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第二章 続編 セネルス国の騒動
46 二国間会議 二日目
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《グレバリオ視点》
昨日から引き続いて、本日二回目のセネルス・テスニア会議を持った。セネルス側は昨日と同じ面々。テスニアでは昨日の私とローファートの他にオズワルド大将軍とヤイコブが加わった。
ヤイコブの後ろにはナハトが守護するかのように立っている。
ガルシアス王とオズワルドの眼の下にくまがあり冴えない顔色だ。あまり寝ていないようだ。
明らかに場違いなヤイコブの姿にセネルス側が不審な目を無遠慮に向けてきた。
「その男はどなたかな?」
大臣候補の貴族がついに訊いてきた。私はにやりと意地の悪い笑みを浮かべる。
「彼はエンベレ元将軍の軍属でダフドット第十二師団輜重担当のヤイコブという者だ」
反応は様々だった。何を言っている? とまるで理解できない顔もあったが、あっと思い出す者、警戒する者もいる。
ギムラサス卿も警戒した一人だった。彼は難しい顔をしたが、何も言わずにこちらの出方を待つ構えをみせた。
「ダフドットって、確か全滅したとかいう師団ではなかったか?」
「やはり、テスニアの奇襲って本当だったのか?」
ぼそぼそと貴族たちの間で言葉が交わされる。
「その件での生き証人だ」
私が声に力をこめると、ざわざわしていたセネルスの人々が静かになった。場を支配した感触に、躊躇なく切り札を出した。
「セネルスで先日、禁忌の古代魔法陣を使用したことが判明している。ダフドット隊師団と後続支援に駆け付けたカリサス隊師団はこの魔法陣の犠牲となって全滅した。これは、ここに同席しているヤイコブが目撃証人である。当時、我が国の西の砦を指揮していたロワクレスと、彼の要請を受けた私の指揮するテスニア軍が巨大化した魔法陣の被害を食い止めたのだ。貴方《きほう》らが展開した魔法陣は魔界から無尽蔵に魔獣を召喚し、なおかつ場を拡大していく恐ろしいしろものであった。これを放置していれば、遅かれ早かれ、セネルスを始めこの大陸は魔界に飲み込まれていただろう」
ざわざわと驚きのざわめきが走る。ここまで詳しい実情は知らなかったのだろう。
反論が上がる前に、背後のブルナグムに合図する。ブルナグムはセネルス軍キャンプ跡地で発見された魔法陣展開設置図と指令書をガルシアス王の前へと差し出した。
それを見るガルシアスの眼が大きく開かれた。その二書は他の面々にひったくられるようにして回される。
そこで、ヤイコブが立った。全員の注目が集まると、緊張に身体を震わせる。ナハトが横に来て力づけたようだ。
一つ生唾を飲み込むと、自分が目撃してきた惨状を語り始めた。
それは何度聞いても凄惨なものだった。
制御を離れた魔法陣がキャンプ地の人々の魔力を吸い取って自ら拡大し始め。
制御に向かった魔術師や将兵を青紫の蔓が捉えて魔力を喰い尽し。
魔法陣から夥しい魔獣が現れて、キャンプ地を襲い全滅させて、なおも周辺の村や森へと向かって行き。
後続の師団も同じように犠牲になり、その結果、魔法陣がさらに巨大に成長して、まるで魔界が現世へ出現したような。
その圧倒的な魔力にヤイコブ自身も座り込んで動くこともできず。
「とてつもなく恐ろしいものでした。そこはまるで地獄のようなありさまだったのです。魔法陣も付随する結界も巨大でして。テスニアの軍が命がけで破壊してくれましたが、そうでなかったらと、今でも恐ろしいです。あれは、この世に出してはならないものです。絶対にいけないものです!」
実体験した者の語りは説得力がある。
生々しい描写に、セネルスの者たちの顔色はどんどん悪くなる。気分の悪くなった者も出た。
ガルシアスも初めて聞くのだろう。その恐ろしさに血の気が失せ、固く握りこんだ拳が震えていた。
私はヤイコブに座るよう伝えると、改まった口調で告げた。
「昨日、直接関わったダーギラスに大神官が訊問し、全ての確証を得ている。ダーギラスもこの件に関し、全てを認めると証言した。ヤイコブだけでは不足なら、ここにダーギラスを連れてきて改めて証言してもらってもよい」
威圧的にセネルスの連中の顔を見回す。全員、顔色がひどく悪い。今にも卒倒しそうだった。私はひときわ声を大きくした。
「先日、この禁忌の魔法陣使用に対し、我が国からそちらの政府機関へ意見書と責任への対応を窺う文書を出している。それに関しては未だ応答は頂いておらぬ。政権が交代した折りでもあり、改めてセネルスの対応を伺ってもよいのだが?」
ここで、さらに追撃を。
「この禁忌の件を公にした場合、ボラードのボボルク大神殿を始めとして世界中の神殿の厳しい追及はまぬがれまいな」
おお、ますますひどい顔色になってきたな。そこここで引き攣らせた顔から吹き出る汗をハンカチで拭う様子を眺めやる。先ほどの恐怖からくるものとは違う意味での怖れに慄いているのだ。
神殿には世界にあまねく力を注ぐ精霊たちが祭られている。精霊を統べる存在が神であり世界を存続させている。これがこの世界の宗教観だった。ボボルク大神殿はこの神の神殿であり、世界の中心でもあった。
我々の命の源の魔力も精霊ひいては神の力の一部であるというわけだ。
ゆえに、神殿は必然的に各国の政治とは別次元の支配系列に属している――たてまえ上は。
神殿関連からバッシングを受けるということは、国家存続にも大きくかかわってくるから、セネルスの連中がゾンビのようになるのも、まあ、無理のない事ではあった。
ついでにオズワルドも眉間に縦皺を刻んで渋い顔をしている。馬鹿ではないから、話の流れが見えてきたのだろう。ざまあみろだ。
私は内心ふふんと鼻を鳴らして、ことさらに人の良さそうな表情を浮かべてみせた。
「もちろん、我がテスニアと貴殿らセネルスとは、どうやら良好な関係を築けそうではあるが? 私も友好国が困るようなことを敢えて表沙汰にはならないよう配慮したいと思ってはいるのですよ」
セネルスの者たちは息を吹き返したように、はっと顔が明るくなる。
「そ、そうですな。いや、テスニア側のご配慮には感謝いたしています。もちろん、我々も今後、貴殿の国とは是非とも優良な関係を結びたいわけでして」
「先の魔法陣の件でも、我が国の落ち度を速やかに対処していただいて、実にありがたいことです。今回の件もありますし、貴殿がたには度々のご助力を賜り、感謝の言葉もない。是非にもお礼をしたいと考えている次第で」
セネルス側が俄然、張り切りだした。感謝と友好の押し売りである。
「昨夜、ロワクレス・セナ・ザフォードを保釈して頂いたが?」
「も、もちろんです。そもそも、ロワクレス殿にはなんのお咎めも無いものを、拘束紛いの事をしてしまい、まことに申し訳ありませんでした」
「あの翼部分は丁度修理をしようとしていたものです。ロワクレス殿には何の落ち度もありません。むしろあれは正当防衛であると考えます。ですから、何の問題もありません。むしろ、不必要な監禁などしてしまい、お詫びを申し上げるのはこちらのほうです」
ギムラサス卿を始めとして主な要人たちがロワクレスの件を不問にすると口々に述べて、むしろ謝罪してきた。神殿からの弾圧を避け今後の友好なる外交関係と比べれば、ロワクレス一人見逃すなど容易いものだ。
「では、ロワクレスの件はこれで終了ということでよろしいですな?」
ガルシアス王へ視線を向けると、渋々ながら頷いてきた。こうなってはシュンとの交換条件はもう言い出せないだろう。
顔を強張らせ、泣きだしたいのを堪えているようにみえる。
少々可哀想ではあるが、これも人生経験だ。彼の本当の人生はこれからだ。きっとよい伴侶がみつかるだろう。
「友好の印と言ってはなんだが、我がほうの者が損害を与えたのも事実。修理代としていくばくかの金額を寄贈したいと考えている。ご笑納いただければありがたい」
「おお、それはありがたい。テスニア王国の懐の深さに感謝いたします」
ギムラサス卿が代表して受けた。
これで、ロワクレスの“事故”に関しては終わったな。
こちらが優勢な今のうちに、外交のほうもざっくりと煮詰めてしまおう。
私の合図で、ブルナグムが古代魔法陣展開設置図と指令書を回収し、ヤイコブはナハトとともに会議場を下がって行った。
輸出入の具体的な事案になった時、ローファートが意見を述べてきた。結界が得意な魔術師で優れた錬金術師かつ豪商の出。非常に自由な男だとリーベック老師が評していた。
確かに自由な男だった。彼のいきなりな提案に、私も唖然とする。
「そちらは広大な山岳地帯を抱えているね。鉄はその山岳地帯から採掘しているんだよね? どうでしょう? その山岳地帯の資源調査を我々にさせてもらえないかなあ? 僕は色々な鉱物を調べてきたんだけど、鉄鉱石が出る付近にはほかの資源もある可能性が高いし、他の有用な鉱山も発見できるかもしれない。そうしたらそれが貴重な輸出品になると思うなあ」
「だが、どうやって資源を探索するのだ?」
セネルス側の当然の質問に、ローファートは気楽な調子で答えた。
「テートを使ったらいいよ。彼のミンミンちゃん部隊にやらせれば、土の中はばっちりだよ」
遠くを見る目つきをしたブルナグムに訊く。
「ミンミンちゃん部隊とは? テートとは誰だね?」
「テートは西砦の魔物使いっす。ミンミンちゃん部隊とは、彼の使役する魔物でして、巨大なミミズ型っす」
「そうか……」
「釣るならやっぱり大ネズミっすかね。ハチミツは切れたし……」
ぶつぶつ呟くブルナグムの様子にあまり訊いてはいけないものを感じる。
ローファートの勢いに押され気味なセネルス側の連中を見ながら、新しい産業を興すのも交易を良好に続ける一つの方法かもしれないと頷いた。
昨日から引き続いて、本日二回目のセネルス・テスニア会議を持った。セネルス側は昨日と同じ面々。テスニアでは昨日の私とローファートの他にオズワルド大将軍とヤイコブが加わった。
ヤイコブの後ろにはナハトが守護するかのように立っている。
ガルシアス王とオズワルドの眼の下にくまがあり冴えない顔色だ。あまり寝ていないようだ。
明らかに場違いなヤイコブの姿にセネルス側が不審な目を無遠慮に向けてきた。
「その男はどなたかな?」
大臣候補の貴族がついに訊いてきた。私はにやりと意地の悪い笑みを浮かべる。
「彼はエンベレ元将軍の軍属でダフドット第十二師団輜重担当のヤイコブという者だ」
反応は様々だった。何を言っている? とまるで理解できない顔もあったが、あっと思い出す者、警戒する者もいる。
ギムラサス卿も警戒した一人だった。彼は難しい顔をしたが、何も言わずにこちらの出方を待つ構えをみせた。
「ダフドットって、確か全滅したとかいう師団ではなかったか?」
「やはり、テスニアの奇襲って本当だったのか?」
ぼそぼそと貴族たちの間で言葉が交わされる。
「その件での生き証人だ」
私が声に力をこめると、ざわざわしていたセネルスの人々が静かになった。場を支配した感触に、躊躇なく切り札を出した。
「セネルスで先日、禁忌の古代魔法陣を使用したことが判明している。ダフドット隊師団と後続支援に駆け付けたカリサス隊師団はこの魔法陣の犠牲となって全滅した。これは、ここに同席しているヤイコブが目撃証人である。当時、我が国の西の砦を指揮していたロワクレスと、彼の要請を受けた私の指揮するテスニア軍が巨大化した魔法陣の被害を食い止めたのだ。貴方《きほう》らが展開した魔法陣は魔界から無尽蔵に魔獣を召喚し、なおかつ場を拡大していく恐ろしいしろものであった。これを放置していれば、遅かれ早かれ、セネルスを始めこの大陸は魔界に飲み込まれていただろう」
ざわざわと驚きのざわめきが走る。ここまで詳しい実情は知らなかったのだろう。
反論が上がる前に、背後のブルナグムに合図する。ブルナグムはセネルス軍キャンプ跡地で発見された魔法陣展開設置図と指令書をガルシアス王の前へと差し出した。
それを見るガルシアスの眼が大きく開かれた。その二書は他の面々にひったくられるようにして回される。
そこで、ヤイコブが立った。全員の注目が集まると、緊張に身体を震わせる。ナハトが横に来て力づけたようだ。
一つ生唾を飲み込むと、自分が目撃してきた惨状を語り始めた。
それは何度聞いても凄惨なものだった。
制御を離れた魔法陣がキャンプ地の人々の魔力を吸い取って自ら拡大し始め。
制御に向かった魔術師や将兵を青紫の蔓が捉えて魔力を喰い尽し。
魔法陣から夥しい魔獣が現れて、キャンプ地を襲い全滅させて、なおも周辺の村や森へと向かって行き。
後続の師団も同じように犠牲になり、その結果、魔法陣がさらに巨大に成長して、まるで魔界が現世へ出現したような。
その圧倒的な魔力にヤイコブ自身も座り込んで動くこともできず。
「とてつもなく恐ろしいものでした。そこはまるで地獄のようなありさまだったのです。魔法陣も付随する結界も巨大でして。テスニアの軍が命がけで破壊してくれましたが、そうでなかったらと、今でも恐ろしいです。あれは、この世に出してはならないものです。絶対にいけないものです!」
実体験した者の語りは説得力がある。
生々しい描写に、セネルスの者たちの顔色はどんどん悪くなる。気分の悪くなった者も出た。
ガルシアスも初めて聞くのだろう。その恐ろしさに血の気が失せ、固く握りこんだ拳が震えていた。
私はヤイコブに座るよう伝えると、改まった口調で告げた。
「昨日、直接関わったダーギラスに大神官が訊問し、全ての確証を得ている。ダーギラスもこの件に関し、全てを認めると証言した。ヤイコブだけでは不足なら、ここにダーギラスを連れてきて改めて証言してもらってもよい」
威圧的にセネルスの連中の顔を見回す。全員、顔色がひどく悪い。今にも卒倒しそうだった。私はひときわ声を大きくした。
「先日、この禁忌の魔法陣使用に対し、我が国からそちらの政府機関へ意見書と責任への対応を窺う文書を出している。それに関しては未だ応答は頂いておらぬ。政権が交代した折りでもあり、改めてセネルスの対応を伺ってもよいのだが?」
ここで、さらに追撃を。
「この禁忌の件を公にした場合、ボラードのボボルク大神殿を始めとして世界中の神殿の厳しい追及はまぬがれまいな」
おお、ますますひどい顔色になってきたな。そこここで引き攣らせた顔から吹き出る汗をハンカチで拭う様子を眺めやる。先ほどの恐怖からくるものとは違う意味での怖れに慄いているのだ。
神殿には世界にあまねく力を注ぐ精霊たちが祭られている。精霊を統べる存在が神であり世界を存続させている。これがこの世界の宗教観だった。ボボルク大神殿はこの神の神殿であり、世界の中心でもあった。
我々の命の源の魔力も精霊ひいては神の力の一部であるというわけだ。
ゆえに、神殿は必然的に各国の政治とは別次元の支配系列に属している――たてまえ上は。
神殿関連からバッシングを受けるということは、国家存続にも大きくかかわってくるから、セネルスの連中がゾンビのようになるのも、まあ、無理のない事ではあった。
ついでにオズワルドも眉間に縦皺を刻んで渋い顔をしている。馬鹿ではないから、話の流れが見えてきたのだろう。ざまあみろだ。
私は内心ふふんと鼻を鳴らして、ことさらに人の良さそうな表情を浮かべてみせた。
「もちろん、我がテスニアと貴殿らセネルスとは、どうやら良好な関係を築けそうではあるが? 私も友好国が困るようなことを敢えて表沙汰にはならないよう配慮したいと思ってはいるのですよ」
セネルスの者たちは息を吹き返したように、はっと顔が明るくなる。
「そ、そうですな。いや、テスニア側のご配慮には感謝いたしています。もちろん、我々も今後、貴殿の国とは是非とも優良な関係を結びたいわけでして」
「先の魔法陣の件でも、我が国の落ち度を速やかに対処していただいて、実にありがたいことです。今回の件もありますし、貴殿がたには度々のご助力を賜り、感謝の言葉もない。是非にもお礼をしたいと考えている次第で」
セネルス側が俄然、張り切りだした。感謝と友好の押し売りである。
「昨夜、ロワクレス・セナ・ザフォードを保釈して頂いたが?」
「も、もちろんです。そもそも、ロワクレス殿にはなんのお咎めも無いものを、拘束紛いの事をしてしまい、まことに申し訳ありませんでした」
「あの翼部分は丁度修理をしようとしていたものです。ロワクレス殿には何の落ち度もありません。むしろあれは正当防衛であると考えます。ですから、何の問題もありません。むしろ、不必要な監禁などしてしまい、お詫びを申し上げるのはこちらのほうです」
ギムラサス卿を始めとして主な要人たちがロワクレスの件を不問にすると口々に述べて、むしろ謝罪してきた。神殿からの弾圧を避け今後の友好なる外交関係と比べれば、ロワクレス一人見逃すなど容易いものだ。
「では、ロワクレスの件はこれで終了ということでよろしいですな?」
ガルシアス王へ視線を向けると、渋々ながら頷いてきた。こうなってはシュンとの交換条件はもう言い出せないだろう。
顔を強張らせ、泣きだしたいのを堪えているようにみえる。
少々可哀想ではあるが、これも人生経験だ。彼の本当の人生はこれからだ。きっとよい伴侶がみつかるだろう。
「友好の印と言ってはなんだが、我がほうの者が損害を与えたのも事実。修理代としていくばくかの金額を寄贈したいと考えている。ご笑納いただければありがたい」
「おお、それはありがたい。テスニア王国の懐の深さに感謝いたします」
ギムラサス卿が代表して受けた。
これで、ロワクレスの“事故”に関しては終わったな。
こちらが優勢な今のうちに、外交のほうもざっくりと煮詰めてしまおう。
私の合図で、ブルナグムが古代魔法陣展開設置図と指令書を回収し、ヤイコブはナハトとともに会議場を下がって行った。
輸出入の具体的な事案になった時、ローファートが意見を述べてきた。結界が得意な魔術師で優れた錬金術師かつ豪商の出。非常に自由な男だとリーベック老師が評していた。
確かに自由な男だった。彼のいきなりな提案に、私も唖然とする。
「そちらは広大な山岳地帯を抱えているね。鉄はその山岳地帯から採掘しているんだよね? どうでしょう? その山岳地帯の資源調査を我々にさせてもらえないかなあ? 僕は色々な鉱物を調べてきたんだけど、鉄鉱石が出る付近にはほかの資源もある可能性が高いし、他の有用な鉱山も発見できるかもしれない。そうしたらそれが貴重な輸出品になると思うなあ」
「だが、どうやって資源を探索するのだ?」
セネルス側の当然の質問に、ローファートは気楽な調子で答えた。
「テートを使ったらいいよ。彼のミンミンちゃん部隊にやらせれば、土の中はばっちりだよ」
遠くを見る目つきをしたブルナグムに訊く。
「ミンミンちゃん部隊とは? テートとは誰だね?」
「テートは西砦の魔物使いっす。ミンミンちゃん部隊とは、彼の使役する魔物でして、巨大なミミズ型っす」
「そうか……」
「釣るならやっぱり大ネズミっすかね。ハチミツは切れたし……」
ぶつぶつ呟くブルナグムの様子にあまり訊いてはいけないものを感じる。
ローファートの勢いに押され気味なセネルス側の連中を見ながら、新しい産業を興すのも交易を良好に続ける一つの方法かもしれないと頷いた。
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