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 カサンドラ視点



 私ってすごく幸運だと思うの。
 だって、女神のように綺麗なのよ?

 小さな頃から男の子たちは私に夢中。何でもお願いを聞いてくれる。
 私より可愛くない女の子たちは可哀想。だって男の子っていつも私ばかりを贔屓してくれるもの。
 これって……私が綺麗だからでしょ?

 小さな頃からお姫様みたいな生活に憧れていた私は、お父様に「王子様と結婚がしたいの」ってお願いしたわ。

 だって美しい少女って王子様に見初められるものでしょ?

 だけど、お父様に「ヒューバート殿下には既に婚約者がいるから諦めなさい」って言われた。

 夜会で見かけたヒューバート殿下の婚約者は地味な顔の少女。私の方が髪だって綺麗だし、スタイルだっていい。なのに、身分が高いから彼女が将来の王妃なんだって。

 だから、王宮で開かれるパーティーでヒューバート殿下に近づいたわ。同じ王子様でもレオンハルト殿下はなんだか近づき難い。それに比べてヒューバート殿下はニコニコしていて仲良くなれそうだったの。

「あぁっ……」

 私はヒューバート殿下が通り掛かるのを見計らって眩暈を起こしたふりをした。

「大丈夫か?」

「は、はい。申し訳ありません。少しフラついただけですの。お手を煩わせるほどでは……あっ」

 よろけたように見せかけて、ヒューバート殿下の腕にしなだれかかった。

 「まだ、ふらついているではないか。休憩室まで案内しよう」

「申し訳ありません」

 私と目が合うとヒューバート殿下はちょっと頬を赤くして、目を反らせた。
 きっと私が綺麗だから照れているのね。

 その日から私は殿下と親しくなった。殿下はもう私に夢中。そりゃそうよね。
 だって婚約者の公爵令嬢ってとっても地味だもの。

 そして私達は逢瀬を重ね恋人になった。
 殿下は私に気を許しているのか、よく弱音を吐くようになった。

「俺はレオンハルトほど、優秀では無い。だが王宮で働く者たちも、両親も、俺に優秀であることを求める。処理しなければならない書類が山積みだ。もうどこかに逃げたいよ」

「まあ、随分ご苦労なさっているのですね。執務は、側近に任せれば良いのでは?このままでは、ヒューバート殿下の身体が参ってしまいます」

 仕事なんて臣下に任せればいいと思うの。そのために臣下がいるんだし……。
 
 私がのんびり笑うとヒューバート殿下は「カサンドラと一緒にいると癒やされるよ」と言って甘えてくれる。
 これでヒューバート殿下は私のものだと思ったわ。


 だけど、私達の関係がバレて私とヒューバート殿下は国王陛下に別れさせられた。
 ヒューバート殿下の方が王族だし偉いのに、あの公爵令嬢に気を使わないといけないなんて変なの。

「即位するには俺の後ろ楯は弱い。公爵に支援して貰うため、イーリスとは結婚せねばならない……」

 殿下は悲しそうに私に別れ話をしたけれど、私は絶対に別れたくなかった。
 もう少しで、王妃になれると思ったのに……。

 その時、私は良いことを思い付いた。

「わたくし、実は妊娠出来ない身体で……どこにも嫁げませんの。殿下に捨てられたら一生一人きりですわ」

 そう言って涙を流すと、殿下は私を悲しげに見つめた。
 もうひと押しかしら?

「……うぅ……うぅ……わかりました。私は殿下の未来のために身を引きましょう。それでも、私が愛しているのはヒューバート殿下だけですわ」

 健気に身を引く女を演じたら、殿下は私を捨てないって抱き締めてくれたわ。

 しかも、私はお腹を痛めて子供を産まなくても、公爵令嬢の産んだ子供を自分の子供のように育てていいんだって。 

 あの女の子供を私が育てれば私は出産なんて痛い思いしなくて済むし、スタイルだって崩れない。子供は好きじゃないけど、殿下の子供だし将来の王様だから一人ぐらいなら育てられそう。

 同情をかうために咄嗟についた嘘だったけど、ラッキーだったわ。

 実は私は痛い思いをして子供を産むなんて嫌だった。しかも、子供を産んだ女性って、ちょっとスタイルも崩れてるから、あんな風になりたくなかったのよね。



  殿下はイーリス様と結婚し閨を共にすることになったけど、わたしに嫉妬なんて感情はない。
 ヒューバート殿下も「我慢して彼女を抱いたんだ」って笑ってた。  

 そうだと思う。
 だって私の完璧なスタイルと全然違うもの。

 女として私が負ける所が無いから、殿下がイーリス様を抱いても全然気にならない。むしろ、頑張ってーって感じ。

 ヒューバート殿下は金髪碧眼の美丈夫。子供も殿下に似るといいな。
 イーリス様に似ちゃうと、ちょっと地味だし可哀想。

 金髪碧眼でイケメンの息子が生まれたら、私が母親だって教えて可愛がってあげようっと!
  


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