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蓮華視点
妖怪の城へと戻った途端に、宗玄さんが血相を変えて一夜さんの元へと駆けてきた。
「と、頭領ーー!!」
「どうした?」
「し、疾風が人間に捕まりましたっ!!」
宗玄さんは。はぁはぁと息を切らしていて顔色も悪い。
人間嫌いの疾風君を心配しているのだろう。
宗玄さんの後ろから妖怪たちがぞろぞろ出て来て、みんなそれぞれに右往左往している。
汐織さんなんて、首がジグザグにうねっている。それだけ取り乱しているのだろう。
「疾風が?どうしてだ?あんなに人が怖いのに人里へでも行ったのか?」
「し、疾風は蓮華様がまた人間に虐められないか心配して、頭領たちの後を追いかけて行ったようです。」
「疾風ちゃんが?」
あんなに人間を恐がっていたのに私を心配してくれたんだ………。
きっと怖い気持を我慢して、勇気をだして人里に行ったのだろう。
「一夜さん、助けに行かなきゃ!睦六さんを呼んでっ。お願いっ!」
「その必要は無い。颯田!」
一夜さんは颯田さんを呼び、その鏡で疾風君の居場所を確認した。疾風君が大の男たちに囲まれている。その場には警官と手錠を掛けられた継母も居る。
「急ぐぞ!」
一夜さんは片手で私を抱きかかえ、もう片方の手で空間をすうーっと切り開いた。
ぐにゃりと景色が歪む。
途端に響く疾風君の鳴き声。
「火炙りなんて止めてよー。わあああーーーーーんっ。」
火炙り?
この男たち、こんなに小さい疾風君を火炙りにするつもりなの?
怒りがこみ上げ、我を忘れてしまいそう。
「疾風君っ!!大丈夫っっ!?」
一夜さんの腕から飛び出し、疾風君の傍まで駆け寄ると小さな身体のあちこちに青痣が見えた。
「蓮華さまぁーーー!!」
細い腕に付いた痛々しい傷を見ると、継母に受けた暴行が鮮明に蘇る。
「蓮華さま、ぼ、僕、蓮華さまを追いかけて……。ごめんなさい。また、捕まったの……。ぼ、ぼく、わあーーーん。」
そんな私に、疾風君を囲んでいた男の一人が指を差して怒鳴った。
「お、お前は藪元家の……ちょ、長女か?お、お前が夜叉堂を開けたのか??人のクセに妖怪の味方をするのかっ!!」
「っ!」
私への……そして妖怪への数々の理不尽な仕打ちに心の奥の何かが焼き切れた。
身体が燃えるように熱い。
もう自分で制御なんて出来ない。
私の中で大きな力の塊が身体の中をぐるぐると駆け巡る。
「わああぁーーーーーーー!!」
大声で叫びながら、狂暴なその力が身体から流れ出るのを止められない。
室内のあらゆる物が宙を舞い、凄まじい速度で男たちにぶつかっていく。
私の力はコントロールなんて出来なくて、室内の全ての人を傷つける。
一夜さんが、疾風君と私の周りにだけ結界を張ってくれた。
人間がーーー
憎くて、憎くてーーー
妹のように愛されないことが淋しかった。
繰り返される鞭打ちは痛くて……。
凍えるような寒さの中、一人で冷たい水で洗濯をした。
近所の大人たちは誰もが見て見ぬふり。
友達を作ることも出来なかった。
見知らぬ男に身体を奪われて、死にたいほど惨めな気持ちになった。
傷付いた私を蔑む人たち。
私に味方なんて居なかった。
そんな私を一夜さんは……妖怪たちは……優しく受け止めてくれた。
心の奥底に閉じ込めてきた思いが黒い渦を作る。一旦溢れだした憎しみの炎は私の良心を焼き尽くす。
男衆や、警官、継母の身体中に傷が増えていく。
私に聞こえるのはゴーゴーと吹き荒れる空気の音。凶器となった部屋中のあらゆる物が皮膚を切り裂く。
悲鳴はやけに遠くに聞こえた。
私の中には怒りと憎しみの感情しか無い。
もう人という種族ではないからなのか……。
同情なんて感じない。
痛そうだなんて思わない。
ただ、傷つけばいい、そう思っていた。
軈て、その場にいる人間たちが全員床に倒れて動かなくなるのを見て、一夜さんが私の手を握ってくれた。
「蓮華、辛そうだ。大丈夫か?」
行き場の無い熱が身体に溜まって辛かった。
未だに身体の中を大きな力が暴れまわる。
「一夜さん……お願い。助けて……。」
母が亡くなってから人の世界で誰かに縋ったことなど無い。
けれど、一夜さんにだけは頼ることが出来た。
妖怪の城へと戻った途端に、宗玄さんが血相を変えて一夜さんの元へと駆けてきた。
「と、頭領ーー!!」
「どうした?」
「し、疾風が人間に捕まりましたっ!!」
宗玄さんは。はぁはぁと息を切らしていて顔色も悪い。
人間嫌いの疾風君を心配しているのだろう。
宗玄さんの後ろから妖怪たちがぞろぞろ出て来て、みんなそれぞれに右往左往している。
汐織さんなんて、首がジグザグにうねっている。それだけ取り乱しているのだろう。
「疾風が?どうしてだ?あんなに人が怖いのに人里へでも行ったのか?」
「し、疾風は蓮華様がまた人間に虐められないか心配して、頭領たちの後を追いかけて行ったようです。」
「疾風ちゃんが?」
あんなに人間を恐がっていたのに私を心配してくれたんだ………。
きっと怖い気持を我慢して、勇気をだして人里に行ったのだろう。
「一夜さん、助けに行かなきゃ!睦六さんを呼んでっ。お願いっ!」
「その必要は無い。颯田!」
一夜さんは颯田さんを呼び、その鏡で疾風君の居場所を確認した。疾風君が大の男たちに囲まれている。その場には警官と手錠を掛けられた継母も居る。
「急ぐぞ!」
一夜さんは片手で私を抱きかかえ、もう片方の手で空間をすうーっと切り開いた。
ぐにゃりと景色が歪む。
途端に響く疾風君の鳴き声。
「火炙りなんて止めてよー。わあああーーーーーんっ。」
火炙り?
この男たち、こんなに小さい疾風君を火炙りにするつもりなの?
怒りがこみ上げ、我を忘れてしまいそう。
「疾風君っ!!大丈夫っっ!?」
一夜さんの腕から飛び出し、疾風君の傍まで駆け寄ると小さな身体のあちこちに青痣が見えた。
「蓮華さまぁーーー!!」
細い腕に付いた痛々しい傷を見ると、継母に受けた暴行が鮮明に蘇る。
「蓮華さま、ぼ、僕、蓮華さまを追いかけて……。ごめんなさい。また、捕まったの……。ぼ、ぼく、わあーーーん。」
そんな私に、疾風君を囲んでいた男の一人が指を差して怒鳴った。
「お、お前は藪元家の……ちょ、長女か?お、お前が夜叉堂を開けたのか??人のクセに妖怪の味方をするのかっ!!」
「っ!」
私への……そして妖怪への数々の理不尽な仕打ちに心の奥の何かが焼き切れた。
身体が燃えるように熱い。
もう自分で制御なんて出来ない。
私の中で大きな力の塊が身体の中をぐるぐると駆け巡る。
「わああぁーーーーーーー!!」
大声で叫びながら、狂暴なその力が身体から流れ出るのを止められない。
室内のあらゆる物が宙を舞い、凄まじい速度で男たちにぶつかっていく。
私の力はコントロールなんて出来なくて、室内の全ての人を傷つける。
一夜さんが、疾風君と私の周りにだけ結界を張ってくれた。
人間がーーー
憎くて、憎くてーーー
妹のように愛されないことが淋しかった。
繰り返される鞭打ちは痛くて……。
凍えるような寒さの中、一人で冷たい水で洗濯をした。
近所の大人たちは誰もが見て見ぬふり。
友達を作ることも出来なかった。
見知らぬ男に身体を奪われて、死にたいほど惨めな気持ちになった。
傷付いた私を蔑む人たち。
私に味方なんて居なかった。
そんな私を一夜さんは……妖怪たちは……優しく受け止めてくれた。
心の奥底に閉じ込めてきた思いが黒い渦を作る。一旦溢れだした憎しみの炎は私の良心を焼き尽くす。
男衆や、警官、継母の身体中に傷が増えていく。
私に聞こえるのはゴーゴーと吹き荒れる空気の音。凶器となった部屋中のあらゆる物が皮膚を切り裂く。
悲鳴はやけに遠くに聞こえた。
私の中には怒りと憎しみの感情しか無い。
もう人という種族ではないからなのか……。
同情なんて感じない。
痛そうだなんて思わない。
ただ、傷つけばいい、そう思っていた。
軈て、その場にいる人間たちが全員床に倒れて動かなくなるのを見て、一夜さんが私の手を握ってくれた。
「蓮華、辛そうだ。大丈夫か?」
行き場の無い熱が身体に溜まって辛かった。
未だに身体の中を大きな力が暴れまわる。
「一夜さん……お願い。助けて……。」
母が亡くなってから人の世界で誰かに縋ったことなど無い。
けれど、一夜さんにだけは頼ることが出来た。
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