ヴァンパイアの誘惑

山波斬破

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ボアレア魔法学園

魔術の講義

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 私は魔女ではあるが、魔術について深く智識があるかと問われればまだまだ赤子の域をでない。魔術について記した本があるとして。私の魔術の本は真新しい草臥れていない本だ。一頁分の智識がやっとあるくらいだ。私の母が魔術を酷く嫌っていた為に録な智識がない。だから、デーモンとの契約を交わすはずの召喚に応じたのが、石尾唯美だった。

 なぜ母が魔術を嫌っていたのか、それは魔術を学ぶのがとても根気のいる、そして資質を問われる事からでもあるが、心の機微や未来視等が勝手な魔力の暴走で起きてしまうのだ。知りたくもないものに恐怖を感じるのは魔女であっても変わらない。

 だから、私は先生を探した。でも、その先生も血の薄い魔女でありちょっとした智識しか持たなかった。だから、一頁分しか智識がないのだ。

「先生、貴女は魔術をどれだけ理解していますか」

 例のヴァンパイアが、私に鼻で嗤うように質問してきた。彼はきっと私よりも魔術を知っている。謎を解き明かす力を持つ不思議なものという曖昧な理解しか得ていない私に責め立てるような質問をわざとしているのだ。だから、レポート試験で提出した魔術の考察も私を嘲るためのものだとわかる。魔法を人間に与えたのはヴァンパイアであり、魔女ではない。

「質問を変えましょう私のレポート……理解できましたか?」

 彼の質問には答えたくない。私は黙る事しかできない。それを知りながら彼は質問しているのだ。二人だけしかいない講義室。私と彼だけの空間。悔しい。私は悪くないんだ。魔女が魔術から逃げてきた歴史が私の智識が足りない理由なのだから。

「魔女にしては、魔術ができると聞いていたんだけど魂に何か住み着いているね? しかも、デーモンでも英霊でもない」

 私は逃げたくなる気持ちを必死で抑えた。涙が滲んでくる。ヴァンパイアはなぜこうも私を嘲るのか。前に会ったヴァンパイアは優しかったのに。感情を必死で抑える。感情を爆発させると、魔力が暴走するから。

「ふむ、感情を抑えるのに必死で答えることさえできない? 父さんも嘘つきだな。君には失望したよ。魅了に抵抗は出来たのにね?」

 クスリと彼は嗤う。魔女は淘汰されたんだ。人間からもヴァンパイアからも。だから私は努力して――きたのに。

「今なら簡単に魅了出来そうだね?」

 灰色がかった銀色の虹彩の瞳が、私を射ぬくように見つめている。

「でも、僕は君を魅了しない。魅了なんてしなくても君は僕を求めるよ。そういう未来が見えないかな?」

 彼はヴァンパイア。きっと、私に魔術を教えてくれたヴァンパイアの子ども。似ていないな。優しくなんてない嗜虐的なヴァンパイアらしい彼はクスリと笑い講義室を出ていった。
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