失意の中、血塗れ国王に嫁ぎました!

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2.突然の縁談

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 ローレンスの葬儀から一週間。
 私の心はローレンスと一緒に死んでしまったのかもしれない。そう思うほど、何を見ても、何を食べても感情が動かない。
 不思議と泣くことも無かった。
 私は表面上は穏やかに、今までと変わらずに過ごしていた。

 侯爵夫人としてローレンスを支えることが私の夢になっていた。彼は志の高い人だったから相応しくあろうと努力してきた。

 ローレンスという大きな存在だけでなく、将来の目標を同時に失った私は、生きる目的も分からなくてただ無為な時間を過ごす日々。

 朝起きて着替えて食事を食べる。毎日当たり前にこなしてきた日課すら、その意味を見出だせない。

 彼のいない世界に生きていて何になるのだろうーー

 ただ時間が過ぎていくのを感じながら、自分の時間だけが止まってしまったみたい。何かしなければと焦るのに、何も出来なくて……。そんな事をぐるぐる、堂々巡りのように考えていた。







「え?王城に?」
「ああ、カトリーナの名前もある。一緒に行ってくれ。」

  そんな日々の中、私と両親が王城に呼び出された。

 それは本当に突然の知らせでーー。

 私にリュゼット王国から縁談が届いたと言う知らせだった。相手はリュゼット王国の若き国王イグネイシャス。

 何の交流も無いのに……、どうしてそんな縁談が来たのか分からなかった。ただ、相手は私を指名してきた、と……。

「カトリーナ、案ずるな。何とか断れるようにするから……。」

 父は強い決意を秘めた目でそう言ってくれたけど……。

 婚約者を亡くしたばかりの娘を気遣ってくれたのだと思う。けれど、相手は友好国の王族。断れる可能性が低いことは分かっていた。

「カトリーナ……すまない……。」

 リュゼット国王の強い要望で、縁談は断ることは出来なかった。
 それは私自身も予想していたことで、駄々をこねたりせずに貴族令嬢らしく嫁ごうと決めていた。

 もう大好きだった人はこの世にはいない。政略結婚で他の誰に嫁ぐことになっても私にとっては同じだった。だからーー

「お父様、仕方がありません。両国の友好の証となれるよう、務めて参りますわ。」

「カトリーナ……。」

 いつも貴族らしく鷹揚とした父親が、私に涙を見せた。

 リュゼット王国の国王は『血塗れ国王』と呼ばれるほど残虐な人物。

 彼は前国王の側室の子。王位継承権争いでは、三番目だったそうだ。彼は王位を巡る熾烈な争いの後、即位した。

 王位継承争いをしていた長男と次男が命を落とし、彼が王位を継ぐことになったそうだ。そんな彼は即位後も安泰では無く、何度も命を狙われ自ら返り討ちにしてきた。

 私の前に娶った二人の妃を自ら殺しているという噂もある。寝室から出てきた国王が妃の返り血を浴びたその姿を見て侍女たちは卒倒したという。

 『血塗れ国王』と呼ばれる所以。 
 
 貴族として生まれた私は、いずれどこかに嫁がなければならない。
 もし、命を落とすことがあっても構わないと思った。

「イグネイシャス王になってからの治世でリュゼット王国の国民は暮らしやすくなったそうです。案外と、優しい人かも知れませんわ。」

 残虐であるとの噂される人物だが、その政治手腕は確かで……。近隣国との友好を深め、国を豊かにし、国民からの人気は高い。

「カトリーナ……。すまない。」

 父はもう一度私に頭を下げた。

 婚姻はリュゼット王国の意向で急いで準備され、1ヶ月後、私は生まれ育った家に別れを告げ血塗れ国王の元へと嫁ぐことになった。



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