ただの雑兵が、年上武士に溺愛された結果。

みどりのおおかみ

文字の大きさ
53 / 70
三章

果て

「んぁ、た、ただよ、りっ、……っただより、っぅあ、ん」
 名前を呼べ、と言ったのは忠頼のほうなのに、逆に俺の方が、酷く感じてしまう。
  俺たちはまるで、腹を空かせた餓鬼みたいに、なりふり構わず貪り合った。
 何度も奥を突かれ、快楽に揺蕩いながも、俺は、より深い感情が、自分の中に生まれてくるのを感じていた。
――もっと奥まで。もっと、内側まで。
 切なさの先に、もっと深い悲哀がある。もっと恐ろしい渇望がある。その苦しさの気配が見えていながら、俺は、そのすべてを味わい尽くしたいと願ってしまう。
――一つでいたい。このまま、こいつの中に沁み込んで、臓腑になれたらいい。
 そうしたら、言葉などいらないくらい、忠頼の感じる痛みも、苦しみも、すべてを一緒に感じられる。
 どれほど、余計な悲しみを背負い込むことになろうと構わなかい。
 たとえ、忠頼の背負う苦痛が、海より広く、深くたっていい。
 こいつが痛むときは、俺も一緒に痛む。それが、俺の幸せだ。
 俺は熱に浮かされたように、目の前の男の名を、何度も何度も呼んだ。己の体が、再びがくがくと震え、何度も絶頂に達した。
  激しい衝動の中、俺は、ふいに、いつもと違う、満ち足りた感覚に包まれて、戸惑う。
 その感覚は、言葉では言い表すのが難しい。滑らかで、美しい絹の織物が触れるような、光自体が肌を滑っていくような感覚だ。
――この男は、俺を愛している。
 俺は急に、それを、理屈ではないところで、感じた。
――俺が、忠頼を愛しているのと同じくらい――いや、ある部分ではそれよりも深く。
 骨の髄まで惚れて、惚れて、惚れつくしてしまっている。
 俺は、忠頼の心に、直接触れていた。それは色となり、音となり、感触となり、俺の中を訪う。それは、普段は届かない奥の奥――人間の、一番真っ白で、、純粋な部分だ。
  何度目かの絶頂を過ぎた時、俺に覆いかぶさり、激しく腰を動かしていた忠頼の身体が、呻き声と共に、ぶるりと震えた。
「――……っ」 
 忠頼は俺の顔の横に手を突いたまま、ゆっりりと呼吸を繰り返す。
 ふいに脱力すると、忠頼は自分の重みを、俺に任せた。
 忠頼の肌も、俺の体も、混じる吐息も、すべてが、蕩けそうに熱い。
 忠頼が、吐息と共に囁く。
「――ありがとう、弥次郎」
 その小さな声は、俺の最後の強がりを溶かすのに十分なほど、柔らかい。
 涙が再び。頬を伝った。
――俺は、この熱を、生まれ変わっても、消して忘れないだろう。
 自分でも、自分の気持ちが、よく分からなかった。これは――愛だろうか。恋だろうか。
――たぶん、これはきっと――――添い遂げたい、という気持ちなのだろう。
 俺たちは目を閉じて、ただ抱き合った。
 俺たちが現世で過ごす最後の時が、ゆっくりと、闇に解けていく。
 それでも、俺たちは世界で一番、幸せだと思った。
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕