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16.(ルビール視点)
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エドゥアール様がロザンナ王女殿下と踊っている間アーサー殿下に少し話でもしようと誘われた。
アーサー殿下のエスコートを受け、テーブル席に移動する。
「エドゥアールの婚約者がこんな綺麗な令嬢だとは……。ルビール嬢にそのドレスは良く似合っている。最近、スッキリしたラインのドレスが流行ってきたようだが、ルビール嬢は特に良く似合うな。」
「ありがとうございます。」
「どうだ?今日この後一緒に楽しもうではないか。」
テーブルに置いた私の手を握り、指の腹で擦るように触られた。
ぞくりと鳥肌が立ち、手を振り払いたい気持ちを必死で抑える。
「え、エドゥアール様がいるので……。」
「彼も他の令嬢と楽しい時間を過ごすさ。」
殿下から全身を舐めるように見られ、自分の中の警戒音が鳴り響く。
けれど、これ程の身分の高い相手の誘いをどう断れば良いか分からなかった。
そこへ、ロザンナ王女殿下とのダンスを終えたエドゥアール様が駆け付けてきた。
「アーサー殿下、ルビールを返してくださいね。」
エドゥアール様は息を切らせたまま不機嫌そうに殿下へ告げると私の腕を引いて助けてくれた。
「ま、待て、不敬だぞ!」
殿下は私の肩を掴んで引き止めてきた。
不敬という言葉にびくりと身を固くしていると、低く落ち着いた声が背後から聞こえてきた。
「アーサー、臣下と婚約者の仲を邪魔するな。臣下の忠誠心が薄れる。」
「へ、陛下。」
壇上にいた国王陛下がいつの間にか此方に向かって歩いて来ていた。
「バークレン侯爵の自慢の嫁を見ていたら、お前達があまりにみっともない振る舞いをしておるから心底呆れたぞ。」
陛下は殿下を厳しく叱責するとエドゥアール様の方に向き直った。
「すまんな。エドゥアール、イシュタル嬢。今宵のデビューを台無しにしてしまった。後は二人で楽しんでくれ。」
陛下は私に向かってとっても優しい笑顔を浮かべてくださった。そして、エドゥアール様に対しては少し揶揄うような表情を見せた。
「ロザンナも此度の婚約が気に入らんで八つ当たりしておるのだ。大目にみてやってくれ。」
ロザンナ王女殿下は隣国の第3王子と婚約したが、顔が気に入らないと文句を言っているらしい。来年には輿入れだそうだ。
慣れない王族の皆様と会話したことですっかり疲れてしまった私を、エドゥアール様は優しく気遣ってくれた。
「大丈夫?中庭に出て涼もうか?」
私はエドゥアール様にエスコートされ、王宮の中庭へと出てきた。
「大丈夫だった?」
「アーサー殿下に触られた時、怖くて…気持ち悪かったです。」
「ルビールは、その…男性に触られるのは気持ちが悪いのだろうか……。」
そんなことは無い。
あのアーサー殿下があまりにも気持ち悪かったのだ。
「いえ、エドゥアール様なら平気です。」
「では、俺がこうして触れても大丈夫?」
エドゥアール様の手が私の頬に触れる。
温かい手が心地よくて思わず目を閉じた。
「いえ、エドゥアール様に触られるのは気持ち良いです。私たち婚約者ですし、いずれ、…き、キスもすると伺っています……。」
恥ずかしくて、顔が熱い。上手く喋れなかった。
ふと、沈黙が落ちる。
見上げるとエドゥアール様が真剣な顔で私を見ていた。
「キスをしても良いだろうか?」
「っ!は、はい。」
彼の目は熱を帯びていて、私を真っ直ぐに射ぬいた。
「…目を瞑って…。」
ギュッと目を閉じ唇を固く引き結んだ。
く、来るっ!
エドゥアール様の息づかいを近くに感じる。
全身から汗が滲み出るように緊張して身体を固くした。
ーー数秒後ー
唇に柔らかな感触がしたと思うと、すっと離れていった。
目を開けると、エドゥアール様の綺麗なブルーの瞳が真っ直ぐ自分を見ていた。
「固くなってる。怖い?」
プルプルと首を振った。
エドゥアール様の手が頬を滑り耳朶を擽る。
「力を抜いて。」
至近距離で囁かれ、顔が茹で上がりそうに熱い。
「目を軽く閉じて。口元も力を抜いて。」
言われた通りに目を閉じると、今度はさっきよりもしっかりと唇が押し付けられ、角度を変えては何度も唇を食まれる。
柔らかく温かなその感触が気持ち良くてうっとりしてしまう。
「ぅん。んーーー、」
息が苦しくなってエドゥアール様の胸を押す。
「ルビール、鼻で息をして。」
彼が下唇を食んだまま囁いた。そう言われても……。
「んーー。」
唇が解放され、エドゥアール様に抱きしめられた。
「嫌だった?」
ふるふる首を振ると、彼の背中に手を回してギュッと抱きついた。
「あーー、幸せ……。」
頭上から彼の呟きが聞こえる。
『大好き』
自然にそう思えた。
「エドゥアール様。キス、嬉しかった。…もっとしてください。」
彼の胸に顔を埋めたまま、そう言うと身体を離して、彼を見上げた。
エドゥアール様は目を見開いて私を見ていたが、私はそのまま瞳をそっと閉じた。
★★★
唇が腫れるほどキスされた……。
女性からねだるなんて、はしたなかった……かな?
あんなに唇を舐められるなんて思わなかった……。
キスする前は口紅は塗らない方が良いのかしら?
マーガレット様に相談しよう。
アーサー殿下のエスコートを受け、テーブル席に移動する。
「エドゥアールの婚約者がこんな綺麗な令嬢だとは……。ルビール嬢にそのドレスは良く似合っている。最近、スッキリしたラインのドレスが流行ってきたようだが、ルビール嬢は特に良く似合うな。」
「ありがとうございます。」
「どうだ?今日この後一緒に楽しもうではないか。」
テーブルに置いた私の手を握り、指の腹で擦るように触られた。
ぞくりと鳥肌が立ち、手を振り払いたい気持ちを必死で抑える。
「え、エドゥアール様がいるので……。」
「彼も他の令嬢と楽しい時間を過ごすさ。」
殿下から全身を舐めるように見られ、自分の中の警戒音が鳴り響く。
けれど、これ程の身分の高い相手の誘いをどう断れば良いか分からなかった。
そこへ、ロザンナ王女殿下とのダンスを終えたエドゥアール様が駆け付けてきた。
「アーサー殿下、ルビールを返してくださいね。」
エドゥアール様は息を切らせたまま不機嫌そうに殿下へ告げると私の腕を引いて助けてくれた。
「ま、待て、不敬だぞ!」
殿下は私の肩を掴んで引き止めてきた。
不敬という言葉にびくりと身を固くしていると、低く落ち着いた声が背後から聞こえてきた。
「アーサー、臣下と婚約者の仲を邪魔するな。臣下の忠誠心が薄れる。」
「へ、陛下。」
壇上にいた国王陛下がいつの間にか此方に向かって歩いて来ていた。
「バークレン侯爵の自慢の嫁を見ていたら、お前達があまりにみっともない振る舞いをしておるから心底呆れたぞ。」
陛下は殿下を厳しく叱責するとエドゥアール様の方に向き直った。
「すまんな。エドゥアール、イシュタル嬢。今宵のデビューを台無しにしてしまった。後は二人で楽しんでくれ。」
陛下は私に向かってとっても優しい笑顔を浮かべてくださった。そして、エドゥアール様に対しては少し揶揄うような表情を見せた。
「ロザンナも此度の婚約が気に入らんで八つ当たりしておるのだ。大目にみてやってくれ。」
ロザンナ王女殿下は隣国の第3王子と婚約したが、顔が気に入らないと文句を言っているらしい。来年には輿入れだそうだ。
慣れない王族の皆様と会話したことですっかり疲れてしまった私を、エドゥアール様は優しく気遣ってくれた。
「大丈夫?中庭に出て涼もうか?」
私はエドゥアール様にエスコートされ、王宮の中庭へと出てきた。
「大丈夫だった?」
「アーサー殿下に触られた時、怖くて…気持ち悪かったです。」
「ルビールは、その…男性に触られるのは気持ちが悪いのだろうか……。」
そんなことは無い。
あのアーサー殿下があまりにも気持ち悪かったのだ。
「いえ、エドゥアール様なら平気です。」
「では、俺がこうして触れても大丈夫?」
エドゥアール様の手が私の頬に触れる。
温かい手が心地よくて思わず目を閉じた。
「いえ、エドゥアール様に触られるのは気持ち良いです。私たち婚約者ですし、いずれ、…き、キスもすると伺っています……。」
恥ずかしくて、顔が熱い。上手く喋れなかった。
ふと、沈黙が落ちる。
見上げるとエドゥアール様が真剣な顔で私を見ていた。
「キスをしても良いだろうか?」
「っ!は、はい。」
彼の目は熱を帯びていて、私を真っ直ぐに射ぬいた。
「…目を瞑って…。」
ギュッと目を閉じ唇を固く引き結んだ。
く、来るっ!
エドゥアール様の息づかいを近くに感じる。
全身から汗が滲み出るように緊張して身体を固くした。
ーー数秒後ー
唇に柔らかな感触がしたと思うと、すっと離れていった。
目を開けると、エドゥアール様の綺麗なブルーの瞳が真っ直ぐ自分を見ていた。
「固くなってる。怖い?」
プルプルと首を振った。
エドゥアール様の手が頬を滑り耳朶を擽る。
「力を抜いて。」
至近距離で囁かれ、顔が茹で上がりそうに熱い。
「目を軽く閉じて。口元も力を抜いて。」
言われた通りに目を閉じると、今度はさっきよりもしっかりと唇が押し付けられ、角度を変えては何度も唇を食まれる。
柔らかく温かなその感触が気持ち良くてうっとりしてしまう。
「ぅん。んーーー、」
息が苦しくなってエドゥアール様の胸を押す。
「ルビール、鼻で息をして。」
彼が下唇を食んだまま囁いた。そう言われても……。
「んーー。」
唇が解放され、エドゥアール様に抱きしめられた。
「嫌だった?」
ふるふる首を振ると、彼の背中に手を回してギュッと抱きついた。
「あーー、幸せ……。」
頭上から彼の呟きが聞こえる。
『大好き』
自然にそう思えた。
「エドゥアール様。キス、嬉しかった。…もっとしてください。」
彼の胸に顔を埋めたまま、そう言うと身体を離して、彼を見上げた。
エドゥアール様は目を見開いて私を見ていたが、私はそのまま瞳をそっと閉じた。
★★★
唇が腫れるほどキスされた……。
女性からねだるなんて、はしたなかった……かな?
あんなに唇を舐められるなんて思わなかった……。
キスする前は口紅は塗らない方が良いのかしら?
マーガレット様に相談しよう。
応援ありがとうございます!
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