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ボアレア魔法学園
彼は学生服を着たヴァンパイア
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古めかしい歴史の感じられるどこか哀愁を懐かせる学園。ひとつひとつ、滑らかな質感を感じさせる建造物の装飾。
このボアレア帝国に大きな影響を与えた歴史と、これを建てた職人たちの魂がこめられているのが私には読み取れる。
魔術的な力は、謎を解き明かす力を持つ不思議なもの。一般的な魔術師には読み取れないのが普通だ。私は魔女の血を継いだ女であり、そして異界からやってきた魂の残滓が私の中には意識として共存している。彼女はあまり表に出たがらないから私としても都合がいいと感じている。
(今年はどんな生徒がやってきますかね? モリガン)
彼女は異界で私と同じく教師をしていたらしく、やたらと生徒に関しては口出ししてくるのが野暮に思える。それに、魔術のない世界からやってきたようだ。異界への知的好奇心は、私に煩わしいくらいに襲ってくる。
今年の首席の入学者は、なかなか興味深い考察をレポート試験で提出してきた。魔法ではなく、魔術についての考察を。魔法は属性魔法と呼ばれるものであり、今の人種の間で使われる一般的な力だ。
心の機微を読み取り、魂を誘導したりして意識をこちらに向ける魅了を与えたりする力は魔法にはないものだ。デーモンと契約を交わしたりするのも、魔術の力であり英霊の魂を触媒を使い呼び出すのもまた魔術だ。
私が何故、教師なんて俗世に染まるような職に就いているのか。それは、この学園の神秘的な謎の追求の為である。決して、教えるのが好きだという陳腐な感情的なものではない。
入学式などというものは私は参加するに値しないと不参加を毎年、決めているのだ。それを彼女―石尾唯美―は、参加しろの一点張りで喧しくて仕方がない。
彼女は感情的な女であり、一般的な女性と変わらない。女は感情で物事を進めるように出来ているらしい。私はとんと、感情を爆発させるようなことはあまりないと思っている。自己評価であり、他者から見た私がどう思われていようとも私はまた、興味がない。
私は魔術的な神秘を、この建造物に感じているに過ぎない。唯一、私が感情で動くのがこれであり神話の時代の残り香を嗅ぎ付けてここにいるに過ぎないのだから。
ふと、建物の窓辺から魔術的な気配を感じてそちらを、見る。見てしまった。どうやら、魅了の魔術を視線に乗せていたらしい。朧気に捉えたのは、久しく感じていなかったヴァンパイアの魔力だ。
学生服に身を包んだ彼は、見た目通りの年齢ではないだろう。なぜこんなところにヴァンパイアが居るのだろう。抵抗の魔術を魂に刻んで魅了をかろうじて防ぐ。
彼はスッと目をすぼめて、微笑んだ。どうやら、興味を持たれてしまったらしい。豹のような獲物を狙う目で私をじっと見た時間は一瞬のようでもあり、長かったようにも思う。女子生徒に、肩を叩かれて彼は意識をそらしてくれた。私は本当に抵抗に成功したのだろうか? 揺れ動く睫毛に、私は感情が何か特別なものを意識しているかのような倒錯感に襲われた気がしてそっと目を閉じた。
このボアレア帝国に大きな影響を与えた歴史と、これを建てた職人たちの魂がこめられているのが私には読み取れる。
魔術的な力は、謎を解き明かす力を持つ不思議なもの。一般的な魔術師には読み取れないのが普通だ。私は魔女の血を継いだ女であり、そして異界からやってきた魂の残滓が私の中には意識として共存している。彼女はあまり表に出たがらないから私としても都合がいいと感じている。
(今年はどんな生徒がやってきますかね? モリガン)
彼女は異界で私と同じく教師をしていたらしく、やたらと生徒に関しては口出ししてくるのが野暮に思える。それに、魔術のない世界からやってきたようだ。異界への知的好奇心は、私に煩わしいくらいに襲ってくる。
今年の首席の入学者は、なかなか興味深い考察をレポート試験で提出してきた。魔法ではなく、魔術についての考察を。魔法は属性魔法と呼ばれるものであり、今の人種の間で使われる一般的な力だ。
心の機微を読み取り、魂を誘導したりして意識をこちらに向ける魅了を与えたりする力は魔法にはないものだ。デーモンと契約を交わしたりするのも、魔術の力であり英霊の魂を触媒を使い呼び出すのもまた魔術だ。
私が何故、教師なんて俗世に染まるような職に就いているのか。それは、この学園の神秘的な謎の追求の為である。決して、教えるのが好きだという陳腐な感情的なものではない。
入学式などというものは私は参加するに値しないと不参加を毎年、決めているのだ。それを彼女―石尾唯美―は、参加しろの一点張りで喧しくて仕方がない。
彼女は感情的な女であり、一般的な女性と変わらない。女は感情で物事を進めるように出来ているらしい。私はとんと、感情を爆発させるようなことはあまりないと思っている。自己評価であり、他者から見た私がどう思われていようとも私はまた、興味がない。
私は魔術的な神秘を、この建造物に感じているに過ぎない。唯一、私が感情で動くのがこれであり神話の時代の残り香を嗅ぎ付けてここにいるに過ぎないのだから。
ふと、建物の窓辺から魔術的な気配を感じてそちらを、見る。見てしまった。どうやら、魅了の魔術を視線に乗せていたらしい。朧気に捉えたのは、久しく感じていなかったヴァンパイアの魔力だ。
学生服に身を包んだ彼は、見た目通りの年齢ではないだろう。なぜこんなところにヴァンパイアが居るのだろう。抵抗の魔術を魂に刻んで魅了をかろうじて防ぐ。
彼はスッと目をすぼめて、微笑んだ。どうやら、興味を持たれてしまったらしい。豹のような獲物を狙う目で私をじっと見た時間は一瞬のようでもあり、長かったようにも思う。女子生徒に、肩を叩かれて彼は意識をそらしてくれた。私は本当に抵抗に成功したのだろうか? 揺れ動く睫毛に、私は感情が何か特別なものを意識しているかのような倒錯感に襲われた気がしてそっと目を閉じた。
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