夫に他の男性との情事を目撃されてしまいました

昔話

※未遂ですが女性が男性に襲われる表現があります。 





母は昔どこか遠い国のお嬢様で父は護衛だったそうだ。
母は政略結婚に耐えきれず、二人で駆け落ちしてこの国に辿り着いた。私はそんな二人の間に生まれその愛情を一身に受けて育った。

母は父と結婚出来ただけで嬉しいといつもニコニコしていたが、平民暮らしは大変だったと思う。母は私が14才の時、父は私が18才の時に亡くなってしまった。

私は父が亡くなってから、働いていた食堂を辞めて冒険者になった。

いつも食堂に来るお客さんたちの武勇伝を聞いてワクワクしていた。

「ヴァニラちゃん、世界は広いぞ。想像も出来ないような綺麗な景色や、変わった動物、旨い食べ物があるんだ。小さな街の中だけで生きているなんて勿体ないぞ！」

そんなお客さんの話を聞いて旅をしたいと本気で思った。

父に似て魔法の才能がある私はきっと冒険者の方が稼げると思ったから、思いきって冒険者になった。

色んな所へ自分の力で行ってみたくて……。

私は食堂を辞めてそのまま冒険者ギルドへ向かった。
はじめはE級冒険者としての登録だったが、冒険者たちは親切で、私は色んなパーティーに誘われた。

A級冒険者パーティーは
俺たちがいると安全だと言って誘ってくれた。

B級冒険者パーティーは
年齢が近いから僕達との旅は楽しいよと誘ってくれた。

けれどいつもセーロスが皆を追い払うから彼といつも一緒にいることになった。

セーロスは初めて冒険者の登録をした時、偶々居合わせたＳＳ級冒険者。

セーロスは
「君は危なっかしいから僕と一緒にいた方がいい。」
と言っていつも一緒にいてくれた。

セーロスはいつも優しい……。

「ヴァニラは冒険者には向いてないよ。だから必ず僕と一緒にいてね。」

セーロスはそう言って私を決して一人にはしない。
過保護な人だと思う。

彼は女性冒険者の中で絶大な人気があり、彼と一晩だけでも、と望む女性冒険者は多かった。
国内でも１０人しかいないＳＳ級冒険者。
しかも若くて背も高く、顔もイケメン。
普通に街を歩いているだけでも振り向く女性がたくさんいる。

女性冒険者の中には性に対して奔放な人も多い。
そんな彼女たちからしたら、いつもセーロスと一緒にいる私はお邪魔虫。
だから色んな嫌がらせをされた。

一番怖かった嫌がらせは破落戸の溜まり場になっている小屋に放り込まれた事。
酔っ払っている男たちに押さえつけられ服を裂かれた。
初めて男性の力を知った。
圧倒的な差……。
どれだけ暴れても敵わない。
もう駄目だと思った瞬間誰かが助けてくれた。
泣きながら見上げると、そこにいたのはセーロス。

その時初めてセーロスの胸に縋りついて泣いた。
わんわんと子供のように……。

「大丈夫か？」

震える私をセーロスは優しく抱き締めてくれた。
その時、私は恋に堕ちた……。


他にも、娼館に売られたこともあった。
借金があると一方的に言われて逃げられなかった。
着たこともないような透けた下着を身に纏わされ、客の待つ部屋に入る。
待っていたのはでっぷり太った５０才過ぎのおじさん。
ニヤニヤ笑って気持ちが悪い。 
でも借金があるなんて言われればどうにも出来ない。
今から私はこのおじさんに身体を弄られる。

そう覚悟した瞬間、セーロスが乱入してくれて助けてくれた。
借金のことは全部嘘。
セーロスがそれを証明してくれた。


そんな風にセーロスにいつも助けてもらって、私はセーロスから離れられなくなった。
そして、私たちは結婚した。