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神官長の憂い
しおりを挟む神官長視点
我が国はスラン帝国の侵略から逃れてきたラハール民族が、初代国王エンドリックを中心として建国した国。
スラン帝国の侵略は残虐であった事で有名。
侵略した土地に住む原住民を皆殺しにすることさえあったと聞く。
我々の祖先がスラン帝国の追跡から逃れて辿り着いたこの土地は、瘴気が濃くて作物が育たない荒れ果てた場所だった。
おまけに魔獣の出る森も近く、人が定住出来るような場所ではなかったそうだ。
だが初代国王に仕えていた聖女クリーテスが、巨大な結界で瘴気と魔獣の侵入を防ぎこの荒れた土地を人の住める安全な状態にした。
その後の記録に彼女の名前は出てこない。
初代聖女クリーテスが晩年どうなったのかは不明だ。
私はおそらく聖女は結界を完成させ命を落としたのだと思っている。
それから800年以上経つ。
今までクリーテスの結界は、我々の国を護る役割を果たしてきた。ラハールの国民の大多数は、ここがかつて人が住めない土地だったのだと言うことを忘れているだろう。
学園の授業で王国の歴史を少し学び、そんな大変な時代があったのだと認識する程度。
だが前聖女の元で初めて結界に綻びが生じた。
大多数の人は前聖女の聖魔力が足りないのが原因だと思っていたようだった。現に、リズリーネ様が聖女になった後は再び結界は力を取り戻した。
だが、昔の記録を調べると、聖女の祈りの儀式なんてものはただの形式的な儀式だったのだ。それがここ100年ほどの間に実質的に必要なものへと変化している。
今では祈りの儀式における聖女の負担は大きい。
私は、何の根拠も無いが、この国を覆うこの結界に限界が近づいているのでは無いかと憂いていた。
勘のようなものだ。結界から感じる微かな違和感。
証拠もないのに、王家に報告するわけにはいかないだろう。国民の不安を煽るだけだ。
そしてーー
ある日私に神託が下りた。
救世主様をこの国へと遣わす、と。
私は心の中で確信した。やはり結界は限界に近づいていて、新たに強い結界を張るために救世主がこの国に降り立ったのだと。
実際現れた救世主様はごく普通の女性。名前をルナと名乗った。
しかし、私が国を救ってくれると期待した女性は、その我儘は性格で神殿の者たちを振り回していた。
本当に我が国を救ってくれるのだろうか?
私の中に少しずつ疑念が湧いてきた。
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