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9.病弱な?王太子妃
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15年後
「おかーさまぁ、てーえんであそびたいですーっ。」
「なーくんもいくぅーっ!」
あれから、私は五人の子供を授かった。
今私の腕にしがみついているのは、三女のニーナと次男のナイル。
庭園で一緒に遊びたいと駄々をこねている。
「お行儀の先生とのお勉強終わってからね?」
「はい。」「あいっ!」
二人共流石に王族だけあって、幼い頃から毎日家庭教師がべったりと張り付いている。
我が子ながら不憫。
私には耐えられない。だから、子供たちから『遊びたい』ってお願いされたら全力で一緒に遊ぶっ。
私は長男を出産後、王太子妃となったらしい。のんびり監禁生活を送っていたらいつの間にか決まっていた。
後継ぎを産んだから、と殿下に押しきられた。
心底嫌だったけど……。
今でも王太子妃の座から逃げたいけど……。
子供が安全なように身分確保のためと言われれば仕方がない。
けれど、ほとんど公の場には出ていない。産後の肥立ちが悪く病弱でほとんどベッドで過ごしている妃という設定らしい。
年に一度、王宮のバルコニーから民衆に向かって手を振る。健在だとアピールするためだ。
それだけが私の仕事。
病弱な王太子妃が五人も子供を産むなんておかしいけど……。
相変わらず私は殿下の付き添いがないと塔を出られない。
ゲームの強制力なのか、監禁生活は終わらないみたい。
けれど、子供が出来てからは殿下も子供のために頻繁に庭園に連れていってくれるようになった。
「ナイルの御披露目、もうすぐね。」
次男のナイルが五歳になると、国民への御披露目の儀がある。その時にも王宮のバルコニーから民衆へ手を振らなきゃいけない。
「ええ。シェイラ様、お願いしますね。」
次男の乳母であるメイジーはナイルを見て目を細めた。
メイジーはとっても優しくて、我が子のようにナイルを可愛がってくれている。
「ブリアンナに代わりをお願い出来ないかしら。」
「え?」
「だって、ドレス着るのって大変だし、ずっと立ってるのも疲れるの。何より中途半端な高さをキープして小さく手を振るなんて苦行はもう耐えられそうに無いわ。」
長女のブリアンナは私にそっくり。遠目なら分からないと思う。ブリアンナは行儀作法も完璧で、最近では殿下と一緒に外国の大使を招いての食事会にも同席している。
「駄目ですよ。シェイラ様。これだけは頑張ってくださいませ。」
「……そう?……だめ……かしら?」
殿下になんとかして、サボれないか聞いてみよう。
そう考えていたら、いつの間にか背後で殿下が話を聞いていた。
「シェイラ、御披露目が面倒なのかい?じゃあ、もう一人妊娠して悪阻が酷い事にしよう。」
「え……え??えーーーーっっ??」
私は瞬く間に殿下に抱えられて寝室へと連れていかれた。
☆☆☆
散々殿下に喘がされた後、私はベッドで微睡みながら、色々な事を考えていた。疲れて、眠くて思考が纏まらない。けれど、王太子妃は私には重荷だった。
「殿下……。」
「ん?リックだろ?」
「リック、……私王太子妃はもう嫌だわ。」
殿下はベッドに肘を付いて上半身を起こすと、さらりと私の髪を耳に掛けた。私の顔を見る表情は、不安そう。
「年に一度か二度、民衆の前に出るのが嫌なの?」
「それもあるけど……私ね、王太子妃の役割ってとっても大切だと思うの。」
私は以前から考えていたことを殿下に話した。
「まあ、そうだね。」
「こんなに特技もやる気も何も無い私がするべきじゃないわ。国のためにもっとやる気があって有能な女性が王太子妃をすればいいと思うの。リックを好きな気持ちだけで、この立場になっちゃいけないと思うの。」
「えっ??」
リックはがばりと起き上がり、目を見開いて私に詰め寄った。
「シェイラ……も、もう一度言ってっ。」
「な、何?王太子妃は私なんかがするべきじゃ……。」
「そこじゃない。俺の事、好きって……。」
「え?」
「……言った……。」
「ええ。」
「……セックス中以外ではじめて言ってくれた……。」
ぎゅっと抱きしめられて苦しくなる。
な、何?何なの?
心臓は早鐘を打つし顔が熱くて、殿下の胸の中で身動ぎせずに時が過ぎるのをじっと待っていた。
「……い、言ったこと無かったでしたっけ?」
「ないよっ。」
殿下の胸の鼓動が聞こえる。結婚して長くなるのに、あらためて言うと恥ずかしくなる。
「シェイラ、ずっと言って欲しかった。俺の事好きって言って……。」
顔を上げれば、殿下の真摯な視線にぶつかる。黄金の瞳は縋るような必死な色で揺れている。
いつもの余裕たっぷりの意地悪な笑顔じゃないから、胸が熱くて……どうしていいか分からない。
「す、好きだよ……ずっと……。」
殿下はさらに腕の力を強めて、ほぉーっと大きく息を吐いた。恥ずかしくて、隠れたくて、この場から今すぐ消えたい。
結婚してこんなに長く経っていて、何度も身体を重ねたのに……こうやって真っ直ぐに気持ちを伝えるのは照れくさい。行為中にしか「好き」って言ってなかったなんて……。
殿下の不安になんて気が付かなかった。ずっとそんな事を気にしていたなんて申し訳無く思う。でも逆の立場だったらやっぱり気になるかも……。
「今日は両思いになった記念だね。」
そして、私はそのまま殿下に押し倒され六人目を授かった。
☆
あれ?
王太子妃辞める話は?
ーー完ーー
「おかーさまぁ、てーえんであそびたいですーっ。」
「なーくんもいくぅーっ!」
あれから、私は五人の子供を授かった。
今私の腕にしがみついているのは、三女のニーナと次男のナイル。
庭園で一緒に遊びたいと駄々をこねている。
「お行儀の先生とのお勉強終わってからね?」
「はい。」「あいっ!」
二人共流石に王族だけあって、幼い頃から毎日家庭教師がべったりと張り付いている。
我が子ながら不憫。
私には耐えられない。だから、子供たちから『遊びたい』ってお願いされたら全力で一緒に遊ぶっ。
私は長男を出産後、王太子妃となったらしい。のんびり監禁生活を送っていたらいつの間にか決まっていた。
後継ぎを産んだから、と殿下に押しきられた。
心底嫌だったけど……。
今でも王太子妃の座から逃げたいけど……。
子供が安全なように身分確保のためと言われれば仕方がない。
けれど、ほとんど公の場には出ていない。産後の肥立ちが悪く病弱でほとんどベッドで過ごしている妃という設定らしい。
年に一度、王宮のバルコニーから民衆に向かって手を振る。健在だとアピールするためだ。
それだけが私の仕事。
病弱な王太子妃が五人も子供を産むなんておかしいけど……。
相変わらず私は殿下の付き添いがないと塔を出られない。
ゲームの強制力なのか、監禁生活は終わらないみたい。
けれど、子供が出来てからは殿下も子供のために頻繁に庭園に連れていってくれるようになった。
「ナイルの御披露目、もうすぐね。」
次男のナイルが五歳になると、国民への御披露目の儀がある。その時にも王宮のバルコニーから民衆へ手を振らなきゃいけない。
「ええ。シェイラ様、お願いしますね。」
次男の乳母であるメイジーはナイルを見て目を細めた。
メイジーはとっても優しくて、我が子のようにナイルを可愛がってくれている。
「ブリアンナに代わりをお願い出来ないかしら。」
「え?」
「だって、ドレス着るのって大変だし、ずっと立ってるのも疲れるの。何より中途半端な高さをキープして小さく手を振るなんて苦行はもう耐えられそうに無いわ。」
長女のブリアンナは私にそっくり。遠目なら分からないと思う。ブリアンナは行儀作法も完璧で、最近では殿下と一緒に外国の大使を招いての食事会にも同席している。
「駄目ですよ。シェイラ様。これだけは頑張ってくださいませ。」
「……そう?……だめ……かしら?」
殿下になんとかして、サボれないか聞いてみよう。
そう考えていたら、いつの間にか背後で殿下が話を聞いていた。
「シェイラ、御披露目が面倒なのかい?じゃあ、もう一人妊娠して悪阻が酷い事にしよう。」
「え……え??えーーーーっっ??」
私は瞬く間に殿下に抱えられて寝室へと連れていかれた。
☆☆☆
散々殿下に喘がされた後、私はベッドで微睡みながら、色々な事を考えていた。疲れて、眠くて思考が纏まらない。けれど、王太子妃は私には重荷だった。
「殿下……。」
「ん?リックだろ?」
「リック、……私王太子妃はもう嫌だわ。」
殿下はベッドに肘を付いて上半身を起こすと、さらりと私の髪を耳に掛けた。私の顔を見る表情は、不安そう。
「年に一度か二度、民衆の前に出るのが嫌なの?」
「それもあるけど……私ね、王太子妃の役割ってとっても大切だと思うの。」
私は以前から考えていたことを殿下に話した。
「まあ、そうだね。」
「こんなに特技もやる気も何も無い私がするべきじゃないわ。国のためにもっとやる気があって有能な女性が王太子妃をすればいいと思うの。リックを好きな気持ちだけで、この立場になっちゃいけないと思うの。」
「えっ??」
リックはがばりと起き上がり、目を見開いて私に詰め寄った。
「シェイラ……も、もう一度言ってっ。」
「な、何?王太子妃は私なんかがするべきじゃ……。」
「そこじゃない。俺の事、好きって……。」
「え?」
「……言った……。」
「ええ。」
「……セックス中以外ではじめて言ってくれた……。」
ぎゅっと抱きしめられて苦しくなる。
な、何?何なの?
心臓は早鐘を打つし顔が熱くて、殿下の胸の中で身動ぎせずに時が過ぎるのをじっと待っていた。
「……い、言ったこと無かったでしたっけ?」
「ないよっ。」
殿下の胸の鼓動が聞こえる。結婚して長くなるのに、あらためて言うと恥ずかしくなる。
「シェイラ、ずっと言って欲しかった。俺の事好きって言って……。」
顔を上げれば、殿下の真摯な視線にぶつかる。黄金の瞳は縋るような必死な色で揺れている。
いつもの余裕たっぷりの意地悪な笑顔じゃないから、胸が熱くて……どうしていいか分からない。
「す、好きだよ……ずっと……。」
殿下はさらに腕の力を強めて、ほぉーっと大きく息を吐いた。恥ずかしくて、隠れたくて、この場から今すぐ消えたい。
結婚してこんなに長く経っていて、何度も身体を重ねたのに……こうやって真っ直ぐに気持ちを伝えるのは照れくさい。行為中にしか「好き」って言ってなかったなんて……。
殿下の不安になんて気が付かなかった。ずっとそんな事を気にしていたなんて申し訳無く思う。でも逆の立場だったらやっぱり気になるかも……。
「今日は両思いになった記念だね。」
そして、私はそのまま殿下に押し倒され六人目を授かった。
☆
あれ?
王太子妃辞める話は?
ーー完ーー
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