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しおりを挟むシュンスケが来たら出掛けられるよう支度を整えたが――あたしを呼びに来たはずの彼はコンビニの袋を携えていた。袋には缶チューハイやお総菜が詰め込まれている。
「もしかして、あたしの部屋で飲もうと思ってる?」
「リツコちゃんは引っ越したばかりだもん、段ボール箱とか山積みなんじゃない? オレの部屋に行こ」
「無理。帰って」
「そんな警戒しなくて大丈夫だよ。女の子は大好きだけど、オレは合意なく手を出す男じゃない。そこはマジで安心してオッケーって感じだから」
「お酒に酔わせて……とか企んでるんじゃないの?」
「そんなことしたら犯罪だよ!」
シュンスケの視線がふと横にそれる。
表情には影が差しているように見えた。
「オレたちには普通と違う一面があるでしょ? 酒に酔って女の子に手を出すことは絶対ないと断言できるけど、余計なことをポロッと喋っちゃう可能性はゼロじゃないから。残念だけど、外では酒を楽しめないんだ」
大好きなのにね、と彼は自嘲気味に呟いた。
お酒を嗜まない自分には感覚が分からないが、酔うと本音が出るタイプの人間もいると聞く。シュンスケは周囲に異彩が漏れるのを恐れ、外でお酒を飲まないようにしてきたのだろう。
あたしは人付き合いが苦手なくせに、悲しげにされると弱い一面があると自覚している。
おそらく自分の過去に起因するものだ。
いじめに遭って泣いていた記憶と重なり、放っておけなくなる――そんなところだと思う。我ながら厄介な性格だ。
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