殿下、私も恋というものを知りました。だから追いかけないでくださいませ。

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11.初夜(※R18微)

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 領主邸に着くと、クロヴィス様のご両親であるルフォンス伯爵と夫人が私たちを出迎えてくれた。

「長旅ご苦労だったな。疲れたろう。屋敷の案内は明日するから、今日はもうゆっくりと休んでくれ。」

「レイチェルさん、よろしくね。」

 伯爵はクロヴィス様そっくりの顔立ち。夫人は少し背が低く柔らかい雰囲気の人だった。

「至らないところもたくさんあると思いますが、よろしくお願いします。」

「私たち、クロヴィスが結婚することになって、とても嬉しいのよ。今までどんなにいい人はいないかって聞いても気の無い返事ばかりで……。結婚はすっかり諦めていたの。」

 私は歓迎されているらしく、ご両親も屋敷の使用人さん達もとても好意的だった。

 伯爵夫人は去年辺りから体調が悪いそうだ。今はまだ生活に支障はないが、その病気は進行性でゆっくりと身体が動きにくくなるらしい。
 両親はクロヴィス様にその事を隠していたそうだが、爵位を継ぐ決心をしたことで、お父様からその病気のことを知らされたそうだ。

「好きな魔具研究に打ち込めるように父も気を遣ってくれてたようだが、俺は母の病気のことを知れて良かった。隠されるのは辛い。」

 クロヴィス様はそう言って少し寂しそうに笑った。

 確かに自分の知らないところで、母親が病魔と闘っていたことを後から知ったら後悔すると思う。
私も、早く領地の事を覚えて、義父母にはゆっくり静養してもらいたい。私だってクロヴィス様が病気になったら、少しでも長い時間傍にいたいと、そう願うだろう。

 私のために学園を辞めた先生のために、この地で私に出来ることは何でもしたい。
 そんな気持ちで彼の手をぎゅっと握った。
 軽々しく、先生の力になりますなんて言えないから、無言だったけど、クロヴィス様の横顔が柔らかく緩む。
 確かに私の気持ちは伝わったって、そう思った。

 その日の夕食は義父母と一緒にメインダイニングで食べる事になった。
 新鮮な魚介を使った料理を食べながら、昔話に花が咲く。

 幼い頃から魔具に夢中だった事。適齢期になり釣書が大量に届いて見合いを勧めたお義父様と大喧嘩した話。

 私は義父母の話を不思議な感覚で聞いていた。私の前では余裕があって大人な彼の未熟だった頃の話。クロヴィス様は居心地悪そうで、ちょっと口数が少なかった。

 楽しい夕食が終わり、用意された部屋に戻ろうとしたらクロヴィス様に呼び止められた。

「夜、そっちに行くから。」

 言われた直後は意味が分からなくて……。

「はいっ!」

 学生時代の癖で元気良く返事してから、その意味に気が付いた。

「やる気満々だな。」

 じわじわとその意味を理解して顔が熱くなる。言い訳したくても、既に遅い……。クロヴィス様が自分の部屋に帰っていく背中を見送った。

 どうしよう。
 凄く楽しみにしてると勘違いされちゃったかな……。
 エッチな女だって思われたかも……。

 ルフォンス家の侍女に部屋まで案内して貰いながら、頭の中ではぐるぐると色んな事を考えていた。







※R18手前まで






「座って待つの……かしら……。」

 落ち着かない。
 このベビードール短いし……少し寒い。

「やっぱり何か羽織れば良かったかしら?」

 夫に任せればいいんだって分かってはいるけど……。

「なんだ。ずいぶん緊張してるんだな。」  

 ノックの音がして静かにクロヴィス様が入ってきた。緊張でカチカチの私とは違って自然な態度。

「あ、当たり前です。は、初めてですから。」

「プロポーズするときはあんなに勢いがあったのに……。」

  先生がクスリと笑って、私の隣に腰を下ろした。
  緊張して、肩に力が入る。先生の方を見ることが出来ない。心臓が飛び出そう!

「せ、先生、お、お願いします。」

「だから、名前で呼べって……。」

「クロヴィス様……。」

「ああ……。」

「私……何も分からないので色々教えてください。」

 クロヴィス様は私の髪を優しく掬って耳に掛けた。

「ああ、もちろん。そのつもりだ。」

 耳元に口づけが落ちると擽ったくて思わず肩を竦めてしまう。

「あんまり怖がるな。」

「だ、だって……。」

「出来るだけ、優しく……するから。」

  肩を向けられ、唇が優しく重ねられる。

「あっーー。」

 クロヴィス様の舌が唇をなぞり、その合わさにぬるりと入り込む。

「……んんっ……。」

 厚い舌は、歯列を辿り口腔内を探るように緩やかに動く。柔らかい粘膜は敏感で、彼の舌が触れるとゾクゾクして頭の中が白くぼやける。

「……はぁ……っん……。」

 苦しくて、頭の中が沸騰したみたいに何も考えられない。くちゅくちゅと水音が頭の中で響いて、脳が溶けてかき混ぜられてるみたいで夢中になる。
 こんなに気持ちいいなんて……知らない。

「レイ、息…して……。」

 下唇を食んだまま、クロヴィス様が囁く。湿った吐息が熱い。
 舌を絡め取られた私はされるがまま、熱い口づけに翻弄される。

「……はぁーーっ……。」

 漸く唇が離れると唾液が糸を引いてプツンと途切れた……。クロヴィス様のブルーの瞳は優しく眦を下げて私を見つめる。そのまま、瞼に、頬に、首筋に口づけを落とされ、彼の唇が肌を滑るように下りていく。
 擽ったいのに心地良くて……、ゆるゆると力が抜けて背中に回された大きな腕に身体を預けた。
 
「良く似合ってる。可愛い格好だが、脱がせるぞ。」

 優しくベッドに寝かされると、クロヴィス様はじっとりと私の全身を見つめた。熱っぽい視線を感じて、肌がじんじん痺れるみたい。
 クロヴィス様は手際良くスルスルと私の下着を脱がせてしまい、彼の眼前に一糸纏わぬ姿が晒された。

「……や……。」

こんな姿を見られるなんて、恥ずかしくて、少しでも見えないように身体を手で覆い隠して背中を丸めた。

「レイ、隠すのは駄目だ。」
「だって……。」
「だめだ。」

 胸でクロスしていた腕を取られ頭の横で押し付けられるように固定された。
    
「俺は夫……だろ?」
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