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しおりを挟む「ハルにも今夜のことは黙っておこう」
「ノブおじさんに眼を見せたこと?」
「あぁ。あいつはユイカよりも繊細だから、余計な情報を入れない方がいい」
あたしから見ると、ハルよりユイカの方がずっと繊細そうだが……家族でないと見えない部分もあるということだろうか。
「今度はあたしが質問してもいいですか?」
「何だい?」
「管理人さんの異彩のことですけど。住人に話さないよう、ノブおじさんが口止めしているんですよね? それはどうして?」
「お前さんのような子を苦しめるかもしれない――いや、違うな。もしかしたら……心のどこかで恐れている……のかもしれない」
「恐れているって、異彩を知られること?」
「……まぁ、そうだね」
「ここの住人はみんないろんなものを抱えてますし、管理人さんに世話になってるわけだから、そうそう拒否反応を示したりしないんじゃないですか? あたしだって、管理人さんにどんな異質さがあったとしても受け入れる覚悟はあるつもりです」
「……受け入れる覚悟がないのは俺の方だよ」
「え? どういう意味ですか?」
「リツコちゃんは『生きる意味など考えたことがない』と言っていたね」
「……そうですけど」
「俺は明確な目的を持って生きている。第一に、ユイカとハルを幸せにすること。そして次に、苦悩する異彩者の力になること。この二点が俺の生きる意味さ」
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