ヴァンパイアの誘惑

山波斬破

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ボアレア魔法学園

無邪気な仮面

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 私を嘲る彼の嗤う時の表情が忘れられない。瞳の中に吸い込まれてしまいそうなほど理知的で冷たい眼差し。端整な顔立ちに、笑うとドキリとしてしまう奥に秘めた優しさを感じる相反する二面性。

 広めの肩幅から腰にかけて引き締まった男性的な身体に服の上からでもわかる芯の通ったバランスのいい肉体、歪みなんかは感じられない。まるで美しい彫刻を彷彿させる美術品のよう。肩まで伸びた髪を前髪から後ろに流している。前髪が顔にかからないように計算された容姿。講義室での一幕が嘘のように学生らしい柔らかい笑みを学友たちに見せている。魅せられた女生徒が彼に群がる。彼の食事を想像してしまい、ドキリとさせられ、魅了されていないはずなのに、目で追ってしまう。

 魔女やヴァンパイアだけでない者も魔力を持つが魔女やヴァンパイアのような力を持つ血が魔術を行使できる唯一の触媒のようなもの。デーモンとの契約は血を必要とすると知ったのは唯美との魂の融合が成立した後だった。魔術のにわかな智識がこの事態を招いた。私は好奇心は猫をも殺すという唯美の言葉にうちひしがれた。また、ボアレア魔法学園の教師になったのも好奇心だったのは否めない。だから、あの冷酷なヴァンパイアに遭遇してしまった。どちらの彼が本物だろうか?

 今見せている笑みは本物だろうか? 私はすでに彼に惹かれているのか、森の草花の香りを漂わせた彼は、私の魔法の授業をどう感じているのか。早く授業が終わらないか、長い時間が恨めしい。まだ、爆発するような感情には至っていない。それが唯一の救いだ。心を乱さない方法がないか私は考えながら魔法の原理について授業を進める。人によって詠唱が違う魔法は強く成功を意識するための自分なりのイマジネーションからくる言葉だ。

「我が呼び声に答えろ。小さな灯火よ指先に集え」

 生徒の一人が小さな魔法を行使する。指先からゆらゆらと火が飛び出す。イメージと言葉が一致しないと発動しない為に集中力を乱さないように集中している生徒に褒めるように肩を叩くヴァンパイア。名前はジーク。

 彼の魔力は隠蔽の魔術で上手く隠している。誰もが彼をヴァンパイアだとは思うまい。

 彼の本質はどちらであろうか? 魔女を特別恨むようななにかがあるのだろうか。私はただ彼に意識してしまう自分に嫌悪する。これは驚異への無意識な防衛本能だと言い聞かせて心に蓋をする。

 私は感情を理解できない。自分の事のはずなのに。
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