異界からの救世主が来て、聖女の私はお役御免です。

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神殿での会議

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 会議室にてーー


 
「神官長様、救世主ルナ様の職務が滞っております。今後もこのような事が続けば、結界は不安定になるでしょう。前聖女リズリーネ様に神殿に戻ってきていただくのが、結界を守る上で最善かと思われます」

 40代ぐらいの神官が緊張した面持ちで、眼鏡をしきりに直しながら報告書を読み上げると、他に同席した神官たちも深く頷いた。

「ふむ……。聖魔力は大きいが、ルナ様は精神的に不安定な方のようだ。リズリーネ様にご助力いただくことが最も安全だろう。しかし昨日、ルナ様がリズリーネ様を国外追放にせよと殿下に詰め寄ったそうだ」

「なんですって!それは……」

 先程報告をした神官とは別の神官が、言いにくそうに理由を説明した。

「自分よりリズリーネ様の方が良かったとの陰口を聞いてしまったようです。それで、逆上して……」

「それで、殿下に詰め寄ったってわけか。なんて事を……」

「職務をサボって無駄口をたたいていた、その者たちは、異動させました」

「それで、リズリーネ様を国外追放せよ、と?」

「はい」

「それはあまりにも短絡的な……」

「はい。ルナ様は感情的で子供っぽく、神殿に働く者たちも対応に苦慮しております」

「それで、自分よりも評判の良いリズリーネ様を神殿に来させないと?」

「ええ彼女は自分の価値をよく理解しています。自分の代わりに結界を守れる人物が神殿にいるということを良しとしません」

「元々リズリーネ様のお力で結界は安定していたんだ。ルナ様の方に神殿から退いてもらっては?」

「中には救世主様を熱狂的に信じている民もおりますゆえ、ルナ様に騒がれると少し面倒なことに……」

「そうか……」

 当初国民には、神官長に神託が下り祭壇に救世主が現れた、との発表がなされた。そのため、辺縁の土地の瘴気が減ったことで、信心深い国民たちは、救世主を神格化してしまった。

 神殿の内情を知らない国民たちにとって、救世主はまだまだ人気の存在。
 その救世主を簡単に追い出すことは出来ない。 
 下手に騒がれれば、神殿の方が国民からの信頼を失墜させかねない。

「今日はルナ様は?」

「はい。あれからは何も言わず、昨日と今日は大人しく職務をこなしておられます」

「そうか……。このまま何事も無ければいいが……」

 神官と王宮の重臣たちは、穏便にルナを排除する方法について話し始めた。
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