異界審査官の巻き込まれ人生記

夜空のかけら

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69 悪いのはどっちだ

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「今回の審査対象者は、強盗放火殺人の被害者になります」

また、重い内容だな。

脳裏に情報が流れ始める。
20歳の時に宝くじに高額当選し、豪邸を建てたり豪遊をしたりして周囲に突然お金持ちになったとはなす。
それまで気に食わなかった人達にお金を使って報復をするようになる。
21歳の時に、そのうちの1人から民事裁判を起され賠償請求される。
22歳の時に民事裁判の判決が出た翌日にその1人が自宅に来訪、そこで鈍器のようなもので殴られ自宅に火を付けられる。
家屋は全焼、被害者はそのまま焼死。
自宅にあった金目のものは全て持ち去られていた。
結果、強盗放火殺人でその者が指名手配されるも逮捕される前に自害している。

…うーん、これは被害者も悪いのではないか。

魂魄汚染度50%です。

汚染度の高低の基準がどうなっているのか分からないけれど、感覚的に言えばこの数値は高い方の分類に入るのではないか。
そういえば、対象者と情報が来たけれど審査ルームには俺1人。
対象者がいないな。

「対象者がいないのは、形がないためで、無形状態で現在拘束中です」

「内容は、これだけかい。家族構成なども分かるといいのだけれど」
「家族はいません。施設育ちで、18歳になった時に独立しています。気に食わなかった人達のほとんどは施設の先輩となっていた人達です。かなり虐められたので、いつか復讐してやろうと思っていたようです」
「一概に悪い人ということは言えないのかもしれないな。しかし、その行いの反動がこれか。鈍器で殴られたのが死因ではないのか」
「鈍器で殴られた後に、ガムテープ等で身体拘束され、その上からガソリンを掛けられています。直接の死因は、焼死です」
「それはむごい。想像したくない死に方だな。通り魔の方がいいと思えるぞ」
「犯人も焼身自殺しており、こちらの方は魂魄にヒビが入る程の損壊状態です」
「魂ってヒビとか壊れるものなの?」
「この魂は生成されてから年月が経っていないものです。地上での転生回数は7回で、被害者の150回と比べると段違いに強度が弱いのです」
「被害者は150回。すごいの?」
「地上での転生回数は、人としての転生だけではなく、その他も入りますから必ずしも特筆すべき点とは言えません。被害者の場合は、人としては20回程度。加害者の場合には1回となっています」
「なるほど。うーん、今回の審査に関して、何か指示やこうやった方がいいってあるの」
「道は3つ。1つ地上へ降ろし以前と同じ転生の輪に戻す。2つ目、無形状態のまま浄化サイクルに投入し、魂魄汚染度の浄化を行う。ただし、これは魂の状態で地獄の苦しみを受けるとなる。3つ目、魂魄解体。存在を消す」
「3つ目はないかな。なぜ魂魄解体が必要なのだろうか」
「では、あとの2つのどれか。若しくは全く別の選択もあります」
「うーん…」
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