悪役令嬢とオッサン商人の不器用な純愛

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セイン視点2

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久しぶりに会ったリリアベールは泣きじゃくって、小さな子供のようだった。

六年前にはすでに貴族令嬢として完璧な立ち居振舞いを身に付け、毅然としていた少女が、今は俺の腕の中でこんなにも小さい。

肩を震わせ、歯が噛み合わないほどしゃくり上げる。上手く喋れなくて、頼りなげで、……今にも壊れてしまいそうだ。
どれだけ、今まで耐えて来たのだろう………。


迎えに来て良かった。


六年間、リリアベールの事を忘れた日など無かった。

綺麗な少女だった。出逢った時は12歳。
彼女の未来を聞いて助ける決心をした。

可哀想だから………幼い少女への庇護欲………そう思っていた。

今、腕の中で震えて泣く少女への気持ちはそれだけだろうか?

この少女がもう何にも傷付けられないようにしてやりたい。
綺麗な物だけを見て、楽しい事だけをして過ごさせてやりたい。 
その思いの重さに驚く。

でもきっと彼女は真綿にくるまれたような生活は望まないだろう。
『未来は変わる筈』
そう言った彼女の力強い目を思い出す。
自分の両足でしっかり立つ事を彼女は望むだろう。

自分でも分かっている。腕の中に居る彼女に抱く想いは………恋。

俺は第1王子のように身分のある美少年でもない、ただの平民だ。
相手は公爵令嬢。
彼女の弱っている心の隙につけ込むような事はしたくない。
俺は保護者として紳士的に振る舞い、彼女の傷が癒えるのを待つ事に決めた。
その後に彼女が好きな人を見つけたなら、……応援しよう。
それが一番彼女にとっては幸せなのだと自分に言い聞かせた。

★☆★

学園に商品を納品している業者からリリアベールの様子は聞いていた。

第1王子と婚約者は生徒たちの注目の的で、噂話は多数存在した。

大衆紙にも第1王子と光の乙女の接近は話題になっていた。

二人の恋を運命とし、リリアベールを邪魔な恋敵として扱う新聞も多い。とりわけ大衆紙は身分の高いリリアベールへは批判的だ。

リリアベールは6年前に宣言した通り、婚約者として恥ずかしく無い振る舞いを心掛けていたようだし、王子と仲良くするための努力もしていたようだった。

「お高く止まっている。」
「勉強ばかりで、他の生徒と交流しない。そのくせ第1王子ばかり追い掛けている。」

学園の噂もリリアベールに好意的なものでは無かった。

俺たちはリリアベールを知っているから、彼女が第1王子の婚約者として相応しくあろうと、そして仲良くしようと頑張っているのだと思っていた。
リリアベールがロリィにしたとされている意地悪もそうだ。
アドバイスしたのだから、彼女がそんな事をする筈無いのに………。

学園の卒業パーティーの会場から出てくるリリアベールを影から見ていた。

ユウの予言通り、パーティーの途中で会場を出て来てしまった。

婚約破棄されたのだろう。それでも、誰も居ない場所でも、彼女は優雅に歩く。
未来の王妃として育った気高さ。

その凛とした姿が尚更に痛々しい………。 

今すぐにでも駆けつけたい思いを我慢する。

彼女は最後まで第1王子の婚約者、公爵令嬢として振る舞う事を望んだのだ。

もし…このあと、公爵家を追い出されたなら…迎えに行こう。
もう誰も彼女を傷つけさせない。
その為の準備もした。

さあ、彼女を迎えに行こう。

    
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