7 / 35
学園生活での苦悩
しおりを挟む
フェルナンド殿下の好きな人はロリィでも、努力すればいつかは私の方を振り向いてくれるかもしれない。
ロリィへの意地悪は駄目だ。
只管、自分を磨く事に集中する。
それ以外の方法なんて知らない。誘惑するのは矜持が許さない。
お妃として相応しくなるために、マナーの勉強を増やし、外交でも役に立てるように語学の勉強にも取り組んだ。
苦手な王妃様によるお妃教育も頑張った。
王妃様は殿下の婚約者である私が気に入らない様子だった。
「フェルナンドの隣に立つのに、その地味なドレスでは見劣りするわ。」
「優しい顔立ちならいいのに、貴方ときたら顔がキツくて怖いわー。せめて宝石は優しい色合いの物にしなさい。」
「あー嫌だわ。辛気臭い顔ね。あなたが居るとお茶も不味く感じるわ。」
歯に衣着せぬ物言いは私の心に深く突き刺さる。
ここ数年、王妃様の態度は更にきつくなっていた。
どんなに辛くても、王宮での式典や行事の段取りや慣習は、王妃様から学ぶしかない。
それでも、フェルナンド殿下との距離は開くばかり。私への態度がどんどん冷たくなっていく。
そんな頃、父も家族も私への態度が冷たくなっていった。
どうしてかは分からない。
「我が儘ばかり言うな!」
「贅沢ばかりして!」
そう言われるが、身に覚えはないのだ。
これもノート通り。
けれども私は、ノートの中の私のように、使用人を困らせる我が儘を言った事も、贅沢品をねだった事も無かった。
そして、卒業パーティーを控えた頃、私がロリィに嫌がらせをしていると噂が拡がった。
「殿下と親しいロリィ様に嫉妬して………。」
「ロリィ様の教科書を隠したらしい………。」
「殿下もリリアベール様の我が儘には困ってらっしゃる……。」
私にも聞こえてくる噂話。この学園には私の味方はいない。
だから容赦無く、私にも聞こえるように噂する。
面と向かって言われるのとは違い反論の機会も与えられない。
勿論そんな事はしていないが、実しやかに囁かれる噂に反論する術など無い。
私は学園で孤立を深めた。
今日もロリィと殿下は学園の中庭でランチを食べている。
私の視線に気付くことも無い。
殿下の瞳が、仕草が、全身で彼女をいとおしいと伝えてくる。
彼女の頬にそっと手を当て、蕩けるように微笑む。
傷付け無いように、慎重に触る、その指先。
……ツキン……
胸に刺さったトゲが、また深くなる
私は針の筵のような学園を卒業した後の事に思いを馳せる。
平民として、自由に各国を飛び回る。それも悪くない。
どんなに努力しても、必要として貰えないこの生活は辛かった。
セインに商人として教えを請おう。きっと語学も役に立つ。
けれども、その考えを必死に頭の隅へ押しやる。
私はまだフェルナンド殿下の婚約者。
婚約破棄されるその瞬間まで、公爵令嬢として相応しくあろう。
胸を張ってこの恋心を大切にしよう。
婚約者として決して恥ずべきような気持ちではないのだから。
「殿下。今よろしいですか?」
「何だ?」
殿下が一人で居る時間を見計らって、会話を試みる。
「わたくし、殿下の婚約者として長く過ごして参りました。けれども最近、一緒に過ごす時間が少なくて、寂しく思っておりますわ。私とまたランチでも一緒に食べていただけませんか?」
殿下は眉間に皺を寄せ、少し考える素振りを見せる。
「リリアベール、君とは政略的な意味合いで婚約を結んだ。態々、交流を深める必要はないと思うが?」
「私とは仲良くする必要はないと?」
「そこまでは言わないが、学園にはこの時にしか交流を深められない者が大勢いるのだ。君とは学園を卒業しても会うことになるんだ。君との交流は学園を卒業してからでも遅くは無いだろう?」
殿下の目を真っ直ぐに見つめる。
本当に?
卒業したら仲良くしてくれるの?
殿下が僅かに目を逸らせた。
「……分かりました。お時間をとらせて申し訳ありません。失礼します。」
それでも、貴方の気持ちを取り戻す努力をしていこう。
婚約者である限り。
ロリィへの意地悪は駄目だ。
只管、自分を磨く事に集中する。
それ以外の方法なんて知らない。誘惑するのは矜持が許さない。
お妃として相応しくなるために、マナーの勉強を増やし、外交でも役に立てるように語学の勉強にも取り組んだ。
苦手な王妃様によるお妃教育も頑張った。
王妃様は殿下の婚約者である私が気に入らない様子だった。
「フェルナンドの隣に立つのに、その地味なドレスでは見劣りするわ。」
「優しい顔立ちならいいのに、貴方ときたら顔がキツくて怖いわー。せめて宝石は優しい色合いの物にしなさい。」
「あー嫌だわ。辛気臭い顔ね。あなたが居るとお茶も不味く感じるわ。」
歯に衣着せぬ物言いは私の心に深く突き刺さる。
ここ数年、王妃様の態度は更にきつくなっていた。
どんなに辛くても、王宮での式典や行事の段取りや慣習は、王妃様から学ぶしかない。
それでも、フェルナンド殿下との距離は開くばかり。私への態度がどんどん冷たくなっていく。
そんな頃、父も家族も私への態度が冷たくなっていった。
どうしてかは分からない。
「我が儘ばかり言うな!」
「贅沢ばかりして!」
そう言われるが、身に覚えはないのだ。
これもノート通り。
けれども私は、ノートの中の私のように、使用人を困らせる我が儘を言った事も、贅沢品をねだった事も無かった。
そして、卒業パーティーを控えた頃、私がロリィに嫌がらせをしていると噂が拡がった。
「殿下と親しいロリィ様に嫉妬して………。」
「ロリィ様の教科書を隠したらしい………。」
「殿下もリリアベール様の我が儘には困ってらっしゃる……。」
私にも聞こえてくる噂話。この学園には私の味方はいない。
だから容赦無く、私にも聞こえるように噂する。
面と向かって言われるのとは違い反論の機会も与えられない。
勿論そんな事はしていないが、実しやかに囁かれる噂に反論する術など無い。
私は学園で孤立を深めた。
今日もロリィと殿下は学園の中庭でランチを食べている。
私の視線に気付くことも無い。
殿下の瞳が、仕草が、全身で彼女をいとおしいと伝えてくる。
彼女の頬にそっと手を当て、蕩けるように微笑む。
傷付け無いように、慎重に触る、その指先。
……ツキン……
胸に刺さったトゲが、また深くなる
私は針の筵のような学園を卒業した後の事に思いを馳せる。
平民として、自由に各国を飛び回る。それも悪くない。
どんなに努力しても、必要として貰えないこの生活は辛かった。
セインに商人として教えを請おう。きっと語学も役に立つ。
けれども、その考えを必死に頭の隅へ押しやる。
私はまだフェルナンド殿下の婚約者。
婚約破棄されるその瞬間まで、公爵令嬢として相応しくあろう。
胸を張ってこの恋心を大切にしよう。
婚約者として決して恥ずべきような気持ちではないのだから。
「殿下。今よろしいですか?」
「何だ?」
殿下が一人で居る時間を見計らって、会話を試みる。
「わたくし、殿下の婚約者として長く過ごして参りました。けれども最近、一緒に過ごす時間が少なくて、寂しく思っておりますわ。私とまたランチでも一緒に食べていただけませんか?」
殿下は眉間に皺を寄せ、少し考える素振りを見せる。
「リリアベール、君とは政略的な意味合いで婚約を結んだ。態々、交流を深める必要はないと思うが?」
「私とは仲良くする必要はないと?」
「そこまでは言わないが、学園にはこの時にしか交流を深められない者が大勢いるのだ。君とは学園を卒業しても会うことになるんだ。君との交流は学園を卒業してからでも遅くは無いだろう?」
殿下の目を真っ直ぐに見つめる。
本当に?
卒業したら仲良くしてくれるの?
殿下が僅かに目を逸らせた。
「……分かりました。お時間をとらせて申し訳ありません。失礼します。」
それでも、貴方の気持ちを取り戻す努力をしていこう。
婚約者である限り。
41
あなたにおすすめの小説
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた
紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。
流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。
ザマアミロ!はあ、スッキリした。
と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
「離婚しよう」と軽く言われ了承した。わたくしはいいけど、アナタ、どうなると思っていたの?
あとさん♪
恋愛
突然、王都からお戻りになったダンナ様が、午後のお茶を楽しんでいたわたくしの目の前に座って、こう申しましたのよ、『離婚しよう』と。
閣下。こういう理由でわたくしの結婚生活は終わりましたの。
そう、ぶちまけた。
もしかしたら別れた男のあれこれを話すなんて、サイテーな女の所業かもしれない。
でも、もう良妻になる気は無い。どうでもいいとばかりに投げやりになっていた。
そんなヤサぐれモードだったわたくしの話をじっと聞いて下さった侯爵閣下。
わたくし、あなたの後添いになってもいいのでしょうか?
※前・中・後編。番外編は緩やかなR18(4話)。(本編より長い番外編って……orz)
※なんちゃって異世界。
※「恋愛」と「ざまぁ」の相性が、実は悪いという話をきいて挑戦してみた。ざまぁは後編に。
※この話は小説家になろうにも掲載しております。
女性執事は公爵に一夜の思い出を希う
石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。
けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。
それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。
本編4話、結婚式編10話です。
グリモワールの塔の公爵様【18歳Ver】
屋月 トム伽
恋愛
18歳になり、結婚が近いと思われたプリムローズは、久しぶりに王都の邸にいる婚約者に会いに行っていた。
だけど、義姉クレアと婚約者ジャンのベッドインを目撃してしまい、婚約破棄されてしまったプリムローズ。
プレスコット伯爵家から追い出すための名目で、金持ちの子爵様に売られるも同然の後妻に入ることになったプリムローズ。
そんなある日、夜会で出会ったクライド・レイヴンクロフト次期公爵様から結婚をもうしこまれる。
しかし、クライドにはすでに親の決めた婚約者がおり、第2夫人でいいなら……と、言われる。
後妻に入るよりは、第2夫人のほうがマシかもとか思っていると、約束だ、と頬にキスをされた。
「必ず迎え入れる」と約束をしたのだ。
でも、クライドとのデートの日にプリムローズは来なかった。
約束をすっぽかされたと思ったクライドは、その日から一向にプリムローズと会うことはなかった。
時折出す手紙のやり取り。プリムローズがどうしたいのかわからないクライドは困惑していた。
そして、プレスコット家での現状を知り、クライドはプリムローズをプレスコット伯爵邸から連れ出し、グリモワールの塔に連れて行き……。
最初は、形だけの結婚のつもりかと思っていたのに、公爵様はひどく甘く、独占欲の固まりだった。
※以前投稿してました作品を【18歳Ver】に書き直したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる