果の低いものは茶色、真ん中は緑、一番効果が高いものは青だ。
 しかし宝箱から見つけたその回復薬は瓶の色が白で、表面に刻まれた文字も古代ルーン文字だった。

『……まさかとは思うけど、飲まない、よね?』

 そう問い掛けてきたのは、光の精霊キララだ。金色の髪と白いローブに身を包んだ15歳くらいの見た目の少女で、ちょっと引っ込み思案なところがある。
 ランタンで片手が塞がるのはリスクを伴うため、小灯(ライト)を出してもらっていたのだ。
「確かに中身は少し気にはなるけど、さすがに飲む勇気は無いな」
 瓶には劣化防止の付与がされているから中身は無事だろうが、見たこともない回復薬を飲もうとするほど楽天家じゃない。今のところ回復薬には困っていないし、どこかの街の薬師協会もしくは魔女協会に持っていけば、高値で買い取ってくれるかもしれない。
 何せ、未知の回復薬だし。
『そっちのミスリルの鎧も、すごい特殊効果が付与されてるね』
「え、本当か?」
『ウン。全状態異常無効化と自動回復……あ、これ光の大精霊様の加護だ。すごいね、ボク大精霊様の加護が付いたものなんて、ハジメテ見たよ~』
「いや、俺だってそうだよ……って、もしかしてコレ、伝説級の代物なんじゃないか?」
『そう、かも。大精霊様が、人間の持ち物に加護を与えるなんてまず無い、よ?』
 やべ、何か変な汗が出てきた。
 手に入れた鎧が国宝物の鎧かもしれないと思ったら、ただ持ってるだけでも緊張してくる。
「…こんなモンが出てくるダンジョンって、ここって実はめちゃくちゃ危険なんじゃ?」
『ええ~?でも瘴気も無いし』
『うん。わたしも、とくにキケンは感じない…かな?変な感じはするけど』
「ちょっ、変な感じはするのかよ⁉」
『ウ~ン。ほんとうにキケンは感じは無いの。ただ、なんかフツウのダンジョンと、少し違う、感じがするっていうか…、』
 ゴメンナサイ言語化ムツカシイ、としょんぼりするキララ。そんな彼女の心情が現れているのか、宙に浮かぶ小灯の光が連動するように暗くなった。
「いや、危険じゃないならいい!問題なし!多分!!」
 このままでは姿まで消してしまいそうで、俺は慌ててフォローを入れる。
 するとキララは「ほんとうに?」と、こちらを伺うように小首を傾げながら見上げてきた。
「はい!大丈夫!まだまだ俺の実力はこんなもんじゃないから!キララは安心して引き続き俺達を照らしてくれ!」
 むしろキララの明かりが無いと死ぬ!
「…わかった。がんばる」
 若干まだ不安そうではあったが俺の必死さが届いたのか、やる気を取り戻してくれた。
 それにホッと息を吐くと、傍で見ていたシフが「サラウスってホント精霊に弱いよね」と暢気に笑っていた。
 うるさい!そんなの俺が一番知ってるわい!



 そんなわけで、引き続き探索は続行。
 俺は半ばやけくそのように、サクサク魔物退治→肉&素材ゲットを続け、最終的に探索を始めて5時間で、17個のアイテムや貴重装備を手に入れた。
 未知のダンジョンチャレンジという状況を除けば、かなりの収穫だ。
 しかしさすがにほぼぶっ通しで魔物を倒しまくったので、俺の体力はかなり削られている。
 できればこの辺りで引き返すか休憩したいところなのだが、今現在俺達の目の前には、重厚で細かな装飾が施された、ミスリル製の扉が存在していた。
 見るからに怪しい……それしか言えない。
『ボスかなぁ?』
「それか、下に通じる階段を守る魔物の部屋とかだな」
 扉の前に辿り着くまでの道は一本で、他に分岐している場所も無かった。
 とすれば、ここが一番奥ということになる。 
『……それで、どうする、の?』
『え?中見ないの!?』
「いやどう考えてもその選択はダメだろ!ここまでしっかりマッピングしたし、これならギルドも文句言わないだろうし、戻る」
『ええええええ行こうよサラウスゥゥゥゥ!!!もっとスゴイお宝が、扉の先にあるかもしれないじゃん~~~!!!!』
「大精霊加護付きの鎧以上のお宝ってなんだよ!怖すぎるだろっっ⁉」
『あの、』
『お宝ゲットは男のロマンだぞ~!ボクと一緒にロマンゲットしようよ~」
「ロマン求めて死んだら元も子も無いだろが!」
『サラウス、ちょっと』
『ええ~こんなチャンス滅多にないよ~?お買い得だよ~?今だけだよ~?』
「お前はどこの商人だ!てかそんな技どこで覚えた!?」
『あの、はなしを…、』
「ここまで頑張ったんだからもういいだろ?あとは現役のダンジョン攻略専門の冒険者に任せよう!俺はあくまで先遣隊!」
『でもさぁ~明らかにこの先なんかありますよ~って雰囲気なんだよ?行かなきゃダメだと、』
『き・い・てっっ!!』
「『はっ、ハイィィっっ!!!』」
 目が潰れそうなほどの光量を向けれらて、俺とシフは言い合いを直ちに強制終了する。
 う~急に眩しいものを見せらたから、視界が可笑しい。隣のシフも同じ状態らしく『目がチカチカする~』と呻っていた。
『聞いてくれる?』
「ああ、ごめんキララ。で、何か見つけたのか?」
 まだ視界は回復していないが、目の前でキララが扉と俺を交互に見る動作をしているのが判る。
『ウウン、そうじゃなくて、』
「ん?」

『あのね、開いちゃった』

「……ハ?」

『だからね、なんか勝手にトビラ、開いちゃった、よ?』




「『はぁああああああああ!?』」




 俺とシフの驚愕の声が、洞窟内に響き渡った。



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