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フェルナンド殿下の護衛騎士・スタン視点

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帰りの場所の中でもフェルナンド殿下は呆けたままだった。
無理もない。殿下には衝撃的だった筈だ。
殿下は表面的には女性の扱いに長けているように見えるが、うぶでファーストキスには並々ならぬ憧れを抱いていた。
「ファーストキスはプロポーズの後」
と決めていたのを知っている。
そんな殿下が目の前でリリアベール様のキスシーンを見たのだ。耐え難いショックだったのだろう。

俺は子羊を魔女に生け贄として捧げるような気分になっていた。

学園や市中での噂とは違うロリィ様の本性に王宮で働く者たちは皆気付いていた。

彼女は水面下での王妃様との争いに勝ったのだ。

王妃様は力を削がれ既に離宮で軟禁のような状態だ。
陛下も似たような状態だ。信頼出来る側近を引き剥がされ、辛うじて王位に就いている。

ロリィ様がフェルナンド殿下との婚姻を望んでいる限り、これ以上国王夫妻がどうこうされる事は無いだろう。
殿下は国王が地位を守るための生け贄だ。
殿下を守っていた王妃様が離宮から出られなくなった今、殿下を守る事の出来る人はいない。
あの純真無垢な振りをしていた可愛らしい少女は魔女のように恐ろしく狡猾だった。
彼女は自分の価値を良く理解していて、目的のためには躊躇すること無く身体を差し出した。

彼女の純潔を貰ったと噂されているのは齢五十を越える宰相だ。
彼女の回復魔法で精と体力を回復させながらの情事は一晩中に及ぶ。若き日を思い出す、または若い頃以上の快楽を味わえるらしい。
宰相はロリィ様の下僕となり、彼女は大きな駒を手に入れた。
彼女の毒牙に掛かったのは宰相だけではない。
主に四、五十の地位と権力のある男性を虜にしてきた。
王宮内だけでもロリィ様と身体の関係のある男は十人を越える。
その男たちを使い、大衆紙を味方に付け彼女は民心の掌握に成功した。

殿下は初めてだろう。
閨教育も座学部分だけの筈だ。
本来は王族の花嫁は純潔であることが求められる。
それが…………一国の王子の花嫁が既に十人を越える経験人数があるなどと…………殿下はいったい何番目の相手になるんだ?………。

殿下もいずれロリィ様の奔放な振る舞いには気付くだろう。
最初は無垢で可愛らしい少女を演じていたが、今では隠す事も無くなっている。
それでも殿下の花嫁はロリィ様だ。
陛下もその事は知っているが最早どうにも出来ない。
ロリィ様の真実の姿をどんなに暴露しても、民衆には嘘として片付けられる。
そして尚も彼女を認めないと、王家への怒りを募らせるだけだ。
既にその為の駒は彼女が握っている。
彼女の相手をする男たちにとって彼女の貞操なんてどうでもいい。何股かけられていようと。
男としての機能を取り戻してくれ、聞いたことも無いような性技で男を骨抜きにする。

彼女が避妊しているのを祈るだけだ。
国民の間では清廉とされている彼女が自分のイメージを壊すようなそんなミスを犯すとは思えないが。


※ドナドナ
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