16 / 20
第一章 放浪
14話 焦燥
しおりを挟む
「待って」
そう言われてシオンは足を止めてメアリーの方へと視線を向ける。
「え?」
困惑するシオンの手をメアリーが引っ張る。
「早く走って」
メアリーに引っ張られるシオンはメアリーの見たものと同じものを目にする。
そこにあるのは生い茂る木の上を覆うように出来た大きな氷だった。
「なんなのよ」
そうメアリーがぼそりと呟いた後、2人は一言も交わすことなく走り続ける。
メアリーの表情からは焦りが見え、シオンもまた今の状況を冷静に判断することができなかった。
行きは歩いてきた道を走って帰ってきた2人はまず最初に宿へ戻ろうと足を進める。
街の外れにある宿は氷の被害を受けておらずその扉を開けると早足で階段を駆け登る。
「シオン、何者かの襲撃かもしれないわ。部屋に戻ったら早く装備を整えなさい」
部屋に戻ると、シオンは先程メアリーに言われたように武器や防具を装備する。
と言っても大掛かりな装備はなく、いつも通り羽織った服の下に短剣を忍ばせるだけである。最後に忘れてはならないのは、ハルタの街に来てから作ってもらったイヤリングである。
シオンがメアリーの方を見ると、彼女もペンダントを胸にかけ「早くしろ」とでも言っているような表情でこちらを見ていた。それを見てシオンはイヤリングをつけようとするのだがーー
「あったかい」
そう言ってイヤリングを眺める。
「何してるのよシオン。固まってないで早くしなさい」
そう言われて我に返ったシオンはイヤリングを両耳につけるとメアリーに抱き抱えられた。シオンが戸惑っていると、そのままメアリーは窓から飛び降りた。
「ごめん。時間がないの」
そう言ってシオンを地面へと降ろしてすぐさま走り出す。
そんなメアリーにシオンもため息ひとつをついて走り出した。
「街の中心に近づいて行くにつれて気温がどんどん下がっているように感じます」
シオンにそう言われてメアリーは頷く。
「きっと街の中心で何が起こってる」
そう言って街の中心へと走るのだが、シオンの中で何か引っかかることがあった。
街の中心に向かうにつれて2人と反対方向に走る人の数が増えてきたのだ。
その中の1人、大柄の男に声をかけられる。
「あんたら何してんだ、そっちは危ないぞ」
そう言われてるが2人は振り返らない。
そのまま走り続けて街の中央街道へと突入する。
この街に来てから一番歩いたであろう街道を今回は走って進む2人は辺りの風景がいつもと違う事に悲しさを覚える。
特に思い入れがあるわけでもないこの街。
たかだか数日しか滞在していないがこの街であった出来事を思い出すと悲しさが込み上げてくる。
シオンと一緒に行った図書館は外装が崩れて周りに全部落ちていた。シオンが買ったみたらし団子の露店は氷で潰れていた。
メアリーは少なくはないこの街での思い出を噛み締める。
シオンといった場所の殆どが跡形もなくなってしまっている中、ひとつだけ無事な建物を発見する。
街道から少し外れたその先にある鍛冶屋。
そう、シルバニーの工房があるところである。
「シオン、こっち」
そう言ってまたシオンを引っ張り回す。
シルバニーの鍛冶屋の前についた2人は躊躇なくその扉を開く。
中には椅子に腰掛けるこの前と変わらぬシルバニーの姿があった。
「シルバニーさん、早く逃げないと」
「ああ、やっと来ましたか。お二人さんこそ逃げなくても大丈夫ですか?」
そう自分の心配よりもこちらの心配をするシルバニー。
「私は大丈夫ですから、お二人さんは早く街の中央まで向かってください。終わってからここに戻ってきてほしいですが」
そう言われてもメアリーには何が大丈夫なのか分からなかった。
しかし、今自分達の状況を考えてもここに長居することは出来ない。
そんなことも相まって2人はこの鍛冶屋から出ることにする。
「はい。すぐ戻ってきますから」
そう言って2人は鍛冶屋を飛び出した。
そう言われてシオンは足を止めてメアリーの方へと視線を向ける。
「え?」
困惑するシオンの手をメアリーが引っ張る。
「早く走って」
メアリーに引っ張られるシオンはメアリーの見たものと同じものを目にする。
そこにあるのは生い茂る木の上を覆うように出来た大きな氷だった。
「なんなのよ」
そうメアリーがぼそりと呟いた後、2人は一言も交わすことなく走り続ける。
メアリーの表情からは焦りが見え、シオンもまた今の状況を冷静に判断することができなかった。
行きは歩いてきた道を走って帰ってきた2人はまず最初に宿へ戻ろうと足を進める。
街の外れにある宿は氷の被害を受けておらずその扉を開けると早足で階段を駆け登る。
「シオン、何者かの襲撃かもしれないわ。部屋に戻ったら早く装備を整えなさい」
部屋に戻ると、シオンは先程メアリーに言われたように武器や防具を装備する。
と言っても大掛かりな装備はなく、いつも通り羽織った服の下に短剣を忍ばせるだけである。最後に忘れてはならないのは、ハルタの街に来てから作ってもらったイヤリングである。
シオンがメアリーの方を見ると、彼女もペンダントを胸にかけ「早くしろ」とでも言っているような表情でこちらを見ていた。それを見てシオンはイヤリングをつけようとするのだがーー
「あったかい」
そう言ってイヤリングを眺める。
「何してるのよシオン。固まってないで早くしなさい」
そう言われて我に返ったシオンはイヤリングを両耳につけるとメアリーに抱き抱えられた。シオンが戸惑っていると、そのままメアリーは窓から飛び降りた。
「ごめん。時間がないの」
そう言ってシオンを地面へと降ろしてすぐさま走り出す。
そんなメアリーにシオンもため息ひとつをついて走り出した。
「街の中心に近づいて行くにつれて気温がどんどん下がっているように感じます」
シオンにそう言われてメアリーは頷く。
「きっと街の中心で何が起こってる」
そう言って街の中心へと走るのだが、シオンの中で何か引っかかることがあった。
街の中心に向かうにつれて2人と反対方向に走る人の数が増えてきたのだ。
その中の1人、大柄の男に声をかけられる。
「あんたら何してんだ、そっちは危ないぞ」
そう言われてるが2人は振り返らない。
そのまま走り続けて街の中央街道へと突入する。
この街に来てから一番歩いたであろう街道を今回は走って進む2人は辺りの風景がいつもと違う事に悲しさを覚える。
特に思い入れがあるわけでもないこの街。
たかだか数日しか滞在していないがこの街であった出来事を思い出すと悲しさが込み上げてくる。
シオンと一緒に行った図書館は外装が崩れて周りに全部落ちていた。シオンが買ったみたらし団子の露店は氷で潰れていた。
メアリーは少なくはないこの街での思い出を噛み締める。
シオンといった場所の殆どが跡形もなくなってしまっている中、ひとつだけ無事な建物を発見する。
街道から少し外れたその先にある鍛冶屋。
そう、シルバニーの工房があるところである。
「シオン、こっち」
そう言ってまたシオンを引っ張り回す。
シルバニーの鍛冶屋の前についた2人は躊躇なくその扉を開く。
中には椅子に腰掛けるこの前と変わらぬシルバニーの姿があった。
「シルバニーさん、早く逃げないと」
「ああ、やっと来ましたか。お二人さんこそ逃げなくても大丈夫ですか?」
そう自分の心配よりもこちらの心配をするシルバニー。
「私は大丈夫ですから、お二人さんは早く街の中央まで向かってください。終わってからここに戻ってきてほしいですが」
そう言われてもメアリーには何が大丈夫なのか分からなかった。
しかし、今自分達の状況を考えてもここに長居することは出来ない。
そんなことも相まって2人はこの鍛冶屋から出ることにする。
「はい。すぐ戻ってきますから」
そう言って2人は鍛冶屋を飛び出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
16
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる