Lost Fiction

湯月@重陽

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王の眼

迷宮の試し

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 9人の娘がくるくると回る。回る。回る。
 神に捧げる舞は幼い頃から習っていた。裳裾が床につかぬように、右に左と回り続ける。
 回り回り回るうちに、くらくらと目眩めまい。

 くらくらくらくらと回りながら、円のままに娘達は踊り続けた。

※※

 塔の高さと、同じ深さの迷宮を。_其れこそは誓約。
 母の建てた塔は高く高く。其の分、迷宮の底も 深く。
 其れが"王への試し"に使われるものとは、今の今まで知らなかった。

 白く漂白されたような顔が9つ。
 各々の眼の前に暗く口開ける地下への道。
 只の一人だけが生き残る王の後継決める"試し"を、受けるは王の娘の権利であり義務である。

 居並ぶ人々も列する歴々も。此方を見る目は期待に満ちて。どうせ抵抗したところで無駄だった。
 (余計な傷を受けるのも不利)

 覗き込んだ闇の底。
 黒黒とした地の底に、呑まれるように一歩、踏み出した。


 巡り巡って地の底へ下りる。
 地の底は音がない雑音がない。
 あるのは何処かで落ちる水粒の音。水雫が波紋を走る音。
 一条の光もなく。壁に着いた手を見失えば、二度と戻ることは出来ない。
 足先、擦り足、小石を蹴って転びそうになって一呼吸。
 でも、急がなくては。もしも他の姉妹が先に此の暗闇を抜けてしまえば、私は永遠に此の闇の中。
 焦り。恐れ。でも、失敗しないように。
 一歩進んで次を。一歩進んで次を。繰り返し繰り返し。巡って巡り、回って回る。

 回り回り 回り回って
 いつまでも。 


 いつまでも。



 
 いつまで続く…?
 
 

 いつ何時いつまでも 果てもなく? 本当に、 果てはある?

 確かに此の先に出口はあるはず。此処は一本路のはず。
 _本当に?

 進んでも進んでも尽きぬ闇は、どんどんと広がっていく。頭の中で、私は闇に浮かんでる。
 此の足下には床も底もなく、壁もなく、広がる闇に呑まれてる。
 竦み。立ち止まりそうになる足を必死で動かす。
 確かに此の先に出口はあるはず。此処は一本路のはず。
 怖い。…怖い。
 いつまでも尽きぬ闇。果てもなく、続く闇。
 
 本当に私 出口に、辿り着ける?

 苦しみが絡みつく
 堂々巡りの暗い小路は 灯りもなく果てもない
 叱咤も慰撫も意味がなく
 いったい今はいつなのか。識ったところで意味はなく、暗闇は横たわる。

 もう何も、分からなくなった 頃。

 光 !

 
 夢中で壁を叩いて身を押し出して、



 振り仰いだ先に 青。



 青

 青  青

 青い 深い 高い  青。



 丸く、抜かれた其の空は、
 底知れぬ神の、其の瞳。

 神が見る。 私を見る。

 ああ、ああ、其の、 恍惚よ。


 視界の端で、小さく黒い影 揺れる(後に母の影であったと知る)。でも直ぐに意識の外。
 青い瞳を、惚けて見ていた。

 地の底で燃えて朽ちると思っていたのに、今私は山の頂、空の星。すべてが此処に至る為の路ならば、何一つとして無駄じゃなく必要で。すべては正しく、明るい方へ往くために_。

 ああ、と棒立つ私を、祝福するかのような 青 が見る。


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