努力するのが嫌なので監禁エンドを選びましたが、そろそろ外の空気が吸いたいです【R18】

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番外編③

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殿下視点


 シェイラを正妃としてから五年。
 彼女は現在2人目を妊娠中だ。

「殿下、そろそろ出産も近いですし、少し廷内を歩きたいです。」

 ジェフリーのお産の時、普段ほとんど歩かないシェイラは体力が無くて、出産するまでが大変だった。宮廷医や産婆からも、彼女の運動不足に気を付けるように指導を受けていた。

「そうだな……。一緒に庭園や宮廷内を歩こう。」

 俺は快諾して、シェイラとのんびり散歩することにした。





 シェイラはマタニティ用のゆったりとしたワンピースを着ていて少しお腹が重そうだ。転んでしまわないように、手を繋いで廷内を歩いた。
 妊娠中の食事の好みの変化や、新生児の下着の素材について相談しながら歩く。  
 彼女は気分が良いのか饒舌だった。

 こうやって過ごしているとごく普通の夫婦のようだ。彼女は面倒くさがりだが、育児には積極的で良い母親でいてくれる。





「セドリク殿下ぁーっ!」

 二人でのんびりと会話を楽しんでいると、背後から甘ったるい不快な声が聞こえてきた。

 この声は……。

 ブリッコリン伯爵令嬢はシェイラと反対側に回り、腕を絡めてきた。

 何だっ!こいつはっ?
 馴れ馴れしい態度が気色悪くて腕を振りほどこうした……が、

 ……いや

 待てよ。

 シェイラはやきもちを妬いてくれるのか?
 そんな疑問が脳裏を過った。
 俺なら、シェイラに無断で触れた男は闇に葬る。
 けれど、彼女は?
 俺と同じような嫉妬心を感じるのか?

 俺は、ブリッコリン伯爵令嬢の不敬な行為を咎めずに見逃してみた。

 「殿下ぁ~、わたくし王妃様のお茶会に招かれて来たんですのぉ。殿下も一緒にいかがですかぁ?」

 母上は無類の話好きで、良い話相手を見つけてはお茶会に呼んでいる。
 勿論、シェイラは絶対に参加させないが……。

「いや、俺は遠慮しておこう。」

 濃い化粧、臭い香水の匂いが鼻につく。令嬢は俺を上目遣いで見上げ、肘に胸を当ててくる。早くこの腕を振り払いたい。

「えーっ、わたくし、寂しいですぅ~。殿下もたまには息抜きした方が良いですよぉ。お妃さまが妊娠中では退屈でしょう?」

 王太子妃であるシェイラを挑発するような言葉。シェイラの顔をチラリと見ると、彼女は平然としていた。

「しかし、茶会など女の集まりに行っても……。」

「違いますよ、殿下。」

 俺がブリッコリン伯爵令嬢の誘いを断ろうとしたら、それまで黙っていたシェイラが口を挟んできた。

「何が違うんだ?」

「この令嬢は、お茶会に誘っているのでは無く、夜伽に呼んで欲しいと誘いをかけているのです。」

 シェイラはゆっくりと、令嬢の前に立って向き合った。その表情からは怒りは特に感じない。むしろ、笑顔だ。

「ねぇ、貴女。そうでしょ?妊娠中、わたくしが、夜のお相手を出来ないことを知っていて、自分なら夜伽が出来ると言っているのよねぇ?」

「……わ、私は……その……。」

 勿論、令嬢が俺を誘惑していることには気が付いていた。最近は俺がサディストだという噂もあまり聞かなくなった。若い令嬢はそんな噂は知らないだろう。

「その豊満な胸を殿下の肘に押し付けて、感触をアピールしているのよねぇ。」

 シェイラは俺を見てニッコリと微笑んだ。
           
「殿下、お誘いを受けてますよ?どうされます?」

「ほら、貴女も、『閨のお相手に私を選んでください。』ってお願いしたら?」

 シェイラは笑顔だが、令嬢は真っ青な表情で固まっている。

 シェイラが怖い……。
 けれど、これはやきもちか?
 念願のやきもちなのか?

 俺は嬉しくてシェイラをぎゅっと抱き締めた。

「嬉しいよ。シェイラがはじめてやきもちを妬いてくれたっ!!こんなに嬉しいことは無い。今日は二人の記念日にしようっ!シェイラのやきもち記念日だっ!!」

 興奮した俺は、ブリッコリン伯爵令嬢が見ている目の前で、シェイラに熱いキスを落とした。

 シェイラは目を白黒させて躊躇っていたが、俺ががっちり後頭部に手を回し逃げられないようにしてしまうと、少しずつ舌を絡め応えてくれる。

「んっ……はぁ……ぅぐっ……リック……苦し……い。」

 彼女の唇を味わうと、止まることなんて出来ない。
 
「はぁ、シェイラ……可愛い……好きだよ……。」

  愛を囁きながら繰り返し唇を重ねる。
  二人の熱い息遣いとぴちゃぴちゃと湿った音が、辺りに響いた。

「……んっ……はぁ……。」

  興奮してますます深くなる口づけを止めるように彼女が俺の胸を強く押した。

「リ、リック、ここぉー、人前ぇーっ。」

「関係ないよ。」

 俺は再び彼女を強く抱きしめた。
 今すぐ押し倒したいのに、そう出来ないことがもどかしい。けれど、俺の子供がお腹で育っているのだ。
 我慢、我慢……。

 気が付くとブリッコリン伯爵令嬢の姿は見えなくなっていた。

 彼女のことなんてどうでもいい。
 俺はシェイラが愛しくてたまらない。

「これからは、毎年この日をやきもち記念日として祝おう。」

「嫌よ。記念日なんて面倒くさい。」

 俺の胸の中で、苦しそうにシェイラが答えた。




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