悪役令嬢とオッサン商人の不器用な純愛

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学園生活での苦悩

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フェルナンド殿下の好きな人はロリィでも、努力すればいつかは私の方を振り向いてくれるかもしれない。

ロリィへの意地悪は駄目だ。
只管、自分を磨く事に集中する。
それ以外の方法なんて知らない。誘惑するのは矜持が許さない。

お妃として相応しくなるために、マナーの勉強を増やし、外交でも役に立てるように語学の勉強にも取り組んだ。
苦手な王妃様によるお妃教育も頑張った。
王妃様は殿下の婚約者である私が気に入らない様子だった。
「フェルナンドの隣に立つのに、その地味なドレスでは見劣りするわ。」
「優しい顔立ちならいいのに、貴方ときたら顔がキツくて怖いわー。せめて宝石は優しい色合いの物にしなさい。」
「あー嫌だわ。辛気臭い顔ね。あなたが居るとお茶も不味く感じるわ。」

歯に衣着せぬ物言いは私の心に深く突き刺さる。
ここ数年、王妃様の態度は更にきつくなっていた。

どんなに辛くても、王宮での式典や行事の段取りや慣習は、王妃様から学ぶしかない。

それでも、フェルナンド殿下との距離は開くばかり。私への態度がどんどん冷たくなっていく。

そんな頃、父も家族も私への態度が冷たくなっていった。
どうしてかは分からない。

「我が儘ばかり言うな!」
「贅沢ばかりして!」

そう言われるが、身に覚えはないのだ。

これもノート通り。
けれども私は、ノートの中の私のように、使用人を困らせる我が儘を言った事も、贅沢品をねだった事も無かった。

そして、卒業パーティーを控えた頃、私がロリィに嫌がらせをしていると噂が拡がった。

「殿下と親しいロリィ様に嫉妬して………。」
「ロリィ様の教科書を隠したらしい………。」
「殿下もリリアベール様の我が儘には困ってらっしゃる……。」

私にも聞こえてくる噂話。この学園には私の味方はいない。
だから容赦無く、私にも聞こえるように噂する。
面と向かって言われるのとは違い反論の機会も与えられない。
勿論そんな事はしていないが、実しやかに囁かれる噂に反論する術など無い。

私は学園で孤立を深めた。

今日もロリィと殿下は学園の中庭でランチを食べている。
私の視線に気付くことも無い。

殿下の瞳が、仕草が、全身で彼女をいとおしいと伝えてくる。
彼女の頬にそっと手を当て、蕩けるように微笑む。
傷付け無いように、慎重に触る、その指先。

……ツキン……
胸に刺さったトゲが、また深くなる


私は針の筵のような学園を卒業した後の事に思いを馳せる。
平民として、自由に各国を飛び回る。それも悪くない。

どんなに努力しても、必要として貰えないこの生活は辛かった。

セインに商人として教えを請おう。きっと語学も役に立つ。

けれども、その考えを必死に頭の隅へ押しやる。

私はまだフェルナンド殿下の婚約者。

婚約破棄されるその瞬間まで、公爵令嬢として相応しくあろう。

胸を張ってこの恋心を大切にしよう。

婚約者として決して恥ずべきような気持ちではないのだから。



「殿下。今よろしいですか?」
「何だ?」

殿下が一人で居る時間を見計らって、会話を試みる。

「わたくし、殿下の婚約者として長く過ごして参りました。けれども最近、一緒に過ごす時間が少なくて、寂しく思っておりますわ。私とまたランチでも一緒に食べていただけませんか?」

殿下は眉間に皺を寄せ、少し考える素振りを見せる。

「リリアベール、君とは政略的な意味合いで婚約を結んだ。態々、交流を深める必要はないと思うが?」

「私とは仲良くする必要はないと?」

「そこまでは言わないが、学園にはこの時にしか交流を深められない者が大勢いるのだ。君とは学園を卒業しても会うことになるんだ。君との交流は学園を卒業してからでも遅くは無いだろう?」

殿下の目を真っ直ぐに見つめる。
本当に?
卒業したら仲良くしてくれるの?

殿下が僅かに目を逸らせた。

「……分かりました。お時間をとらせて申し訳ありません。失礼します。」

それでも、貴方の気持ちを取り戻す努力をしていこう。

婚約者である限り。

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