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11.エヴァリン視点
しおりを挟む「エヴァ、貴女に縁談があるの」
「え?誰?」
「ガガーオーイ辺境伯よ。昆虫好きの貴女なら辺境の土地にも慣れてくれるだろうって」
「嫌よ!あの蟲の森の近くでしょ?」
辺境伯領は虫が多く、室内にも入ってくるぐらいだと有名。おまけに王都からも遠くて田舎町。そんな場所に嫁ぎたいなんて思わない。
そんな場所絶対に嫌!!
「貴女にもう縁談なんて無いの。これが最後のチャンスだわ。断るなんて選択肢はないわよ」
「そんな……」
辺境伯なんて本来は侯爵家に並ぶ影響力のある貴族。けれどガガオーイ辺境伯は、令嬢たちが嫁ぐのを嫌がり、未だに独身。私よりも10才以上も年上だ。
「あちこちのお茶会で婚約者のいるローザンナ卿にアピールして、他の縁談があるわけ無いでしょ!もう承諾の返事はしたわよ」
「お母様酷い!」
「何が酷いのよ。虫が多い事以外は良い縁談だわ。辺境伯の人柄も申し分ないし、貴女を迎えたいと言ってくださってるのよ?ガガオーイ領だって人が大勢住んでいるんだし、慣れれば虫なんて問題ないはずよ!そこで生活している人もいるのだからキャーキャー騒がない!先方に失礼でしょ!」
両親に突き放された私は、失意の中ガガオーイ辺境伯へと嫁いだ。
「ひえっ!!あの黒いモヤモヤしたのは、な、何?」
辺境の地へ着いたのは夕方。辺りの景色がオレンジ色に染まる中、空に浮かぶ複数の黒い影。
「あー、あれば羽虫の集団ですよ。夕方になれば出てきますが、特に害はないですよ?」
御者は慣れているのか、何でもないことのように説明した。
この地でこの光景は当たり前なのか……。
ガガオーイ領は予想以上。
領主邸の門扉には『ガ』が隙間なくへばり付いていた。
「ひっ……。そこ……虫が……」
領主邸の使用人たちは慣れているのか、まるで『ガ』なんて見えてないみたいに振る舞う。
「え?まあ、いつもの事ですから」
使用人たちが動く度に「ガ」がバタバタと舞い上がる。それが怖くて仕方ない。
「ようこそエヴァリン様。エヴァリン様は昆虫が好きだと伺いました。王都よりは虫が多いですが、すぐに慣れると思いますわ。」
年配のメイド長が私を優しく出迎えてくれた。
領主邸に働く使用人たちを紹介して貰っている間も、『ガ』が灯りの周りを飛び回る。
「ごめんなさい。予想以上に虫が多くて……」
「まあ!やはりこの多さは王都とは違いますものね。少々お待ちくださいませ。虫を追い出しますから」
メイド長が『ガ』を室内から追い出そうと奮闘してくれたが、窓を開けるとかえって虫が入ってきてしまう。
「ありがとう。もういいわ」
「エヴァリン様、申し訳ありません」
「いいえ。この地ではこれが普通ですもの」
これからこの屋敷で生活していくのだ。来て早々我が儘娘なんて思われたくない。
使用人が出入りする度色んな虫が入ってくる……。もう全ての入り口を閉めきって欲しい。
「エヴァリン嬢、すまないな。こんな辺境に嫁いで来てくれた事を嬉しく思う。なるべく不自由がないように配慮しよう」
12才年上のジェイソン様は落ち着いた大人の雰囲気。もっとガサツなおじさんかと思ったら以外にも上品でちょっと安心した。
恐怖はその夜!
夜行性の虫たちが騒ぐ中、私の精神は限界だった。
「ごめ゛ん゛な゛ざい゛ーーーっ!私、昆虫が好きなんて嘘です。悔しくて嘘ついちゃっただけなんでずーーっっ。わ゛ぁ゛ーーん。い゛え゛にがえ゛りたい゛ーー!!」
「な、泣かないでくれ。すまない。『昆虫好き』では無かったんだな。だが、もう帰すわけにはいかないんだ」
号泣して涎と涙でぐちゃぐちゃの私を、ジェイソン様は優しく慰めてくれた。
ジェイソン様が優しいのは嬉しい。
でも、帰れないーーーーっ!!
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