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9話
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…一緒に座ったんはええけど…、気まずいのお…。
話を切り出してくださったんは真梨耶さんやった。
真梨耶「あの…。春崎さんって、私が見た範囲だと、いつも話し合いで解決してますよね。…優しいですね…。」
俺を見ておっしゃった。
成世「いやそんな!ただ痛い思いするのが嫌なんですよ!」
真梨耶「そんな事言ったって、分かってますよ?
昨日だって、投げ飛ばされたスタッフをキャッチしたじゃないですか。まるでいつもしてる。…してた?みたいな。身体もがっしりしてますし。」
筒抜けみたいやな……。ちょっと怖い…。
成世「やだなぁ…。そんな訳無いじゃないですか…。」
俺は咄嗟にはぐらかした。そしてつい、腕まくりして掻いてもた。当然真梨耶さんに見られてもた。ジャージで隠しとった傷跡を。
真梨耶「…何ですか?その傷…。」
俺は咄嗟に隠した。
極力記憶操作はやらんと決めとうから、尚更…。
成世「……………。」
真梨耶「春崎さん?」
だんまり決め込んでもた…。何か喋った方がええな!
成世「こ、これは…、その…。」
真梨耶「沢山助けたんでしょ?これまで。何人も。
今まで見てきた様子だと、相手を力ずくで止めるのは簡単。でもそれは敢えてしていない様に見えました。
…でも、さっきのを見て確信しました。」
止めてください…。
真梨耶「…聞きたいです。あなたの事…。」
それは無理やな…。
成世「僕は別に大した人間じゃないので、話せる内容じゃないですよ…。昨日以外で誰かを助けた覚えも無いし…。なので話せません…。」
真梨耶「嘘つき…。」
真梨耶さんが拗ねてもた…。
成世「でも、これだけは言えます…。」
真梨耶「え?」
真梨耶さんがきょとんとした顔で俺を見つめる。
成世「自由は時に、狭まる時があるんです。」
真梨耶「………………。」
真梨耶さんは黙って聞いてくださってる。
成世「…確かに辛いんですけど、同時に誇らしく思えるんです!」
話し込んでもたな…。湿っぽいし…。あれは…。そうや!賭けてみるか!幸い真梨耶さんは気付いてへんし!
成世「それだけで充分だと思痛っ!」
よっしゃ!お子さん!おおきに!サッカーボールを俺の頭にぶつけてくれて!サッカーボールがベンチの側に落ちた。
子供「ごめんなさい!」
小学生くらいのが走ってきて謝ってくれた。親はおらんな…。一人で遊びに来とったんか。
成世「大丈夫大丈夫!でも気を付けようね!」
俺はサッカーボールを子供に手渡しした。
子供「はい!」
子供は俺と真梨耶さんに深く頭を下げた。そして走り去ってった。
横の真梨耶さんを見ると、笑っていらっしゃった。大成功や!
真梨耶「アハハッ!おっかし!気付いてないと思ったの?あの子の事見てたの知ってたんだから!ボールが飛んで来たた時にちょっと前屈みになってたし!」
気付かれとったんやな…。
成世「すいません…。」
何か急にフレンドリーになったな…。俺の事信頼してくださっとう証拠やな…。
真梨耶「ううん。良いよ!成世くん!」
名前でお呼びになったで!
成世「あ、ありがとうございます。…真梨耶さん。」
真梨耶「…ふふっ!今日はありがとう!またね!」
成世「はい!また…!」
真梨耶さんはベンチから立ち上がると、走り去ろうとした。俺は声を掛けて引き留めてみた。あの事聞かんとな…。
成世「あの!」
真梨耶さんは立ち止まり、俺の方を振り返っておっしゃった。
真梨耶「ん?」
成世「番組の休憩中に男が乱入したじゃないですか!昨日ニュースでその事報道されたの見たんですけど、番組に支障はないでしょうか?」
真梨耶「大丈夫だけど、前よりも警備を固める方針が立ったくらいかな。」
成世「良かったです!それぐらいで済んで。」
俺はそっと胸を撫で下ろした。真梨耶さんはそんな俺を見て、ニコッと笑っておっしゃった。
真梨耶「やっぱり優しいね。そのままでいてね?じゃあね!」
真梨耶さんは俺に手を振りながら走り出した。
俺も立ち上がって真梨耶さんに手を振った。それを見た真梨耶さんはニコッと笑うと、俺に手を振るのを止め、前を向いて走り去って行った。
【続く】
話を切り出してくださったんは真梨耶さんやった。
真梨耶「あの…。春崎さんって、私が見た範囲だと、いつも話し合いで解決してますよね。…優しいですね…。」
俺を見ておっしゃった。
成世「いやそんな!ただ痛い思いするのが嫌なんですよ!」
真梨耶「そんな事言ったって、分かってますよ?
昨日だって、投げ飛ばされたスタッフをキャッチしたじゃないですか。まるでいつもしてる。…してた?みたいな。身体もがっしりしてますし。」
筒抜けみたいやな……。ちょっと怖い…。
成世「やだなぁ…。そんな訳無いじゃないですか…。」
俺は咄嗟にはぐらかした。そしてつい、腕まくりして掻いてもた。当然真梨耶さんに見られてもた。ジャージで隠しとった傷跡を。
真梨耶「…何ですか?その傷…。」
俺は咄嗟に隠した。
極力記憶操作はやらんと決めとうから、尚更…。
成世「……………。」
真梨耶「春崎さん?」
だんまり決め込んでもた…。何か喋った方がええな!
成世「こ、これは…、その…。」
真梨耶「沢山助けたんでしょ?これまで。何人も。
今まで見てきた様子だと、相手を力ずくで止めるのは簡単。でもそれは敢えてしていない様に見えました。
…でも、さっきのを見て確信しました。」
止めてください…。
真梨耶「…聞きたいです。あなたの事…。」
それは無理やな…。
成世「僕は別に大した人間じゃないので、話せる内容じゃないですよ…。昨日以外で誰かを助けた覚えも無いし…。なので話せません…。」
真梨耶「嘘つき…。」
真梨耶さんが拗ねてもた…。
成世「でも、これだけは言えます…。」
真梨耶「え?」
真梨耶さんがきょとんとした顔で俺を見つめる。
成世「自由は時に、狭まる時があるんです。」
真梨耶「………………。」
真梨耶さんは黙って聞いてくださってる。
成世「…確かに辛いんですけど、同時に誇らしく思えるんです!」
話し込んでもたな…。湿っぽいし…。あれは…。そうや!賭けてみるか!幸い真梨耶さんは気付いてへんし!
成世「それだけで充分だと思痛っ!」
よっしゃ!お子さん!おおきに!サッカーボールを俺の頭にぶつけてくれて!サッカーボールがベンチの側に落ちた。
子供「ごめんなさい!」
小学生くらいのが走ってきて謝ってくれた。親はおらんな…。一人で遊びに来とったんか。
成世「大丈夫大丈夫!でも気を付けようね!」
俺はサッカーボールを子供に手渡しした。
子供「はい!」
子供は俺と真梨耶さんに深く頭を下げた。そして走り去ってった。
横の真梨耶さんを見ると、笑っていらっしゃった。大成功や!
真梨耶「アハハッ!おっかし!気付いてないと思ったの?あの子の事見てたの知ってたんだから!ボールが飛んで来たた時にちょっと前屈みになってたし!」
気付かれとったんやな…。
成世「すいません…。」
何か急にフレンドリーになったな…。俺の事信頼してくださっとう証拠やな…。
真梨耶「ううん。良いよ!成世くん!」
名前でお呼びになったで!
成世「あ、ありがとうございます。…真梨耶さん。」
真梨耶「…ふふっ!今日はありがとう!またね!」
成世「はい!また…!」
真梨耶さんはベンチから立ち上がると、走り去ろうとした。俺は声を掛けて引き留めてみた。あの事聞かんとな…。
成世「あの!」
真梨耶さんは立ち止まり、俺の方を振り返っておっしゃった。
真梨耶「ん?」
成世「番組の休憩中に男が乱入したじゃないですか!昨日ニュースでその事報道されたの見たんですけど、番組に支障はないでしょうか?」
真梨耶「大丈夫だけど、前よりも警備を固める方針が立ったくらいかな。」
成世「良かったです!それぐらいで済んで。」
俺はそっと胸を撫で下ろした。真梨耶さんはそんな俺を見て、ニコッと笑っておっしゃった。
真梨耶「やっぱり優しいね。そのままでいてね?じゃあね!」
真梨耶さんは俺に手を振りながら走り出した。
俺も立ち上がって真梨耶さんに手を振った。それを見た真梨耶さんはニコッと笑うと、俺に手を振るのを止め、前を向いて走り去って行った。
【続く】
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