12 / 19
12. 婚約者として(シャルロッテ視点)
しおりを挟むアルヴィン様のプロポーズを受け入れてから、私は主に話し方やマナー、ダンス講習を受けながら日々を過ごしていた。
体重も増えて、体力もついてきた。
そろそろ語学や領地の勉強も増やそうと思っていたら、この邸宅の主でありアルヴィン様の父親でもあるサンチェスカ侯爵に、書斎へと呼び出された。
アルヴィン様の婚約者として私を認めることは出来ないって話かも……。
そう思っていたけれど、侯爵の話は別の事だった。
デスクの後ろにある本棚にはびっしりと難しそうな本が並び、それを背にゆったりと座る侯爵からは凄みのような威厳を感じた。
「我が家はずっと外交でベルック王国を支えてきた。」
「はい。」
威圧しているつもりもないと思うのに、重厚な存在感の前に萎縮してしまいそうになる。
だけど、アルヴィンの隣に立つために、ここで怖じ気づいては駄目。
私は静かに深呼吸して、真っ直ぐに侯爵と向き合った。
「アルヴィンがずっと近隣諸国で留学していたのも、諸外国の言葉、文化、法律に精通する必要があったからだ。
他国との交渉事は王家と共にサンチェスカ侯爵家が矢面に立つ。このベルック王国が戦争も無く、豊かで平和でいられるのは、サンチェス侯爵家の貢献あってのこと。」
侯爵から感じるのは、王家に仕える忠臣としての誇り。そして国を支える覚悟。
「アルヴィンの妻となる女性は大変だと思う。他国からのパーティーに王太子夫妻と共に出席する事もあるだろう。王太子妃に匹敵するような、それだけの教養が必要となる。」
侯爵はそこで一旦言葉を切り、心の奥を見透かすような眼で私を見つめた。
「アルヴィンの妻となって、本当に後悔しないかい?」
もっと厳しい事を言われることを覚悟してた。なのに、侯爵から出たのは私を気遣う言葉。
やっぱりアルヴィン様を育てた人だ。根底にある優しさが同じだと思う。
「アルヴィン様は、私が辛い時、ずっと手を差し伸べてくれた人です。これから、彼を支えられるようになりたい。その為には、どんな努力も惜しまないつもりです。」
侯爵は厳しい表情をふっと緩めた。その目にはアルヴィン様の幸せを願う親としての愛情があった。
「そうか、君のその決意だけ、聞きたかったんだ。」
「頑張ります。」
「ははっ。私は厳しい事を言ったが、アルヴィンは君を離すつもりなど無いようだったよ。」
「……そう……なんですか。」
「実はね、アルヴィンには縁談が殺到しててね。私が断ってはいるのだが、どうにも皆しつこくて困っていたんだ。今度我が家主催の夜会でアルヴィンと君の婚約を発表しようと思う。そうすれば、アルヴィンの身辺も落ち着くだろう。」
「でも、お父様の許可が……。」
「ははっ、君はルファリオ子爵家から嫁ぐことになる。その為に必要な手続きはもうすんでるよ。アルヴィンは最初から君をソレイクス伯爵家に帰すつもりはなかったようだ。」
ルファリオ子爵家はお母様の実家に当たる。
アルヴィン様は本当に初めから私と結婚するつもりだったのだろうか?
用意が周到過ぎて驚いてしまう。
「侯爵様、ふつつかものですが、これから精一杯努力しますので、よろしくお願いします。」
「ああ、あいつをよろしく頼むよ。」
私はこうしてアルヴィン様との婚約を認められた。
☆
夜会前のソレイクス伯爵邸ーー
「パメラ、サンチェスカ侯爵家主催の夜会の招待状が届いたわ。」
「まあ!本当?」
「どうしたの?随分嬉しそうね。」
「ええ。サンチェスカ侯爵家のアルヴィン様って素敵だったわ。シャノン様の親友なんですって。」
「シャノン様の……。でも、アルヴィン様の方が爵位が上よね?」
「そうなの。なんとか親しくなれないかしら?」
「まあまあ、気の多いこと。でもいいわねー。侯爵家に嫁いだ方がきっと贅沢出来るわよ。」
「そうでしょ?お母様、新しいドレスを買ってくださらない?アルヴィン様の目に留まるかもしれないわ。」
「そうね。うんとお洒落していきましょう。」
ソレイクス伯爵邸ではドレスを選ぶ母子の楽しげな声が響いていた。
37
あなたにおすすめの小説
魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完
瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。
夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。
*五話でさくっと読めます。
お姉さまは最愛の人と結ばれない。
りつ
恋愛
――なぜならわたしが奪うから。
正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。
婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。
将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。
レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。
愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる