初恋の人が妹に婚約者を奪われたそうです。

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12. 婚約者として(シャルロッテ視点)

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 アルヴィン様のプロポーズを受け入れてから、私は主に話し方やマナー、ダンス講習を受けながら日々を過ごしていた。
 体重も増えて、体力もついてきた。

 そろそろ語学や領地の勉強も増やそうと思っていたら、この邸宅の主でありアルヴィン様の父親でもあるサンチェスカ侯爵に、書斎へと呼び出された。

 アルヴィン様の婚約者として私を認めることは出来ないって話かも……。
 そう思っていたけれど、侯爵の話は別の事だった。

 デスクの後ろにある本棚にはびっしりと難しそうな本が並び、それを背にゆったりと座る侯爵からは凄みのような威厳を感じた。

「我が家はずっと外交でベルック王国を支えてきた。」

「はい。」

 威圧しているつもりもないと思うのに、重厚な存在感の前に萎縮してしまいそうになる。
 だけど、アルヴィンの隣に立つために、ここで怖じ気づいては駄目。
 私は静かに深呼吸して、真っ直ぐに侯爵と向き合った。

「アルヴィンがずっと近隣諸国で留学していたのも、諸外国の言葉、文化、法律に精通する必要があったからだ。
 他国との交渉事は王家と共にサンチェスカ侯爵家が矢面に立つ。このベルック王国が戦争も無く、豊かで平和でいられるのは、サンチェス侯爵家の貢献あってのこと。」

 侯爵から感じるのは、王家に仕える忠臣としての誇り。そして国を支える覚悟。
 
「アルヴィンの妻となる女性は大変だと思う。他国からのパーティーに王太子夫妻と共に出席する事もあるだろう。王太子妃に匹敵するような、それだけの教養が必要となる。」

 侯爵はそこで一旦言葉を切り、心の奥を見透かすような眼で私を見つめた。

「アルヴィンの妻となって、本当に後悔しないかい?」

 もっと厳しい事を言われることを覚悟してた。なのに、侯爵から出たのは私を気遣う言葉。
 やっぱりアルヴィン様を育てた人だ。根底にある優しさが同じだと思う。

「アルヴィン様は、私が辛い時、ずっと手を差し伸べてくれた人です。これから、彼を支えられるようになりたい。その為には、どんな努力も惜しまないつもりです。」

 侯爵は厳しい表情をふっと緩めた。その目にはアルヴィン様の幸せを願う親としての愛情があった。

「そうか、君のその決意だけ、聞きたかったんだ。」

「頑張ります。」

「ははっ。私は厳しい事を言ったが、アルヴィンは君を離すつもりなど無いようだったよ。」

「……そう……なんですか。」

「実はね、アルヴィンには縁談が殺到しててね。私が断ってはいるのだが、どうにも皆しつこくて困っていたんだ。今度我が家主催の夜会でアルヴィンと君の婚約を発表しようと思う。そうすれば、アルヴィンの身辺も落ち着くだろう。」

「でも、お父様の許可が……。」

「ははっ、君はルファリオ子爵家から嫁ぐことになる。その為に必要な手続きはもうすんでるよ。アルヴィンは最初から君をソレイクス伯爵家に帰すつもりはなかったようだ。」

 ルファリオ子爵家はお母様の実家に当たる。
 アルヴィン様は本当に初めから私と結婚するつもりだったのだろうか?
 用意が周到過ぎて驚いてしまう。

「侯爵様、ふつつかものですが、これから精一杯努力しますので、よろしくお願いします。」

「ああ、あいつをよろしく頼むよ。」

 私はこうしてアルヴィン様との婚約を認められた。





夜会前のソレイクス伯爵邸ーー




「パメラ、サンチェスカ侯爵家主催の夜会の招待状が届いたわ。」

「まあ!本当?」

「どうしたの?随分嬉しそうね。」

「ええ。サンチェスカ侯爵家のアルヴィン様って素敵だったわ。シャノン様の親友なんですって。」

「シャノン様の……。でも、アルヴィン様の方が爵位が上よね?」

「そうなの。なんとか親しくなれないかしら?」

「まあまあ、気の多いこと。でもいいわねー。侯爵家に嫁いだ方がきっと贅沢出来るわよ。」

「そうでしょ?お母様、新しいドレスを買ってくださらない?アルヴィン様の目に留まるかもしれないわ。」

「そうね。うんとお洒落していきましょう。」



 ソレイクス伯爵邸ではドレスを選ぶ母子の楽しげな声が響いていた。





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