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二章
戦からの帰途4 諦め
――――寒い。
俺は、斜面を這うようにして、険しい山道を斜めに、横切るように歩いていた。自分の喘ぐような呼吸が、白く小さい、雲を作る。
俺はよろけなら、歩いていた。足ががくがくと震え、うまく力が入らない。
――痛い。寒い。眠い。暗い。
俺の頭の中にあるのは、単語ばかりで、思考は、ほとんど機能していなかった。頭の中にあるのは、陣営の方向へ向かうことだけだ。
俺が山の斜面を滑り落ちた時、幸い、斜面は、そこまで急ではなかったので、ねん挫や擦り傷だけですんだ。だが仲間たちと離れ、道を外れたことは、拙かった。
ここらは山深く、道が分かりずらい。迷って、腹が減って、力尽きるのが一番まずい。
それでも俺は辛抱強く、自陣があると思われる方角へと、進み続けた。稀に少し見晴らしの良い場所に出た時に、山の方角を確認し、あとは太陽の位置から、大体の方角を掴んだ。
幸い、最初に襲われた後は、俺は敵兵や山賊と、直接合うことはなかった。
だが、注意深く進まなければならないのは、前と同じだ。
そして、それよりも、さらに俺を悩ませたのは、この寒さだった。俺は霜が降りる洞穴で眠り、凍てつく小川の横を歩いた。
すぐに、朝、上手く起きれなくなった。気力が出ないのだ。幾ら寝ても、冷え切った体と、薄い眠りでは、意味がない。すでに枯渇した体力が、どんどん削れていくのが、自分でも分かり、俺は焦った。。
またある日には、血の匂いを嗅ぎつけた狼どもが、俺の後ろに付いて来た。狼の目が、こちらを伺うように、光っていた。はぁはぁと、声が聞こえるような気がして、俺は何度も振り返った。薄闇に潜む狼を睨みつけ、俺はこう叫ぶ。
「俺はまだ死んじゃいねえぞ、くそったれ狼ども!」
そして短剣を二つ、カーンと打ち合わせると、狼たちは、小さくキャンと鳴いて、遠のいていった。
安心したのも束の間だった。今度は、体の方にが、たが来始めた。
まず、何もないところで、頻繁に転ぶようになった。転ぶというよりも、地面に膝をつくような感じだ。
腹が減った。限界だった。
だが、腹が減るのも、当然だった。仲間と別れてから、すでに五日経っていた。その間、まともなものを口に入れていない。
仲間とはぐれる一日前。隊長が『あと五日あれば、自陣に辿り着ける』と言っていたことを思い出す。なら、俺は今、何処にいるんだ。
その時、俺は、また転んだ。うぐ、と短く声が出る。
転ぶたびに、体中の、いたるところにある、抉られ、斬られた創が痛み、その存在を主張する。
俺は、起き上がろうとした。だが、なかなか、腕に力が入らない。顔が上がらない。
視線の先、枯葉に覆われた下草の根元に、小虫が這うのが見えた。
それを見た時、唐突に、俺の心は、滲むように冷えた。
死んでたまるか、と、それまでピンと張っていた気持ちが、糸が着れたようにふっつりと、切れた。
俺は、そのとき全身で思った。
ここで、この人生をやめたいと。
俺は、斜面を這うようにして、険しい山道を斜めに、横切るように歩いていた。自分の喘ぐような呼吸が、白く小さい、雲を作る。
俺はよろけなら、歩いていた。足ががくがくと震え、うまく力が入らない。
――痛い。寒い。眠い。暗い。
俺の頭の中にあるのは、単語ばかりで、思考は、ほとんど機能していなかった。頭の中にあるのは、陣営の方向へ向かうことだけだ。
俺が山の斜面を滑り落ちた時、幸い、斜面は、そこまで急ではなかったので、ねん挫や擦り傷だけですんだ。だが仲間たちと離れ、道を外れたことは、拙かった。
ここらは山深く、道が分かりずらい。迷って、腹が減って、力尽きるのが一番まずい。
それでも俺は辛抱強く、自陣があると思われる方角へと、進み続けた。稀に少し見晴らしの良い場所に出た時に、山の方角を確認し、あとは太陽の位置から、大体の方角を掴んだ。
幸い、最初に襲われた後は、俺は敵兵や山賊と、直接合うことはなかった。
だが、注意深く進まなければならないのは、前と同じだ。
そして、それよりも、さらに俺を悩ませたのは、この寒さだった。俺は霜が降りる洞穴で眠り、凍てつく小川の横を歩いた。
すぐに、朝、上手く起きれなくなった。気力が出ないのだ。幾ら寝ても、冷え切った体と、薄い眠りでは、意味がない。すでに枯渇した体力が、どんどん削れていくのが、自分でも分かり、俺は焦った。。
またある日には、血の匂いを嗅ぎつけた狼どもが、俺の後ろに付いて来た。狼の目が、こちらを伺うように、光っていた。はぁはぁと、声が聞こえるような気がして、俺は何度も振り返った。薄闇に潜む狼を睨みつけ、俺はこう叫ぶ。
「俺はまだ死んじゃいねえぞ、くそったれ狼ども!」
そして短剣を二つ、カーンと打ち合わせると、狼たちは、小さくキャンと鳴いて、遠のいていった。
安心したのも束の間だった。今度は、体の方にが、たが来始めた。
まず、何もないところで、頻繁に転ぶようになった。転ぶというよりも、地面に膝をつくような感じだ。
腹が減った。限界だった。
だが、腹が減るのも、当然だった。仲間と別れてから、すでに五日経っていた。その間、まともなものを口に入れていない。
仲間とはぐれる一日前。隊長が『あと五日あれば、自陣に辿り着ける』と言っていたことを思い出す。なら、俺は今、何処にいるんだ。
その時、俺は、また転んだ。うぐ、と短く声が出る。
転ぶたびに、体中の、いたるところにある、抉られ、斬られた創が痛み、その存在を主張する。
俺は、起き上がろうとした。だが、なかなか、腕に力が入らない。顔が上がらない。
視線の先、枯葉に覆われた下草の根元に、小虫が這うのが見えた。
それを見た時、唐突に、俺の心は、滲むように冷えた。
死んでたまるか、と、それまでピンと張っていた気持ちが、糸が着れたようにふっつりと、切れた。
俺は、そのとき全身で思った。
ここで、この人生をやめたいと。
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