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私なりに頑張れること

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 私はテオの心を取り戻すために、出来る努力を始めることにした。
 だって、シャルには温かい家庭で育って欲しいから。
 私が良い妻になれば、テオドールだってきっと家庭を顧みてくれるはず……。

 子供の成長は早い。
 慌ただしく過ごすうちに、シャルは大きくなって少しずつ手が掛からなくなった。私はシャルをシッターに預け、テオの顧客の訪問にまわり、彼の仕事をサポートすることにした。

「メゾン・ラウルスの奥様じゃありませんか?どうされましたの?」

 一番の上客、ハルゼー伯爵夫人は私を笑顔で迎えてくれた。

「はい。いつもメゾン・ラウルスをご贔屓にしてくださってありがとうございます。主人の仕立てたドレスの評判はいかがでしたか?よろしければお話をお聞かせください」

「まあ、奥様がわざわざ?そうねぇ……」


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「ミリー、ありがとう。君は人当たりが良いからね。顧客の評判もとても良いよ」

「まあ!嬉しい。貴方のお仕事の助けになったのなら良かったわ」

 私がクレームの多い顧客の相手をすることになり、主人は上機嫌。

 私としては、顧客まわりをすることに目的もあった。メゾン・ラウルスは高級店。だから、上流階級のご婦人方との人脈作りができる。 

 もちろん上流階級のご婦人方を訪ねる時にすっぴんという訳には行かない。流行を取り入れ洗練された雰囲気を作ることが、顧客の信頼を集めた。

 そうやって美容に気を使い、身なりを整えるとテオドールは再び私に優しくなった。


*⋆꒰ঌ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈໒꒱⋆*
 

 テオドールの残業や出張はかなり減った。彼はほとんど毎日同じ時間に家に帰る、けれど、その代わり不倫相手のあからさまな挑発が目立つようになった。

 それでも、テオの心は私に戻ってきたのだと思う。取り戻したかった穏やかな日々。
 身体を重ねることだけはどうしても出来なくて、理由を作って断り続けた。

 
 忙しく過ごすうちに日々は過ぎ去り、シャルは来年、寄宿学校に入学することになった。

「ねぇ、この家を大きく建て替えてテオの両親の部屋も作りましょう?最近二人共足が悪くなってきて、そろそろ日常生活にも手伝いが必要になると思うの。きっとテオドールと一緒に暮らした方が心強いと思うわ」

「そうだな。うん!そうしよう。ミリー、君はなんて良い妻なんだ!」

 私はテオドールの両親との同居を提案した。
 年老いた義両親のために、手すりや大きなお風呂を作り全て義両親中心の間取りにした。

「年をとると、夜中に体調を崩す人が多いと聞くわ。私達の寝室はお義父様たちの部屋の隣にしましょう!」

 私達の新しい家は、義両親の介護を中心に考え抜いた構造。その事で私はテオドールや義両親、そして親戚からとても感謝された。

「私の部屋もお義父様とお義母様から見えやすい場所にしましたわ。いつでも、そこにあるベルで呼んでくださいね」

「やっとミリーさんも嫁としての自覚が出てきたのねぇ」
「ははっ、ミリーは俺の自慢の嫁だよ」

 私はテオドールの心を取り戻せたと思う。
 義両親だって私に優しくなった。

 だけど……。
 
 私の心は既にテオドールから離れていた。



*⋆꒰ঌ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈໒꒱⋆*




「あなた、クリスマスは仕事なの?新しい家での初めてのクリスマスですもの、久しぶりに家族でパーティーをしない?シャルも来年から寄宿学校に入るから、これがみんな揃う最後かもしれないわ」

「そうだな。両親も喜ぶだろうし、そうするか」

 テオは浮気相手と付き合い初めてから、クリスマスだけは必ず仕事で残業していた。
 
 きっと浮気相手と過ごしていたのだと思う。 
 今までは全て見逃してきた。

 けれど今年は渡さない。

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