説得マン

浅谷

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1話

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 成世「あー…。あー…。こりゃ綺麗や…。」
 駅から出てすぐやのにこの眩しさや!もうキラッキラやで!やはり東京…。何回見てもすごいで…。独り言はこれで最後にした方がええな…。心の中で思うんじゃ!…これが心の中の声やんけ…。…あ痛い…。いつもなら背後から何かが近付いてくんのにも気付けるんやけどな…。まんまと背後を取られたで…。…いや反省が先や!また常識学び直さな…。


 通行人「痛っ…。チッ…。」ぶつかった背後の通行人が舌打ちしやがった…。なんやこいつ…。
 成世「…すいません…。」でも謝らなあかんな…。通行人は俺を睨んだ後去ってった。輝きだけちゃうのは分かっとったけど結構きっついのお…。でも人混みの中で突っ立っとった俺が悪かったんや…。変な行動は慎むか…。


 あ!忘れとった!(※忘れていた!) アパートやアパート!向かわねば!もう契約書も確認してサインと判子も押したし挨拶も済ませた!準備万端や!家賃もワンルームで10万!クッソ高いけどまぁまぁええわ!東京の輝きが俺の側にずっとおるんやからな!安いもんやで!


 ~1週間後~

 成世「…………」ペコッ
 隣人「…………」ペコッ
 ………辛い辛い…。何も話すことあれへん!(※話すことが無い!)もう部屋ん中入ろか…。はー…。やっぱり落ち着くんはここだけやな。俺のマイルーム。………。
 ここに来てからずっとこんなんやん…。はぁ…。
 成世「…ビッグになりたい…。」そうや!俺には特殊能力があるんや!今玄関の前…。手をかざすと…? 

 よっしゃ!空間開いて中からリビングが見える!これはもうワープって言ってもええやろ!手をかざしてイメージするだけやから使い勝手もええ!これでビッグになれるんや…。



あ。あかんにやけてもた。やばいやばい。不審者や。カーテン閉めとって良かったぁ…。絶対に能力使ってる様子を誰かに見られたらあかん。もし見られたらどっかの部隊に捕獲されて実験体にされるの確定や!身内にも被害が及ぶしな…。まぁバレても対処は出来るけど、倫理観を蔑ろにしてまう…。出来ればやりたない。(※やりたくない)
嫌われたない…。能力持っとう癖に責任感無い事したない…。




ん…?SNSの投稿…? 何じゃあこの文!?うっわ玄関で座り込んでもた…。内容見よか…。
今ライブ会場で客が乱入しとって、武器持って出演者に迫っとるやとぉ!?ドーム状のライブ会場…。……あかんスマホ床に強めに置いてもた…。
成世「…勝ったな…。」独り言が出てもたから負けや…。
でもチャンスや!これはええで!


そうや!衣装衣装!このままやったらすぐバレるで!
リビングにワープして…、もしもの為に棚ん中入れとった…。これや!
頭は黒いニット帽と黒いサングラスと白いマスク!
服一式は黒いジャージ!よっしゃ行くで!


成世「開き~なはれや~。(※開きなさい)」負け越し。まぁええわ。おっほ~綺麗やのぉ~!観客も沢山おるで~!そして何より……、会場の皆さんの驚いたお顔!
ありがたいもんやで!うわ!観客がスマホで俺を撮っとう!もっと撮って!でー、犯人見た目普通やのお…。
どこにでもおるやつやんけ!俺と同年代ぐらいか?でも顔隠してないから中々やんちゃやなぁ!やんちゃって何やっけ…。ボディーガードが何人か倒れてるようやけど、怪我は軽そうや。撃たれた痕跡もあれへん。来るのが早くて良かったのお…。中々やるのお…。てかどうやってここまで来れたんやこいつ…。警察来てない。今がチャンスや!…それはそうと犯人中性的やな…。何か可愛いな…。


犯人「何だお前!?どこから来た!?今どうやったんだ!?答えろ!」
犯人はリボルバーの銃口を俺に向けて聞いてきた。既にハンマーは起こしてるようやな。その覚悟をもっと別のとこに使えや…。


成世「すいません。答えたら僕のアイデンティティが傷付くので言えません。」言ってやったわ!何で教えなあかんねん!
犯人「ッ…!ふざけんなぁ!」激昂した犯人がトリガーを引きよった。やけど弾は出えへん。(出ない。)もっと早く撃たなあかんかったな…。

犯人「え…?…なんで?何でだよ!」
成世「お探しの物は…、こちらでしょうか?」ポケットから弾を取り出して見せたった。先端が押しつぶされた様な形やな…。いつ見ても…。
犯人「…!?何で持ってんだよ!?」
しゃあない…。教えたるか…。少しだけ…。
成世「さっきやった事の応用ですよ。言えるのはここまでです。」カッコつけんの気持ちええな~!犯人も驚いてやんの!驚いたお顔!またまたいただきや!笑えてくるで!あっ…。
成世「フフン…ア”ッア”アッア”…。」やってもた…。
見渡しただけですぐ分かる!会場の皆さんドン引きや…。そして犯人が一言…。


犯人「何お前…。気持ち悪…。」そらそうや!自分でも思うわ!
成世「すいません…。許してください…。」ほんまにごめんなさい…。これはあかん…。
犯人「…それとお前何?その格好…。犯罪者じゃん。」
お前が言うなや!

成世「…何言ってんすか…。こ~んな騒動起こしてる癖に人の格好にケチつけんちゃ~うで!」方言出てもた…。
犯人「え?なに?お前関西人?良いじゃん!面白いからそのまま続けてよ!」犯人はニコッて笑いながらそう言うた。

成世「いやあのね…。可愛い顔しとっても許されん事はあるで…。」可愛い言うてもた。この服装もあいまって俺も犯罪者の仲間入りや!悲しい悲しい…。
犯人「うっわキモ…。」ドン引きした顔で言いよった。
そうやな。確かにキモいな。

成世「罵倒はちょっと置いといてや!まずはのぉ…。
裁判で実刑判決下るやろ?そんで償った後、賠償…」
犯人「賠償金は大丈夫!株で稼いでっから!」
急に話し遮りよった…。

成世「ちょっとやめーや!話途中やんけ!調子乗っとんちゃ~うで!」こいつ説教遮るんか…。どんな教育受けとんねん…。
犯人「”あ”!?お前も調子乗ってんだろーが!!」
強めに怒鳴ってきた…。叫ぶ顔も迫力満点や…。



成世「…すんまへん…。だからねぇ…。こんな事したら…ねぇ…。恥やと思わん?」
犯人「何が?」
犯人はきょとんとしながら俺に聞く。
成世「だってな…。この会場すげぇでかいやろ?ということは防犯対策はきっちりやっとうってこっちゃ!」
犯人「こっちゃ?」
急に犯人がこっちゃの意味を聞いてきた。
成世「…ことだって意味や…。そんな厳戒態勢のこの場所で、このステージまで来れたって事はお前…、めっちゃ身体能力高いやろ…。一人だけやろ?お前。侵入口も見つからんし。」
ありのまま聞いたった。


犯人「一人だけど?てかさ…、僕の身体能力が高いって?分かってるよ!分かってるからこそさ。楽しいじゃん!雑魚に力の差を思い知らせるのって。」
犯人は意気揚々と答えた…。はぁ…。


成世「アホやのお…。」
心の底からやった。
犯人「アホ?アホって何だよ!」
犯人は怒って俺に問うた。答えたろ。
成世「それが恥って言うとんや!その雑魚に時間割くのも恥やと思わん?はっきり言うて無駄や!
雑魚は雑魚でもうっじゃうじゃおるんや。キリないで!塵も積もれば山となるってやつや!」
犯人は納得と困惑が混ざった様な顔で言うた。

犯人「…ま、まぁそうかもな…?でもさ、もっと説教臭い言葉が返ってくると思ってたから、調子狂うな…。
それとさ…、お前も大概だな…。」
困惑しきった顔で犯人が言うた。

成世「お前よりマシやろ!それと、雑魚に時間割くのも恥とは言うたけど、俺とお前も雑魚に埋もれて生きとんや…。(※生きてるんだ)
雑魚がおだててくれたら、俺らはもっと上の段階に行けるんや!ビッグになれるんやで!」
自分でも結構酷いこと言うたけどどうや…?

犯人「…お前ヤバ…。」
犯人が困惑しきった顔でさらに後退りしとう。これは決まったわ!

犯人「もう萎えたわ…。大人しく捕まろ…。」
やった…。やったで!勝ったんや!しょんぼりした顔も儚くてええな…。
成世「あ…そうなん…。」
意外そうな演技…。これでフィニッシュや!
犯人「マジなんなん…。お前」
蔑んだ目で俺を見て聞いてきた…。最高や!
成世「アーハハハ!真似たなお前!」
犯人を指さして言ったった!犯人の目がさらに冷たくなった。…これ以上はやめとこ…。せや!気を取り直して名乗ったろ!
成世「説得!誰得?俺が得!説得マン!!」
サムズアップを自分に向けて…。決まった…。でも皆さん静かやな……。ちょっとだけ笑い声が聞こえるのが逆に辛い。そこの警察官達!俺も逮捕してえや…。凍りつかせた罪で…。
成世「締まりが悪いけどまぁええやろ!どうせバレてへんし…。よかった~!」


そう言って万歳してる俺をよそに警察官に連行さていく犯人が呆れた顔で俺の方を向いて言うた。
犯人「いや…。バレるよ?」
その言葉に俺は堪らず上げた両腕をゆっくり下ろして棒立ち&真顔になってもた…。
成世「…………………。」
思わず無口になってもた。続けて犯人が言うた。
犯人「声紋と仕草…。後ガッツリ方言喋ってたから意外とすぐにバレるかもね…。」そして警察官と共にステージを降りて去ってった。俺は文字通り頭を抱えてもた。
成世「あかんあかん終わりや!」


えらいこっちゃえらいこっちゃで!(※大変なことだ大変なことだ!)調子乗りすぎたわ!
こうなったら土下座や!警察官達もこっちに来とう!早速土下座の準備をしようとしたその時!機械音が鳴った。


「BAKE《バケ》/AREA/COMEBACK/RECOVERY/MEMORY/MINUS/FLASH」
あ、これは!仲間の能力や!助けに来てくれたんか!空間が開いたが俺のとは違うのお。光ってて眩しいわ…! 中には、がっくりと肩を落とした鎧を着た奴が立っとった。観客が一斉に鎧を着た奴を撮っとうわ!警察官達も驚いて立ち竦んどう…。俺ん時はちょっとだけやったのに!
成世「陸斗…。羨ましいのお…。」
俺がそう言うたのが気に入らんかったんか、陸斗は拳を振り被るポーズを取った。
成世「すんまへん!これは悪かった!でも事件は解決したで!?」
陸斗は振りかぶった拳を戻して俺を指差し、その指を左右に振った…。

成世「そうやな…。倒れてる人のケアをせんと放置してもとった…。名声得ようとも思ったわ…。」陸斗は頷いた後、握り拳を作って左胸に押し当てた後、その握り拳を俺に伸ばした。
成世「仲直りって事?よっしゃ!」俺も握り拳を作り、陸斗の握り拳に繋げた。
繋ぎ終えた後、陸斗が何かが足りなそうな雰囲気を醸し出しとう。


成世「え、何よ?まだ何かあるんけ?(※あるのか?)」
俺が聞くと、陸斗は自分を指差した。
成世「あー…。そうやったな…。今のお前はガグガルドスやったな…。」
ガグガルドスは俺にサムズアップを返した。

ふと、気になった事をガグガルドスに聞いた。
「お前、そんなに能力使ってええんか?
ぶっ倒れるで?」  
ガグガルドスは後ろの拠点を指差した。拠点からガグガルドスへエネルギーが送られとった。
成世「あぁ…。この前えらい無茶をやったんやな…。前仲間になった奴の件で…。」
ガグガルドスは頭を傾けた後頭を撫でた。苦い思い出なんやろな…。


そう話してるのも束の間、空間が閉じ始めてもた。
成世「もうあかんで!入らな!(※入らなければ!)」
ガグガルドスがせわしく手招きをしとう。分かっとうて!入る前にお詫びや!


成世「皆様方!この度は誠に申し訳ございませんでした!度重なる醜態をご覧に入れた事…。深くお詫び申し上げます!」俺は会場の皆さんに深く頭を下げた。土下座まではせえへんけどな!
成世「我々の正体に関する記憶は全て消去させて頂きます…。ですが都市伝説として我々は皆様の中に残ります…。陰ながら皆様を救う…、「英雄」としてえええ!?」


空間の入り口えらいちっちゃくなってもたやんけ!もう入るわ!ガグガルドスが手を伸ばしてくれとう…。俺はその手を掴んで何とか空間に入る。入りながらもう一言や!
成世「ま、まぁまた会う時は、俺らの事好きになってや~~!じゃあの!」


言い終わった後、ガグガルドスが強く俺を引っ張る。アジトに着いた。
成世「…痛いのお…。普通の人間やったら粉々やで」
ガグガルドスはガッツポーズをとりよった…。
そんなやり取りをしとう内に、空間の入り口がピンボールぐらいにまで縮んどった。そして閉じる瞬間、辺り一面が眩く光った。ライブ会場も同じ様に光ったやろな…。


この光には色んな力が付与されとう。
あらゆるダメージを回復させる力。生物であろうがなかろうが関係無い。次に照らした範囲に効果を行き届かせる力。そして…、記憶や記録を消す力…。まぁ俺らの記憶に何ら異常はあれへん(※無い)けど、会場の皆さんは違う…。今頃俺らの事なんてすっかり忘れとうわ…。

でも、「俺ら」や!俺は1人ちゃうんや!
ガグガルドス達がおるんや!皆出迎えてくれるやんけ!気分がええのお!…何か忘れとうような…。

成世「あ…。アパート鍵掛けんのわせた(※忘れた)…。」



【続く】



































































































     
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