2 / 19
2.目覚めると腕の中
しおりを挟む
何だか温かい物に包まれているみたい……。
目蓋を開けると、目の前に整った顔がっ!!
私、昨日……?
記憶は曖昧。肝心な部分を覚えていない。
「ギャビン……室長……?」
「ん?ああ、おはよう。」
「おはようございます。……あの、私……昨日……?」
致してしまったの?
覚えているのは、宿の部屋に室長を招いたこと。
それから………あれ? どうしたっけ?
仕事に明け暮れた私は未だに処女。
致したのなら、少しは違和感とか痛みとかあるよね?
服も昨日のままだし……。
まさか室長が上手すぎて痛くない……とか?
「安心してくれ。心配するような事は何もしていない。それより、昨夜はここ数年ないぐらい良く眠れた。君を採用したい。今日から屋敷へ来てくれないか?」
「えっ?何も無い?え?採用?な、何の仕事ですか?」
採用?
本当に仕事なの?
一晩のお相手じゃ無くて?
「情婦とは違うな。情を交わさないのだから、添い寝婦といったところか?」
「情は交わさない……そこは心配しなくていいんですか?」
「ああ、そういう欲求がある時は、そういう場所に行く。心配しなくていい。」
おっと、男性としての機能はあるんだ……。
一瞬、疑っちゃったよ。
添い寝してくれれば誰でもいいのかしら?
「あ、あの……。どうして……私なんですか?」
「俺が孤児院育ちだというのは?」
「はい。知っていますが……。」
ギャビン室長は「恥ずかしい昔話だが……」と言いながらポツリポツリと自分のことを話してくれた。
「俺は昔から不眠症でな。両親の事故を目の前で見たのが原因だと思う。いつも教会の礼拝堂の壁画のそばで眠っていたんだ。不思議と心が落ち着く絵でなぁ。その壁画の人物にお前は似てるんだ。そばに居てくれたら眠れるかと思ってダメ元で試してみたが思った以上に良く眠れた。助かったよ。」
稀代の魔術師と詠われた先代の魔術師室長ノア様は生涯独身だった。
自らの後継者を探すため国中を回って孤児院にいたギャビン室長を見つけてきたらしい。
これは王宮中で有名な話。
ギャビン室長は引き取られてからずっと不眠症で悩んできたのだろうか?
どちらにしろ、添い寝なんて楽な仕事みたい。
一緒に寝れば良いだけだもんね。
「分かりました。」
了承の返事をしたのに、ギャビン室長は眉間に皺を寄せた。
何故にそんな不満そうな顔を?
「俺が言うのもなんだが、君は簡単に人を信用しすぎるんじゃないか?」
「大丈夫ですよ。こう見えて人を見る目はあります。ギャビン室長は悪い人じゃありません。」
ね?
だってこうやって無事なことが、何よりの証拠っ!
「おま……もし寝ている間に手籠めにされていたらどうするつもりだったんだっ。」
「大丈夫ですよぅ。そのつもりでしたもん。室長みたいな人が相手なら文句ないですっ!」
容姿端麗で仕事も出来る。
初体験の相手としては不足なしっ!!
「き、君はっ!?」
ギャビン室長は怒っているのか呆れているのか分からないが、珍しく取り乱した様子で声を荒げた。
「貴族令嬢だろう?結婚前に異性と関係を持つなど………。」
「やだ室長。王宮で働いている人たちはみんなそれなりに恋人と楽しんでいますよ。」
「結婚前の女性がか?結婚した後に純潔じゃないと知れたらどうなることか……。」
「そんなの、今どきごまかす方法はいくらでもあるんです。特に23過ぎてる人はほとんど純潔じゃありません。」
「え?じゃあ君もか?」
うっ。。
痛いところを……。
「……私は………まだですが………。ああ、でも勘違いしないでくださいね。モテなかった訳じゃ無いですよ。ラブレターも何回も貰いましたし……。タイミングです、タイミングの問題ですよっ!」
ギャビン室長は複雑な表情を浮かべながらも、話題を変えることにしたようだ。
「兎に角、君に添い寝を頼みたいが、襲うことはしない。そこについては約束しよう。」
こうして、私はギャビン室長に添い寝婦として雇われることになった。
目蓋を開けると、目の前に整った顔がっ!!
私、昨日……?
記憶は曖昧。肝心な部分を覚えていない。
「ギャビン……室長……?」
「ん?ああ、おはよう。」
「おはようございます。……あの、私……昨日……?」
致してしまったの?
覚えているのは、宿の部屋に室長を招いたこと。
それから………あれ? どうしたっけ?
仕事に明け暮れた私は未だに処女。
致したのなら、少しは違和感とか痛みとかあるよね?
服も昨日のままだし……。
まさか室長が上手すぎて痛くない……とか?
「安心してくれ。心配するような事は何もしていない。それより、昨夜はここ数年ないぐらい良く眠れた。君を採用したい。今日から屋敷へ来てくれないか?」
「えっ?何も無い?え?採用?な、何の仕事ですか?」
採用?
本当に仕事なの?
一晩のお相手じゃ無くて?
「情婦とは違うな。情を交わさないのだから、添い寝婦といったところか?」
「情は交わさない……そこは心配しなくていいんですか?」
「ああ、そういう欲求がある時は、そういう場所に行く。心配しなくていい。」
おっと、男性としての機能はあるんだ……。
一瞬、疑っちゃったよ。
添い寝してくれれば誰でもいいのかしら?
「あ、あの……。どうして……私なんですか?」
「俺が孤児院育ちだというのは?」
「はい。知っていますが……。」
ギャビン室長は「恥ずかしい昔話だが……」と言いながらポツリポツリと自分のことを話してくれた。
「俺は昔から不眠症でな。両親の事故を目の前で見たのが原因だと思う。いつも教会の礼拝堂の壁画のそばで眠っていたんだ。不思議と心が落ち着く絵でなぁ。その壁画の人物にお前は似てるんだ。そばに居てくれたら眠れるかと思ってダメ元で試してみたが思った以上に良く眠れた。助かったよ。」
稀代の魔術師と詠われた先代の魔術師室長ノア様は生涯独身だった。
自らの後継者を探すため国中を回って孤児院にいたギャビン室長を見つけてきたらしい。
これは王宮中で有名な話。
ギャビン室長は引き取られてからずっと不眠症で悩んできたのだろうか?
どちらにしろ、添い寝なんて楽な仕事みたい。
一緒に寝れば良いだけだもんね。
「分かりました。」
了承の返事をしたのに、ギャビン室長は眉間に皺を寄せた。
何故にそんな不満そうな顔を?
「俺が言うのもなんだが、君は簡単に人を信用しすぎるんじゃないか?」
「大丈夫ですよ。こう見えて人を見る目はあります。ギャビン室長は悪い人じゃありません。」
ね?
だってこうやって無事なことが、何よりの証拠っ!
「おま……もし寝ている間に手籠めにされていたらどうするつもりだったんだっ。」
「大丈夫ですよぅ。そのつもりでしたもん。室長みたいな人が相手なら文句ないですっ!」
容姿端麗で仕事も出来る。
初体験の相手としては不足なしっ!!
「き、君はっ!?」
ギャビン室長は怒っているのか呆れているのか分からないが、珍しく取り乱した様子で声を荒げた。
「貴族令嬢だろう?結婚前に異性と関係を持つなど………。」
「やだ室長。王宮で働いている人たちはみんなそれなりに恋人と楽しんでいますよ。」
「結婚前の女性がか?結婚した後に純潔じゃないと知れたらどうなることか……。」
「そんなの、今どきごまかす方法はいくらでもあるんです。特に23過ぎてる人はほとんど純潔じゃありません。」
「え?じゃあ君もか?」
うっ。。
痛いところを……。
「……私は………まだですが………。ああ、でも勘違いしないでくださいね。モテなかった訳じゃ無いですよ。ラブレターも何回も貰いましたし……。タイミングです、タイミングの問題ですよっ!」
ギャビン室長は複雑な表情を浮かべながらも、話題を変えることにしたようだ。
「兎に角、君に添い寝を頼みたいが、襲うことはしない。そこについては約束しよう。」
こうして、私はギャビン室長に添い寝婦として雇われることになった。
50
あなたにおすすめの小説
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
獅子の最愛〜獣人団長の執着〜
水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。
目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。
女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。
素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。
謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は…
ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
騎士団長の幼なじみ
入海月子
恋愛
マールは伯爵令嬢。幼なじみの騎士団長のラディアンのことが好き。10歳上の彼はマールのことをかわいがってはくれるけど、異性とは考えてないようで、マールはいつまでも子ども扱い。
あれこれ誘惑してみるものの、笑ってかわされる。
ある日、マールに縁談が来て……。
歳の差、体格差、身分差を書いてみたかったのです。王道のつもりです。
売られた先は潔癖侯爵とその弟でした
しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ルビーナの元に縁談が来た。
潔癖で有名な25歳の侯爵である。
多額の援助と引き換えに嫁ぐことになった。
お飾りの嫁になる覚悟のもと、嫁いだ先でのありえない生活に流されて順応するお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる