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フェルナンド殿下視点
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私は幼い頃から婚約者候補の少女達に囲まれてきた。
第1王子という立場上当然だ。
12歳にその候補の中からリリアベール嬢が選ばれ、正式に婚約を結んだ。
マナー、教養、美貌、どれをとってもリリアベールは群を抜いていて、私も婚約には不満は無かった。
リリアベール嬢は弁えた少女で自分の立場を良く理解していた。
私たちは婚約者として、仲良く過ごしてきた。
私も彼女との結婚には何の不安も無かった。
しかし、私たちの状況はロリィの登場によって一変する。
貴族令嬢とは違う、自由で愛くるしいその笑顔を一目見て心を奪われた。
何故だか目が離せない。何をしていても視線が彼女を追ってしまう。
初めて貰ったクッキーは、リリアベール嬢の作った物とは違う不恰好な形。
なぜだかそれが凄く嬉しかった。
得意で無いのに、私のためにお菓子を頑張って作ったように思えた。
そう思うと、不恰好なクッキーさえも愛しくて………。
ロリィは貴族令嬢のように上品な笑い方はしない。心の底から楽しそうに笑う。
その笑顔を見ていると、自然と心が弾み一緒に笑い声を上げてしまう。
一緒に過ごすと不思議と気分が高揚した。
ロリィはリリアベールを苦手に思っていたようだった。
「リリアベール様が私の教科書を隠したと皆が噂してるんです。」
「高位貴族の方々が私の事を無視するんです。これもリリアベール様の命令だって。」
「この間階段から突き落とされそうになったんです。これもきっとリリアベール様のせいです。」
「私これ以上リリアベール様に悪く思われたく無いんです。だからフェルナンド様とランチを食べるのは止めます。」
大衆紙にもリリアベールの悪行は書かれていて、学園内でも良い噂は聞かなかった。
リリアベールは嫉妬のあまり、ロリィに嫌がらせをしているのだと確信していた。
「フェルナンド殿下、もう少し周囲の状況をご覧になってください。」
悪女として名高いリリアベールの忠告を誰が聞くのだろう?
私は浮かれていた。そしてロリィの言葉を全て信じて、卒業パーティーでリリアベール嬢に婚約破棄を言い渡した。
卒業パーティーが終わると同時に、何故だか急速にロリィへの恋心が消え去った。
浮かされていた熱が冷めれば、両親である国王夫妻や貴族への対応など、課題が山積だ。
冷静になれば、このような暴挙はあり得ない。
帰宅後、両親である国王夫妻にも随分と叱られた。
「リリアベールの噂を信じるとは!護衛からの報告で全て冤罪だと分かっている!!」
しかし今更撤回など出来ない。
《フェルナンド殿下、光の乙女ロリィと真実の愛を貫く!!》
大衆紙によって婚約破棄は美談として国民に受け入れられた。
この国の国民は教会の壁画の光の乙女の再来がロリィだと信じて疑わない。
しかし、急に気持ちが冷めた私にはロリィとの結婚は気が重い。
お妃教育も受けていないロリィが私をサポート出来るだろうか?
ロリィは相変わらずクッキーを焼いてくれる。
クッキーばかり……。
相変わらず不恰好なまま……。
どうしてリリアベールはあんなに菓子作りが上手かったのだろう?
そんなに甘い物は好まなかった。寧ろ、甘党なのは私の方で………。
努力して上手くなったのではないか?
今更気付く。
私のために努力してくれていたのだと。
「フェルナンド様~。お妃教育は、厳しくてぇ………。私は平民ですしぃ~減らして貰えませんかぁ?」
「王妃様が~平民は挨拶も碌に出来ないの?って意地悪言うんです~。」
ロリィが執務室に先触れも無しに訪れて来て、甘えてくる。
手には不恰好なクッキー。
「お妃教育は代々の王妃がみんな受けてきたものだ。受けないのならば、正妃は無理だ。」
「えー。何とかならない?あっ!シャルル様に相談しよう。」
シャルルとは枢機卿の事だ。
光の乙女と呼ばれ、教会で大切にされていたロリィは我が儘だ。
自分のために全てが動くと思っているふしがある。
私の返事が気に入らなかったのか、ロリィはバタバタと部屋を出ていった。
国王陛下である父上もロリィの事は気に入らない様子だ。
ロリィとの婚姻でこれ以上教会が政治に介入するのを警戒している。
けれども、国民の間で大人気のロリィを排除するなど到底出来ない。
リリアベールの誤解を解いて、側室として支えて貰えないだろうか?
「リリアベールを説得に行く。ロリィに騙されたのだと言えば戻って来てくれるだろう。」
あんなに私に尽くしてくれた彼女の事だ。頷いてくれるに違いない。
私はリリアベールの行方を探すよう側近達に命じた。
第1王子という立場上当然だ。
12歳にその候補の中からリリアベール嬢が選ばれ、正式に婚約を結んだ。
マナー、教養、美貌、どれをとってもリリアベールは群を抜いていて、私も婚約には不満は無かった。
リリアベール嬢は弁えた少女で自分の立場を良く理解していた。
私たちは婚約者として、仲良く過ごしてきた。
私も彼女との結婚には何の不安も無かった。
しかし、私たちの状況はロリィの登場によって一変する。
貴族令嬢とは違う、自由で愛くるしいその笑顔を一目見て心を奪われた。
何故だか目が離せない。何をしていても視線が彼女を追ってしまう。
初めて貰ったクッキーは、リリアベール嬢の作った物とは違う不恰好な形。
なぜだかそれが凄く嬉しかった。
得意で無いのに、私のためにお菓子を頑張って作ったように思えた。
そう思うと、不恰好なクッキーさえも愛しくて………。
ロリィは貴族令嬢のように上品な笑い方はしない。心の底から楽しそうに笑う。
その笑顔を見ていると、自然と心が弾み一緒に笑い声を上げてしまう。
一緒に過ごすと不思議と気分が高揚した。
ロリィはリリアベールを苦手に思っていたようだった。
「リリアベール様が私の教科書を隠したと皆が噂してるんです。」
「高位貴族の方々が私の事を無視するんです。これもリリアベール様の命令だって。」
「この間階段から突き落とされそうになったんです。これもきっとリリアベール様のせいです。」
「私これ以上リリアベール様に悪く思われたく無いんです。だからフェルナンド様とランチを食べるのは止めます。」
大衆紙にもリリアベールの悪行は書かれていて、学園内でも良い噂は聞かなかった。
リリアベールは嫉妬のあまり、ロリィに嫌がらせをしているのだと確信していた。
「フェルナンド殿下、もう少し周囲の状況をご覧になってください。」
悪女として名高いリリアベールの忠告を誰が聞くのだろう?
私は浮かれていた。そしてロリィの言葉を全て信じて、卒業パーティーでリリアベール嬢に婚約破棄を言い渡した。
卒業パーティーが終わると同時に、何故だか急速にロリィへの恋心が消え去った。
浮かされていた熱が冷めれば、両親である国王夫妻や貴族への対応など、課題が山積だ。
冷静になれば、このような暴挙はあり得ない。
帰宅後、両親である国王夫妻にも随分と叱られた。
「リリアベールの噂を信じるとは!護衛からの報告で全て冤罪だと分かっている!!」
しかし今更撤回など出来ない。
《フェルナンド殿下、光の乙女ロリィと真実の愛を貫く!!》
大衆紙によって婚約破棄は美談として国民に受け入れられた。
この国の国民は教会の壁画の光の乙女の再来がロリィだと信じて疑わない。
しかし、急に気持ちが冷めた私にはロリィとの結婚は気が重い。
お妃教育も受けていないロリィが私をサポート出来るだろうか?
ロリィは相変わらずクッキーを焼いてくれる。
クッキーばかり……。
相変わらず不恰好なまま……。
どうしてリリアベールはあんなに菓子作りが上手かったのだろう?
そんなに甘い物は好まなかった。寧ろ、甘党なのは私の方で………。
努力して上手くなったのではないか?
今更気付く。
私のために努力してくれていたのだと。
「フェルナンド様~。お妃教育は、厳しくてぇ………。私は平民ですしぃ~減らして貰えませんかぁ?」
「王妃様が~平民は挨拶も碌に出来ないの?って意地悪言うんです~。」
ロリィが執務室に先触れも無しに訪れて来て、甘えてくる。
手には不恰好なクッキー。
「お妃教育は代々の王妃がみんな受けてきたものだ。受けないのならば、正妃は無理だ。」
「えー。何とかならない?あっ!シャルル様に相談しよう。」
シャルルとは枢機卿の事だ。
光の乙女と呼ばれ、教会で大切にされていたロリィは我が儘だ。
自分のために全てが動くと思っているふしがある。
私の返事が気に入らなかったのか、ロリィはバタバタと部屋を出ていった。
国王陛下である父上もロリィの事は気に入らない様子だ。
ロリィとの婚姻でこれ以上教会が政治に介入するのを警戒している。
けれども、国民の間で大人気のロリィを排除するなど到底出来ない。
リリアベールの誤解を解いて、側室として支えて貰えないだろうか?
「リリアベールを説得に行く。ロリィに騙されたのだと言えば戻って来てくれるだろう。」
あんなに私に尽くしてくれた彼女の事だ。頷いてくれるに違いない。
私はリリアベールの行方を探すよう側近達に命じた。
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