闇鍋(小話集)

文字の大きさ
9 / 10

最愛の人と番を不幸にした私①

しおりを挟む
悲恋
誰も幸せにならない
自分勝手なヒロイン
モヤモヤして終わります。






ー・ー・ー・ー・ー





「好きです。」

「僕も好きだよ。」

彼の照れた顔が可愛い。
そんな顔を見せてくれるのは私にだけ……。

ああっ、もう心臓がぎゅうっと締め付けられて死んじゃいそう。

彼の手が私の背中にそっと回る。
初めての抱擁は抱き寄せるのではなくて、包み込むようで、もっとくっつきたくてもどかしい……。
私の方から身体を押し付けようかな?なんて思っちゃう。

そんなルンルン気分な私に大好きな人が少しの不安を口にする。

「ムーミィーは獣人だから、いつか番が現れて攫われるんじゃないかって心配なんだ。」

私の幸せに浮かれた脳はこの一言が衝撃だった。
私の最愛の人がこんなに心配しているなんて………!!!
分かったわ!
安心して!
私、早速この不安を解消してくる!!

「ねぇー、シーファス。私、深淵の魔女のところに行って、番を分からなくする魔法を掛けて貰うわ。」

「そんな魔法があるの?」

「ええ、お母さんとお父さんには悲しい魔法だって聞いたけど、私は番になんて会いたくないわ!」  

普通の獣人は適齢期になれば番と出会い、一生を共にする。
番と出逢えない獣人や番を喪った獣人はゆっくり狂っていくので、自ら収容所に入る。
完全に匂いを遮断した収容所でないと、正気を保てなくなるのだ。
だからこそ、獣人にとって番は絶対的存在だった。

私はそんな番の存在が嫌だった。生まれた時から決まっている番じゃなくて、人間みたいに恋をして結婚したかったのだ。

「でも、何か困る代償とか払うんじゃ……。」

「無いと思うわ。私、魔女に会いに行くね。」

私は自分の恋心だけを胸に深淵の魔女の家へと向かった。


ー・ー・ー・ー


深淵の魔女の家は古い小屋のよう……。
自給自足?しているのかな?
外にお野菜が干してある。
魔女の家っていうような神秘的な雰囲気は無い……。

私は緊張しながら、少し傾いた木のドアをノックした。

コンコンコン

……………

あれ?返事が無い……。

コンコンコン

……………

居ないのかなぁ?
出直そうかと踵を返したら、奥からしゃがれた声がした。

「誰だい?煩いねぇーー。」

奥から出て来たのは以外にも若い外見の美人のお姉さん。アンニュイで色っぽい感じ……。

「あ、あの……、わたし……人間の男の子と結婚したいので、番の匂いを分からなくする魔法を掛けて欲しいんです。」

「…ああ…、良いよ。報酬は持って来たかい?」

「は、はいっ!今まで貯めた金貨五枚を……。」

「そんな大層な魔法じゃあない。金貨一枚で良いよ。」

「い、一枚ですか……。」

そんなに安くていいの?
本当にちゃんとした魔法なのかな?

「番の匂いがわからないのは獣人にとっては辛いことさ。そんな良い魔法じゃ無いよ。」

魔法の効果さえあれば問題無い。

「良いんです。私…彼を不安にさせたくないから……。お願いします。その魔法を掛けてください。」

必死に頼み込むと、お姉さんは一回長い髪を掻き上げてから、私の方に手を翳し短い呪文を詠唱した。

ほわほわと身体か温かくなり、身体から何かが抜けたのが分かる。

「はい。もういいよ。」

そう言うとお姉さんは小屋のドアを私の目の前でパタンと閉めた。

これでもう番に惹かれて浮気することは無い。
私は浮かれていた。大好きなシーファスの憂いを取り除くことが出来た。
私達はこれで一生仲良く生活出来る。

そう思っていた。

私はその日、薔薇色の気分のまま帰路へとついた。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...