Lost Fiction

湯月@重陽

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女王殺し

楽園の姉妹

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「王よ」
「姉者」

 聞き覚えある声に、入口を振り返る。
 遠方へ視察に出ていた姉が、茶器を乗せた盆を持って王の間に入る。

「我が妹。我らが王よ。少しは休憩されてはどうか?」
「魅力的なお誘いなれど、未だ幾らも決定すべきものもありましょう」
「では休憩がてら、視察の報告をさせて欲しい」

 ふわりと香るは聴き慣れぬ茶の薫り。

「…其れならば」


 人払いを済ませた空間は、完全に私的な空間だ。
 白の氷菓と、添えられた葉の緑。茶器に注がれた茶は爽やかに香り、舌を甘やかす。

「お早いお戻り。何事かありましたか?」
「いいや。些か早く済んだ」
「民の、様子は如何?」
「特に酷い不作の郷はない」
「…収穫までは気が抜けぬ事でしょう」
 茶の面を見つめて呟く相手に、呆れたように云った。
 「王よ。心配召されるな。水は十分に巡り、民は笑っている」
 寄せられた眉間が、ようやく解ける。
「詮無きを云いました。全く姉者には頭が上がらぬ」
「フフッ。采配回すは得意なれど、私に求心力は無い。其れに、」

 手を伸ばす。
 壊れ物に触るように、指先で妹の目元に触れる。
「お前の眼、"王の眼"よ。_美しく、美酒の如くに酔わせ、平伏させる」
 燃えるように輝き、見詰めれば吸い込まれる美しさ。
「王の眼の下で采配振るうは、此の上もない幸運さ」

「王よ、私が居る。_そして、アレが居る」
 そろそろ今年も、アレの帰って来る時期だろう?きっと土産話を沢山抱えて来るぞ。

「…帰って来るでしょうか?」
「何を?」
「アイツは自由です、姉者。もしかすると帰って来ぬやも」
「あり得ぬ。何を云い出すかと思えば、王よ。」
 _
「穿ちすぎだ。アレのじょうも信じてやれ。お前の片割れだろう?」

 お前は"王の眼"を。アレは"翼"を持つ。

「愛している。信じてお呉れ、我が王」
「…妹とも、呼んで下さいませ」
「ンンッ。王は強欲でなくばな」

 愛している。我が妹





 皿の上に供された青果の中から一つ選ぶ。
 割れた果から一粒摘み出して口に含む。赤が弾けて喉を潤した。
 赤い実を果の中に数多抱え込む柘榴は、縁起物でもあり好まれる。 
 一粒の種がわかり易く多の粒へと増える。

 豊かさとは、そう云うモノ。種を播けば増え、増えた分を更に広範に播く。範囲を一定に制限しない限り、増えこそすれ、減りはしない 。


 しかし制限すれば、収穫は天候に依って左右されるものになった。


 

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