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第1話 ティータイム
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「ん、こっちはパウンドケーキか。出来立てなのかな?美味しそう!」
パチパチと暖炉の炎がはぜる音と少し熱すぎる温度が部屋中を温めていた。
カーペットの敷かれた床に座るアイラの手には少し大きめのスノードームが握られている。
「こっちは…アイスクリーム?夏なのかな?」
アイラはお気に入りのモコモコのセーターを着て、お気に入りのフカフカの靴下をはいて、これまたお気に入りのスノードームに囲まれて午後を過ごすことにした。
大量の球体に囲まれたアイラはワクワクしながら一番遠くに置かれていたモノを手に取った。先ほどよりゆっくり、丁寧に振ると透明な液体が動きキラキラと雪が舞う。
ひと時も見逃さないように目の前に持ち上げ、「1、2」と数えた瞬間、透明だった液体が鮮やかな色にのまれ、段々と何かを映し出していった。
アイラのスノードームは、皆が知っているようなスノードームではない。
普通のスノードームと言ったら硝子で出来た球体の中に建物や雪だるまがあり、ゆっくりと動かすと雪が舞うようなモノを思い浮かべるだろう。
アイラのスノードームは基本的にはそれと似ているのだが、皆の世界ではあり得ないような特別な力を持ったものだった。
そもそも、これはアイラが作ったものでも、買ったものでもない。作るほど能力も魔力もなかったし、やる気だってそれほどあるわけではなかったのだ。
そんなアイラに大量のスノードームをくれたのは、背が高くて夜の髪色をした魔法使いだった。
もちろん、唐突もなくアイラにそれをくれたわけではない。訳があって2人の住む城から外に出ることを恐れるアイラのことを想い、恋人で魔法使いであるキリトが作り贈ったものだった。
「ジェ、ラー…ト。ジェラート!アイスクリーム屋さんだと思ったけどジェラート屋さんだったかぁ!」
まるで球体の中に小人が存在するかのように、アイラの手の中で揺れるスノードームの中に陽気なジェラート屋が映し出されていた。
雲一つない青空、半袖短パンの男性、店に駆け寄る子供たちの姿が夏だと教えてくれる。
窓の外を見れば雪が舞い、暖炉がなければ凍えてしまうような天候にいるアイラはドームを見つめため息をついた。
「いいなぁ。今アイスなんて食べたらおなかが痛くなっちゃう!」
コンコンと扉が叩かれる音が聞こえるとゆっくりとスノードームは色を失い元の姿へと戻っていった。
「はーい!」
「アイラ、手がふさがってるんだ。扉を開けてくれないか?」
「魔法を使えばいいのに」
「手がふさがってるって言っただろう?」
「キリトなら手を使わなくても魔法使えるの知ってる」
「そう意地悪言わないで早く開けてくれ」
スノードームを踏まないように慎重に歩き、大きな扉を開くと甘い匂いがアイラの心を満たした。目の前に立つ恋人はトレイに載ったティーポットと小皿を持ちニコリと微笑んでいる。
「そろそろティータイムかなと思ってね」
「ちょうど良いタイミングだった」
「なんで?」
「ジェラート屋さんを覗いたから少し寒くなっちゃって。んっ」
トレイをテーブルに置いたキリトは緑色の瞳を輝かせこちらを見つめるアイラに口づけをした。数か月前から少しずつあげるようになったスノードームにアイラは夢中だ。この城から出ることを恐れるアイラにとって世界を見る術と言えばこれしかない。
使える全ての魔法を使いつくし、あれじゃないこれじゃないと全てを試して作り出したスノードームを外に出ることを恐れるくせに好奇心旺盛で世界を知りたいと言い続けた恋人が何に使うのかと思えば、「世界のティータイム」を毎日欠かさず見ることだった。
「今日はジェラート屋だけなのか?」
「まさか!その前のはパウンドケーキだった!オーブンからちょうど出てきたところだったみたいで、ホカホカって湯気が出ていて、こげ茶色に焼かれていて完璧な出来栄えって感じだったんだ」
「それは美味しそうだ」
「次はこのドームかな」
足元に落ちていた1つを手に取るとアイラはキリトの目の前でゆっくりとドームを動かした。
ひらひらと雪が舞い段々と透明な液体が色づく。
ぼんやりとした映像が輪郭を得るように動き出すと球体の中にテレビの前に座った黒髪の少年が映し出された。
「何を食べてるんだろう」
派手な色合いの小袋に少年が手を入れ、きつね色の薄い何かが口に運ばれていく。パリパリともカリカリとも聞こえるような音がアイラの手のひらから響いてくる。
「んー、これは…見たことがあるやつだなぁ。何だっけ何だっけ…」
「アイラ、それは…」
「ダメ!教えないで。自分で思い出したいの」
「分かったよ。考え中のところ悪いけど、今日のお茶は何がいいかな?」
「何があるの?」
「何にでもなるお茶だよ」
「んーヘーラルティーがいいかな」
「まずはそれからとしよう」
パチパチと暖炉の炎がはぜる音と少し熱すぎる温度が部屋中を温めていた。
カーペットの敷かれた床に座るアイラの手には少し大きめのスノードームが握られている。
「こっちは…アイスクリーム?夏なのかな?」
アイラはお気に入りのモコモコのセーターを着て、お気に入りのフカフカの靴下をはいて、これまたお気に入りのスノードームに囲まれて午後を過ごすことにした。
大量の球体に囲まれたアイラはワクワクしながら一番遠くに置かれていたモノを手に取った。先ほどよりゆっくり、丁寧に振ると透明な液体が動きキラキラと雪が舞う。
ひと時も見逃さないように目の前に持ち上げ、「1、2」と数えた瞬間、透明だった液体が鮮やかな色にのまれ、段々と何かを映し出していった。
アイラのスノードームは、皆が知っているようなスノードームではない。
普通のスノードームと言ったら硝子で出来た球体の中に建物や雪だるまがあり、ゆっくりと動かすと雪が舞うようなモノを思い浮かべるだろう。
アイラのスノードームは基本的にはそれと似ているのだが、皆の世界ではあり得ないような特別な力を持ったものだった。
そもそも、これはアイラが作ったものでも、買ったものでもない。作るほど能力も魔力もなかったし、やる気だってそれほどあるわけではなかったのだ。
そんなアイラに大量のスノードームをくれたのは、背が高くて夜の髪色をした魔法使いだった。
もちろん、唐突もなくアイラにそれをくれたわけではない。訳があって2人の住む城から外に出ることを恐れるアイラのことを想い、恋人で魔法使いであるキリトが作り贈ったものだった。
「ジェ、ラー…ト。ジェラート!アイスクリーム屋さんだと思ったけどジェラート屋さんだったかぁ!」
まるで球体の中に小人が存在するかのように、アイラの手の中で揺れるスノードームの中に陽気なジェラート屋が映し出されていた。
雲一つない青空、半袖短パンの男性、店に駆け寄る子供たちの姿が夏だと教えてくれる。
窓の外を見れば雪が舞い、暖炉がなければ凍えてしまうような天候にいるアイラはドームを見つめため息をついた。
「いいなぁ。今アイスなんて食べたらおなかが痛くなっちゃう!」
コンコンと扉が叩かれる音が聞こえるとゆっくりとスノードームは色を失い元の姿へと戻っていった。
「はーい!」
「アイラ、手がふさがってるんだ。扉を開けてくれないか?」
「魔法を使えばいいのに」
「手がふさがってるって言っただろう?」
「キリトなら手を使わなくても魔法使えるの知ってる」
「そう意地悪言わないで早く開けてくれ」
スノードームを踏まないように慎重に歩き、大きな扉を開くと甘い匂いがアイラの心を満たした。目の前に立つ恋人はトレイに載ったティーポットと小皿を持ちニコリと微笑んでいる。
「そろそろティータイムかなと思ってね」
「ちょうど良いタイミングだった」
「なんで?」
「ジェラート屋さんを覗いたから少し寒くなっちゃって。んっ」
トレイをテーブルに置いたキリトは緑色の瞳を輝かせこちらを見つめるアイラに口づけをした。数か月前から少しずつあげるようになったスノードームにアイラは夢中だ。この城から出ることを恐れるアイラにとって世界を見る術と言えばこれしかない。
使える全ての魔法を使いつくし、あれじゃないこれじゃないと全てを試して作り出したスノードームを外に出ることを恐れるくせに好奇心旺盛で世界を知りたいと言い続けた恋人が何に使うのかと思えば、「世界のティータイム」を毎日欠かさず見ることだった。
「今日はジェラート屋だけなのか?」
「まさか!その前のはパウンドケーキだった!オーブンからちょうど出てきたところだったみたいで、ホカホカって湯気が出ていて、こげ茶色に焼かれていて完璧な出来栄えって感じだったんだ」
「それは美味しそうだ」
「次はこのドームかな」
足元に落ちていた1つを手に取るとアイラはキリトの目の前でゆっくりとドームを動かした。
ひらひらと雪が舞い段々と透明な液体が色づく。
ぼんやりとした映像が輪郭を得るように動き出すと球体の中にテレビの前に座った黒髪の少年が映し出された。
「何を食べてるんだろう」
派手な色合いの小袋に少年が手を入れ、きつね色の薄い何かが口に運ばれていく。パリパリともカリカリとも聞こえるような音がアイラの手のひらから響いてくる。
「んー、これは…見たことがあるやつだなぁ。何だっけ何だっけ…」
「アイラ、それは…」
「ダメ!教えないで。自分で思い出したいの」
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