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しおりを挟む私は19歳の大学生、五条琴葉。
類い稀なる方向音痴の私は免許をとったばかりのドライブで、山道に迷い込み崖から転落して命を落とした。
車のナビ通り進んでいたと思ったんだけどね?
何かが壊れていたのか、ナビでは街の中を走っている表示になっているのに、いつの間にか山奥に来ていた。舗装もされていない道に出てしまい、Uターンをしようにも出来なくて、バックを試みて転落したらしい。
死の瞬間のことは覚えていない。きっと混乱していたのだろう。
私には結婚の約束をしたちょっと強引な幼馴染がいた。その人の名前は紅月廉。廉は所謂執着系男子。
だから、ちょっと廉の事が心配だった。
私が突然居なくなって、病んじゃったりしてないかなって……。
☆
神様が用意してくれた魔王城での生活は快適だった。
とにかく魔物たちが可愛い!!
ゴブリンは、オーバーオールを着て赤と緑のチューリップハットを被っている。魔王城ではとってもポップでお洒落さん。
何故だか闘いに行くときは服を脱いで出ていく。服を着てると可愛すぎるからかしら?
スライムはいつもぴょんぴょん跳ねてる。言葉は通じないけど。
フェンリルはもふもふ癒しを与えてくれるし、ガーゴイルはとっても恥ずかしがり屋さん。羽に赤いリボンを結ぶのがお気に入りの乙女!
もちろん闘いに行くときにはリボンは外す。
戻ってきた時にリボンを結ぶのは、魔王である私のお仕事!
魔物たちの生活は予想とは違って楽しそう!
彼らは転移の泉に元気よく飛び込んで冒険者や勇者と闘って、負けたら同じく転移の泉から戻ってくる。そして、回復の泉に浸かって、また闘いに行くのだ。
小さい魔物にとって勇者との闘いはスポーツとか遊びと一緒。魔物が勇者との戦闘をこんなにエンジョイしてるなんて知らなかった。
すっかり魔王城が気に入った私はこの魔物たちとお別れするのが寂しくなっていた。
そして、魔王復活から一年後。
本当に魔王城に勇者がやって来た。
滅多に部屋から出ない人見知りのトロールも倒された。大きいのに!
やっぱり勇者って強い!!
とうとう魔王城での生活もおしまいらしい。でも、はじめから一年って約束だった。
剣で斬られるのって痛そう。
勇者には手加減するよう頼んでおくって神様もいってたし……大丈夫よね?
いやいや、あの神様ちょっと頼りなかったし、本当にちゃんと伝わってるか心配になってきたぞ……。
自分からも「手加減してください」ってお願いした方がいいのかしら?
それともバイトだし、ちゃんと魔王っぽく振る舞う?
「おっほっほっほ。勇者よ!よくここまで来れたわね。でもこれでおしまいよっ!!」
なんて高笑いして雷をズドンと落とせば魔王っぽいけど、実は魔王になってから一回も闘った事なんてない。
私はずっと魔物たちのお世話をしていただけ。
お爺ちゃん神様に言われた通り全世界に向かって世界征服宣言はしたけど、攻撃魔法すら覚えるつもりは無くて、魔王城でゴロゴロしてた。
戦う前から結果は分かっているんだし、いっそ催眠魔法で眠っているうちにやっつけてくれないかしら?
なんて思っていたら魔王の間に勇者が入ってきた。
キラキラ金髪碧眼で、ツンツン立った髪型はまさに勇者って感じ。
よーし、高笑いするぞ!なんて思っていたら勇者の第一声は思いがけない言葉で……。
「琴葉っ!!」
え?前世の私の名前……知ってるの?
「あなた……だれ?」
「俺、廉だ!琴葉会いたかったっ!!」
名乗るのが早いか否や、勇者は魔王の私に抱きついてきた!
「れ、廉??」
「琴葉。」
私は廉を引き剥がし、彼の肩を持って激しく揺さぶった。
「廉、もしかして後追い自殺?」
廉はゆっくり首を振った。前世は塩顔ボーイだったのに、今や金髪碧眼の超イケメン!
「俺、ちゃんと寿命を全うしたよ。」
「え?ウソ?」
「本当だよ。俺、琴葉を失くしてから50年ちゃんと生活していたよ。ずっと生涯独身を、貫いたよ。」
「えーー!じゃあ、どうしてここに?」
「狭間の世界じゃ、時間なんて関係無いらしい。神様とかいう爺ちゃんに琴葉に会いたいって頼んだら、勇者になれば会えるって言われたんだ。」
廉もあのインチキくさいお爺ちゃん神様に会ったのか……。
でもラッキーかも!
廉なら私が痛くないようにしてくれるもの。
「そうなの、私魔王をするように頼まれてて……。じゃあ、手加減してね、お願い。出来れば、催眠魔法かけてもらって、眠ってる間にササっと殺っちゃってください!」
「本当にいいの、眠ってる間にヤっちゃって……。僕としては起きている方がいいと思うんだけど……。」
彼は勇者だからやっぱり戦いたいのかもしれない。だけど、素人の私との戦闘なんて面白くないと思う。
「うん、いいよ。お願い。」
「夢……みたいだ。ずっと、何度も想像したんだ。」
勇者として努力してきたのかな?
廉の雰囲気が仄暗くて、空気がズンっと重くなった。
その時の私は勇者の剣に斬られるのが怖くって、廉の思い詰めた様子に気がつかなかった。
死ぬのは怖い。二回目だけど……。
廉はゆっくり私に近づいて手を翳した。
「廉、ありがとう。」
「うん。任せて……。」
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