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今日は皇妃からの招待を受けお茶会に参加する。
朝からココットのマッサージを受けてお肌はピカピカ艶々。髪型と化粧はレイルの力作だ。空色のドレスは銀の糸で刺繍が施されていて爽やかな印象。
「ここに来てからみるみるお綺麗になられるので、私とてもやり甲斐があって楽しいんです。」
化粧しながらレイルが言うと、全身鏡の前に連れていってくれる。
鏡を見ると本当に私だろうかと疑ってしまう出来映えだ。
部屋の入り口でユーリーが私を見て固まっている。口許を手で覆い目は見開いていて充血している。少し怖い。
「ユーリー、どう?」
彼はわざわざ出仕の時間を遅らせてお茶会まで送ってくれることになっている。
彼はほんの少し目尻を下げて
「…綺麗だ。」と褒めてくれた。耳から火が出そうな彼にこれ以上を求めるのは酷だろう。私はニッコリ微笑んだ。
「ありがとう。これでユーリーの隣を歩くのに恥をかかせないで済むかしら?」
「充分だ。」
ユーリーにエスコートされて馬車に乗り王宮に赴く。
王宮の敷地内に入り馬車を降りると、周囲の人が注目しているのを感じる。
ユーリーは周囲をさっと見渡すと
「靴擦れができると良くないから。」と私を横抱きにして顔を見られないように隠し、お茶会の会場まで運んでいってしまった。
お茶会の会場に到着すると
「お兄様!どういうおつもりですの?」ものすごい美女がユーリーに向かって詰め寄った。
横抱きにされたままでは気まずい。
私はユーリーに下ろされるとカーテシーをとり
「本日はお招きいただきありがとうございます。わたくし、サラルーリー・インヒィアと申します。以後お見知りおきを。」
大丈夫かしら?チラッと皇妃様の表情を伺う。
「何て美しいの?お兄様には勿体ないわ。」
お茶会に向かう馬車の中で、皇妃様はユーリーの妹だと聞かされた。
二つ年下で、誘拐され帰った後も心に傷を持ち、貴族社会に溶け込めないユーリーを見て、代わりに女公爵になるために勉強したそうだ。ユーリーは妹に頭が上がらないらしい。
アリセント皇帝陛下に妹が見初められた為、ユーリーは自分が公爵家を継げるように今まで頑張ってきたと話してくれた。
「堅苦しい挨拶はいいわ。リリィって読んで。お姉さまになるのだから。」
「リリィなんて。」恐縮してしまう。
「いいの。いいの。それよりも、」
リリィはユーリーに向き直る。
「今日王宮内を歩いてもらってサラ様の美しさを見せつけたかったのに…。お兄様、顔を隠して連れて来るなんて…。下手をすると、サラ様が我が儘で歩かなかったとの中傷を受けてしまうのですわ。」
ユーリーはシュンとして反省している。
「ユーリー、ありがとう。実は初めて来たので足が震えていたのよ。」
私のフォローに安心したのか表情が緩む。
「そうか。良かった。辛い事があったら王宮内に居るのでいつでも呼んでくれ。」
「お兄様、私が居るのよ。大丈夫。早くお仕事に行って。」
リリィに追い立てられるように出ていく彼は名残惜しそうで何だか可哀想になってしまった。
朝からココットのマッサージを受けてお肌はピカピカ艶々。髪型と化粧はレイルの力作だ。空色のドレスは銀の糸で刺繍が施されていて爽やかな印象。
「ここに来てからみるみるお綺麗になられるので、私とてもやり甲斐があって楽しいんです。」
化粧しながらレイルが言うと、全身鏡の前に連れていってくれる。
鏡を見ると本当に私だろうかと疑ってしまう出来映えだ。
部屋の入り口でユーリーが私を見て固まっている。口許を手で覆い目は見開いていて充血している。少し怖い。
「ユーリー、どう?」
彼はわざわざ出仕の時間を遅らせてお茶会まで送ってくれることになっている。
彼はほんの少し目尻を下げて
「…綺麗だ。」と褒めてくれた。耳から火が出そうな彼にこれ以上を求めるのは酷だろう。私はニッコリ微笑んだ。
「ありがとう。これでユーリーの隣を歩くのに恥をかかせないで済むかしら?」
「充分だ。」
ユーリーにエスコートされて馬車に乗り王宮に赴く。
王宮の敷地内に入り馬車を降りると、周囲の人が注目しているのを感じる。
ユーリーは周囲をさっと見渡すと
「靴擦れができると良くないから。」と私を横抱きにして顔を見られないように隠し、お茶会の会場まで運んでいってしまった。
お茶会の会場に到着すると
「お兄様!どういうおつもりですの?」ものすごい美女がユーリーに向かって詰め寄った。
横抱きにされたままでは気まずい。
私はユーリーに下ろされるとカーテシーをとり
「本日はお招きいただきありがとうございます。わたくし、サラルーリー・インヒィアと申します。以後お見知りおきを。」
大丈夫かしら?チラッと皇妃様の表情を伺う。
「何て美しいの?お兄様には勿体ないわ。」
お茶会に向かう馬車の中で、皇妃様はユーリーの妹だと聞かされた。
二つ年下で、誘拐され帰った後も心に傷を持ち、貴族社会に溶け込めないユーリーを見て、代わりに女公爵になるために勉強したそうだ。ユーリーは妹に頭が上がらないらしい。
アリセント皇帝陛下に妹が見初められた為、ユーリーは自分が公爵家を継げるように今まで頑張ってきたと話してくれた。
「堅苦しい挨拶はいいわ。リリィって読んで。お姉さまになるのだから。」
「リリィなんて。」恐縮してしまう。
「いいの。いいの。それよりも、」
リリィはユーリーに向き直る。
「今日王宮内を歩いてもらってサラ様の美しさを見せつけたかったのに…。お兄様、顔を隠して連れて来るなんて…。下手をすると、サラ様が我が儘で歩かなかったとの中傷を受けてしまうのですわ。」
ユーリーはシュンとして反省している。
「ユーリー、ありがとう。実は初めて来たので足が震えていたのよ。」
私のフォローに安心したのか表情が緩む。
「そうか。良かった。辛い事があったら王宮内に居るのでいつでも呼んでくれ。」
「お兄様、私が居るのよ。大丈夫。早くお仕事に行って。」
リリィに追い立てられるように出ていく彼は名残惜しそうで何だか可哀想になってしまった。
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