お金のために氷の貴公子と婚約したけど、彼の幼なじみがマウントとってきます

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3.婚約の理由

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 私の両親は騙され易かったーー

 私はウシュハル伯爵家の長女。ウシュハル伯爵領は王都と貿易港を繋ぐ街道沿いの領地で交易も盛ん。西方には大規模な麦畑もあり、裕福な土地柄だった。

 けれど、父は領地を任せていた家令に財産を持ち逃げされ、その上怪しげな投資話に乗って大きな損失を出した。

 年頃の令嬢が婚活に励む中、私はそれどころじゃ無かった。

 そんな時に届いたのがアルフォンソ様からの恋文。

 私は最初の手紙を読んだ時、あまりの内容に、この求婚はお断りしようと考えていた。

 手紙には私に恋するきっかけとなった出来事が書かれていた。
 それはある夜会で私が窓から入ってきた虫を逃がす姿を見かけたからというものだった。
 微かに覚えている。室内の明るい光に導かれるようにふらふらと入ってきた虫がいた。きっとテラスの方から入ってきたのだろう。

 何の虫かは知らない。けれど可哀想だと思って窓から逃がしてやったことかある。

 そんな姿に一目惚れなんて……普通、する?
 その姿を虫に対して優しいって誉められても……ねぇ?
 
 それから夜会で見かける度にずっと私の姿を目で追っていたが、内気故に声を掛けることが出来なかったと書いてあった。

 その恋文にはその後長々と室内に迷い込んできた虫についての考察が書かれていた。そして昆虫の魅力へと文章は移り……、実に恋文の7割が虫の魅力。私の魅力については3行ほどだったかな?

 婚約披露のパーティーの惚気話で、手紙を毎日もらったといっていたが、その内容はほとんど飼育している虫の観察日記みたいだった。

 (いくらカッコ良くてもこんな昆虫オタクはないわ)

 そう思って縁談を断ろうとしたら、今度は彼の両親から魅力的な提案が!
 なんと私と一人息子との婚約と引き換えに資金援助を申し出てくれたのだ。しかも結婚に当たっての持参金も持っていかなくてよいとの破格の条件付き。
 私はこの縁談を受けた。

 はっきり言おう。
 私は彼の両親が用意してくれたウシュハル伯爵家への資金援助が目当てで結婚を決めた。

 そう、ズバリお金目当て!

 社交界ではアルフォンソ様は氷の貴公子と呼ばれる人気者。いつもご令嬢に囲まれていたが、ほとんど女性と会話することも無く、素っ気ない態度を崩さない人だった。
 私はそんな煌びやかな集団には興味が無くて、いつも避けるように距離をとってきた。

 まさかあの集団の中心に居た彼の中身が虫オタクなんて誰も思わないだろう。
 
 私たちの縁談はトントン拍子に話が進み一ヶ月後には婚約披露のパーティーを開くことになった。

 彼の両親もこの縁談には積極的だった。

「キャロラインさん、宜しくね。」

「宜しくお願いいたします。」

 彼の母親のエーデルワイス様は流石は侯爵家といった風格を持つ貴婦人だった。

「私たち夫婦は貴女の事をとても評価しているの。息子は次期侯爵家当主としてはまだ至らない部分がたくさんあるのだけれど、是非支えて欲しいわ。」

「結婚相手は本当に私でいいのですか?」

「ええ、勿論。失礼だけど、ウシュハル伯爵家の事は此方で調べたわ。アルフォンソが貴女を見初めて結婚したいって言いだした時すぐにね。主人も感心していたわ。二年前の不作にいち早く伯爵家が貯蔵していた食糧を領民に配った決断を下したのは貴女なんですってね。」

「……あの頃は……恥ずかしいお話ですが、家令が資産を持ち逃げして、両親はその対応に追われていてそれどころでは……」

 家令は国外へ逃げていた。両親はその事で激しく混乱していて、不作への対応をとれる状況では無かったのだと思う。

「貴女は随分苦労してきたのね。若いのに伯爵家をそして領民を守ってきたことも知っているわ」

「あ、ありがとうございます」

 両親は失った財産を取り戻そうと、怪しげな投資話に乗ってしまった。冷静な判断が出来る状態では無かったのだと思う。それを今でも悔やんでいる。私はあの時どうして止められ無かったんだろう……。

「アルフォンソは人見知りだし、人の頼み事を断ることが苦手なのよ。その点、貴女ならそういった性格が家に、延いては領地に、多大な損失をもたらす事があることを実感しているはずだわ。両親で苦労してきた貴女ならアルフォンソと領地を任せられると思っているのよ」

 そしてエーデルワイス様は、ローザンナ侯爵家で以前40年間家令を務めてくれた人物をウシュハル伯爵家に派遣しようかと提案してくださった。

「弟さんが立派に領地を継げるようになるまで、もう騙されることが無いようにね。でないと、キャロラインさんも安心出来ないでしょ?」

「はい。ありがとうございます」

 有難かった。
 実は私が居なくなったら伯爵家はどうなるのかと心配だったから。

 私は、ローザンナ侯爵夫妻のためにも、次期侯爵夫人として夫を引っ張り、精一杯努めようと思っていた。
    
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