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4.次は相談だって?
しおりを挟むフロアー に音楽が流れだすといよいよダンスの時間。
今日の主役は私たちだから、一番初めにホールの真ん中で踊ることになる。
アルフォンソ様は友人たちと離れて此方に向かってへと歩いてくると、私の前で跪いて手を差し出した。何だか照れているみたいでその仕草は少しぎこちない。
彼も緊張しているのかも……。
「キャロライン、私とダンスを踊っていただけませんか?」
彼のような美しい青年が頬を染めて私を見上げる表情は眼福で、周囲から感嘆のため息が漏れた。
「喜んでおうけしますわ」
私は差し出された手に自分の手を重ねて微笑んだ。アルフォンソ様にエスコートされフロアの中央に進むと足が震える。こんなに注目されてダンスを踊るなんて初めて……。
彼とは慌ただしく婚約したから、二人でダンスを踊ったことはない。アルフォンソ様ってダンス上手いのかしら?
私は凄く緊張していた。
こんなに足がガクガクしてる私を上手くリード出来る?
今日失敗しちゃうのはなんとしても避けたい。
ホールドを取ると、華奢に見えたアルフォンソ様が以外にがっしりとしているのに気が付いた。
大きな手、広い肩幅、女性物の香水とは違う男らしい匂い。
そう思ったら急に異性だと意識しちゃって、今度は恥ずかしくなった。
ダンス中も無言で淡々と踊る。
本当はお互いに顔を見て仲睦まじい様子を演出しなきゃいけないのに、私もアルフォンソ様も意識して視線を逸らせちゃう。
アルフォンソ様は顔どころか首筋まで真っ赤。もしかして私も同じように赤いのかもしれない。
そんな私たちのぎこちないダンスが終わると、周囲から生温かい視線が注がれる。
「まあ!なんて初々しい。お二人とも照れてらっしゃるわ」
「アルフォンソ様のあんなお顔、貴重ですわ」
そんな声が聞こえてくるからますます恥ずかしくて赤くなっちゃう。
顔が熱い……。
アルフォンソ様は流石に侯爵令息でリードは安定してて転ぶことは無かった……。けれど、紅潮した顔で踊る私たちを見られるなんて、さながら羞恥プレイのよう。
「好きな人と踊るのって緊張するんだね。恥ずかしいや」
アルフォンソ様は周囲に聞こえないようにそっと耳元で囁いた。私は恥ずかし過ぎてちょっと混乱していて……。
「ア、アルフォンソ様のせいですよ。アルフォンソ様が真っ赤になってるから、緊張がう、う、移ったんです」
なんて可愛げのないことを言ってしまったのだろう。
アルフォンソ様は「そうだね。ごめん」って弱々しく笑った。
そして周囲の人々もダンスを踊り始めフロア全体が賑やかになってきた頃、空気を読まないエヴァリン様が私たちの前に再びやって来た。
「アル、私に似合うって言ってくれたグリーンのドレスを着てきたの。折角だから私とも踊ってよ!」
ええ?
この人本気?
婚約披露パーティーへ来て、二人の仲を壊そうとしてるの?
鮮やかなライムグリーンのドレスを着て艶やかに微笑むエヴァリン様。きっとアルフォンソ様がOKしてくれると確信しているのだろう。
「すまない。今日はもう疲れたんだ」
アルフォンソ様は冷たい表情で断って、彼女から離れた。
再び無表情に戻ったアルフォンソ様が何を考えているのかは分からない。
マウントトール伯爵令嬢との関係はパーティーが終わったら聞こうと思って私も口を噤んだ。
けれどマウントトール様は諦めなかった!
「少しの時間でいいから相談があるの。アピスのことよ……」
袖を掴んで彼女がそう言うと、彼は顔色を変えた。
「急ぎか?」
「ええ。お願いアル」
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