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リテック王国
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「着いたぞ。」
セインの声に目を開ければ、既に馬車は止まっていた。
あれ?
「私、……ユウに寄りかかって……?」
私の隣にはセインが座っていた。
「途中で変わった。」
セインがさっと顔を反らせた。
ん?
「私がトイレに行きたいから代わって貰ったの。」
「そうなの?ごめんなさい。長い時間。」
「いいよ、いいよ。セインも役得だし、ね?」
「え?」
「宿に入るぞ!」
私とユウの会話を遮るように大きな声を出すと、セインは宿へと入って行った。
「暫く此処に滞在する。シイネの腰を休めたい。」
「はい。」
「明日、この町にあるキャシュール商会の支部を案内しよう。」
「支部?」
「ああ、本部は既にランザ王国に移動してて、俺達だけ残ってたんだ。向こうには私兵もいるし、結構な大所帯になる。」
私を助けてくれるためだけに拠点を移動するのをまっていてくれたのか。
本当にありがたい。セイン達が助けてくれなければ私は今頃………。
「………ありがとう。」
「ん?ああ。いいんだ。シイネの腰のこともあってゆっくり移動したかったし、な。」
シイネさんは長距離の馬車移動で痛みが悪化したようだった。
彼女には宿に入って直ぐに部屋で休んで貰っている。
私達は明日の予定を確認すると、それぞれの部屋へ戻って休んだ。
翌朝キャシュール商会の支部へ来ていた。
支部に入るとセインは用意された椅子に腰掛け、皆と挨拶を交わした。
支部の代表らしき男がセインに書類を渡す。
「おお、久しぶりだな。レスロ。」
「会頭!お久しぶりです。」
「変わりはないか?」
「はい。まぁ、少しだけ。」
「なんだ?」
「フェンダ伯爵領が、今年台風で農産物の被害が大きくて支払いが滞ってるんです。」
「ああ。」
セインは渡された書類をパラパラとめくり、ユウと何やら小声で会話を交わす。
「フェンダ伯爵領は領地経営に問題はないし、支払いには暫く猶予を。」
「はい。」
「あっ、それから彼女はリリアベール。これから俺の秘書として働く。宜しくな。」
急に紹介され、急いで礼を取る。
「リリアベールと申します。至らないところが沢山あるかと存じますが、宜しくお願いいたします。」
「え?リリアベール?あの、リタ王国の?」
「ああ、優秀なんでスカウトしてきた。お前達ちょっかい掛けるなよ?」
「は、はい。」
その後も、セインの仕事の様子を近くで見ていた。
セインは部下の話をきちんと最後まで聞いて、指示を出していく。
いつもみたいにふざけた様子は見せない。
セインが真剣に仕事する横顔が格好良くてチラチラ見てしまうが、セインは仕事に集中しているのか、私の視線に気が付かない。
「いけない。私も集中しなきゃ。」
私も書類の整理や伝票の書き方を教わりながら手伝ってみるが、初めての作業ばかりなので時間がかかる。
「すみません。レスロさん。」
「いや、初めてにしては上出来だよ!」
レスロさんは書き方を細かく丁寧に説明してくれる。
少しでも役に立ちたいので、訂正が少なくなるよう集中すれば、いつの間にか外は薄暗くなっていた。
仕事が終わり帰路につく。
ユウは久しぶりにあった友人と食事に出掛けてしまった。
「疲れたか?」
「全然!楽しかったわ。」
「そっか。」
セインがくしゃりと私の頭を撫でる。
「セインのね、仕事姿が格好良かった。」
頭を撫でていた手が止まり、何だか手の重みが増したようだ。
「セイン?」
見上げるとセインは真っ赤になって照れている。
セインのそんな反応が意外で、私も恥ずかしくなってしまい、その後は無言で宿まで歩いた。
セインの声に目を開ければ、既に馬車は止まっていた。
あれ?
「私、……ユウに寄りかかって……?」
私の隣にはセインが座っていた。
「途中で変わった。」
セインがさっと顔を反らせた。
ん?
「私がトイレに行きたいから代わって貰ったの。」
「そうなの?ごめんなさい。長い時間。」
「いいよ、いいよ。セインも役得だし、ね?」
「え?」
「宿に入るぞ!」
私とユウの会話を遮るように大きな声を出すと、セインは宿へと入って行った。
「暫く此処に滞在する。シイネの腰を休めたい。」
「はい。」
「明日、この町にあるキャシュール商会の支部を案内しよう。」
「支部?」
「ああ、本部は既にランザ王国に移動してて、俺達だけ残ってたんだ。向こうには私兵もいるし、結構な大所帯になる。」
私を助けてくれるためだけに拠点を移動するのをまっていてくれたのか。
本当にありがたい。セイン達が助けてくれなければ私は今頃………。
「………ありがとう。」
「ん?ああ。いいんだ。シイネの腰のこともあってゆっくり移動したかったし、な。」
シイネさんは長距離の馬車移動で痛みが悪化したようだった。
彼女には宿に入って直ぐに部屋で休んで貰っている。
私達は明日の予定を確認すると、それぞれの部屋へ戻って休んだ。
翌朝キャシュール商会の支部へ来ていた。
支部に入るとセインは用意された椅子に腰掛け、皆と挨拶を交わした。
支部の代表らしき男がセインに書類を渡す。
「おお、久しぶりだな。レスロ。」
「会頭!お久しぶりです。」
「変わりはないか?」
「はい。まぁ、少しだけ。」
「なんだ?」
「フェンダ伯爵領が、今年台風で農産物の被害が大きくて支払いが滞ってるんです。」
「ああ。」
セインは渡された書類をパラパラとめくり、ユウと何やら小声で会話を交わす。
「フェンダ伯爵領は領地経営に問題はないし、支払いには暫く猶予を。」
「はい。」
「あっ、それから彼女はリリアベール。これから俺の秘書として働く。宜しくな。」
急に紹介され、急いで礼を取る。
「リリアベールと申します。至らないところが沢山あるかと存じますが、宜しくお願いいたします。」
「え?リリアベール?あの、リタ王国の?」
「ああ、優秀なんでスカウトしてきた。お前達ちょっかい掛けるなよ?」
「は、はい。」
その後も、セインの仕事の様子を近くで見ていた。
セインは部下の話をきちんと最後まで聞いて、指示を出していく。
いつもみたいにふざけた様子は見せない。
セインが真剣に仕事する横顔が格好良くてチラチラ見てしまうが、セインは仕事に集中しているのか、私の視線に気が付かない。
「いけない。私も集中しなきゃ。」
私も書類の整理や伝票の書き方を教わりながら手伝ってみるが、初めての作業ばかりなので時間がかかる。
「すみません。レスロさん。」
「いや、初めてにしては上出来だよ!」
レスロさんは書き方を細かく丁寧に説明してくれる。
少しでも役に立ちたいので、訂正が少なくなるよう集中すれば、いつの間にか外は薄暗くなっていた。
仕事が終わり帰路につく。
ユウは久しぶりにあった友人と食事に出掛けてしまった。
「疲れたか?」
「全然!楽しかったわ。」
「そっか。」
セインがくしゃりと私の頭を撫でる。
「セインのね、仕事姿が格好良かった。」
頭を撫でていた手が止まり、何だか手の重みが増したようだ。
「セイン?」
見上げるとセインは真っ赤になって照れている。
セインのそんな反応が意外で、私も恥ずかしくなってしまい、その後は無言で宿まで歩いた。
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