4 / 12
4.次は相談だって?
しおりを挟むフロアー に音楽が流れだすといよいよダンスの時間。
今日の主役は私たちだから、一番初めにホールの真ん中で踊ることになる。
アルフォンソ様は友人たちと離れて此方に向かってへと歩いてくると、私の前で跪いて手を差し出した。何だか照れているみたいでその仕草は少しぎこちない。
彼も緊張しているのかも……。
「キャロライン、私とダンスを踊っていただけませんか?」
彼のような美しい青年が頬を染めて私を見上げる表情は眼福で、周囲から感嘆のため息が漏れた。
「喜んでおうけしますわ」
私は差し出された手に自分の手を重ねて微笑んだ。アルフォンソ様にエスコートされフロアの中央に進むと足が震える。こんなに注目されてダンスを踊るなんて初めて……。
彼とは慌ただしく婚約したから、二人でダンスを踊ったことはない。アルフォンソ様ってダンス上手いのかしら?
私は凄く緊張していた。
こんなに足がガクガクしてる私を上手くリード出来る?
今日失敗しちゃうのはなんとしても避けたい。
ホールドを取ると、華奢に見えたアルフォンソ様が以外にがっしりとしているのに気が付いた。
大きな手、広い肩幅、女性物の香水とは違う男らしい匂い。
そう思ったら急に異性だと意識しちゃって、今度は恥ずかしくなった。
ダンス中も無言で淡々と踊る。
本当はお互いに顔を見て仲睦まじい様子を演出しなきゃいけないのに、私もアルフォンソ様も意識して視線を逸らせちゃう。
アルフォンソ様は顔どころか首筋まで真っ赤。もしかして私も同じように赤いのかもしれない。
そんな私たちのぎこちないダンスが終わると、周囲から生温かい視線が注がれる。
「まあ!なんて初々しい。お二人とも照れてらっしゃるわ」
「アルフォンソ様のあんなお顔、貴重ですわ」
そんな声が聞こえてくるからますます恥ずかしくて赤くなっちゃう。
顔が熱い……。
アルフォンソ様は流石に侯爵令息でリードは安定してて転ぶことは無かった……。けれど、紅潮した顔で踊る私たちを見られるなんて、さながら羞恥プレイのよう。
「好きな人と踊るのって緊張するんだね。恥ずかしいや」
アルフォンソ様は周囲に聞こえないようにそっと耳元で囁いた。私は恥ずかし過ぎてちょっと混乱していて……。
「ア、アルフォンソ様のせいですよ。アルフォンソ様が真っ赤になってるから、緊張がう、う、移ったんです」
なんて可愛げのないことを言ってしまったのだろう。
アルフォンソ様は「そうだね。ごめん」って弱々しく笑った。
そして周囲の人々もダンスを踊り始めフロア全体が賑やかになってきた頃、空気を読まないエヴァリン様が私たちの前に再びやって来た。
「アル、私に似合うって言ってくれたグリーンのドレスを着てきたの。折角だから私とも踊ってよ!」
ええ?
この人本気?
婚約披露パーティーへ来て、二人の仲を壊そうとしてるの?
鮮やかなライムグリーンのドレスを着て艶やかに微笑むエヴァリン様。きっとアルフォンソ様がOKしてくれると確信しているのだろう。
「すまない。今日はもう疲れたんだ」
アルフォンソ様は冷たい表情で断って、彼女から離れた。
再び無表情に戻ったアルフォンソ様が何を考えているのかは分からない。
マウントトール伯爵令嬢との関係はパーティーが終わったら聞こうと思って私も口を噤んだ。
けれどマウントトール様は諦めなかった!
「少しの時間でいいから相談があるの。アピスのことよ……」
袖を掴んで彼女がそう言うと、彼は顔色を変えた。
「急ぎか?」
「ええ。お願いアル」
89
あなたにおすすめの小説
【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。
頭頂部に薔薇の棘が刺さりまして
犬野きらり
恋愛
第二王子のお茶会に参加して、どうにかアピールをしようと、王子の近くの場所を確保しようとして、転倒。
王家の薔薇に突っ込んで転んでしまった。髪の毛に引っ掛かる薔薇の枝に棘。
失態の恥ずかしさと熱と痛みで、私が寝込めば、初めましての小さき者の姿が見えるようになり…
この薔薇を育てた人は!?
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
【完結】ハーレム構成員とその婚約者
里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。
彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。
そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。
異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。
わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。
婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。
なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。
周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。
コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。
王宮勤めにも色々ありまして
あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。
そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····?
おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて·····
危険です!私の後ろに!
·····あ、あれぇ?
※シャティエル王国シリーズ2作目!
※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。
※小説家になろうにも投稿しております。
勇者になった幼馴染は聖女様を選んだ〈完結〉
ヘルベ
恋愛
同じ村の、ほのかに想いを寄せていた幼馴染のジグが、勇者に選ばれてしまった。
親同士も仲良く、族ぐるみで付き合いがあったから、このままいけば将来のお婿さんになってくれそうな雰囲気だったのに…。
全てがいきなり無くなってしまった。
危険な旅への心配と誰かにジグを取られてしまいそうな不安で慌てて旅に同行しようとするも、どんどんとすれ違ってしまいもどかしく思う日々。
そして結局勇者は聖女を選んで、あたしは――。
【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって
鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー
残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?!
待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!
うわーーうわーーどうしたらいいんだ!
メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる