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第二章 負けられぬハンデ戦@賭けミニゲーム
17話
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17
ロング・ホームルームも終わり、休み時間になった。十二組のクラス員のほぼ全てが残る教室では、あちこちで、初対面同士のぎこちない会話が展開されている。
委員決めの結果にホクホクの俺は、教室のアイスをブレイクすべく、立ち上がろうとした。幸せは、お裾分けしないといけないからね。
しかし。ダンッ! ふいに現れた人物の両手が、俺の机を力強く叩いた。
「星芝くーん、ちょっーとお話があるんだけど、お時間頂けるかしらぁ。」
にっこりスマイルの未奈ちゃんが、俺を見下ろしていた。ゆっくりとした声は、妙に甘ったるかった。
突然の急接近にドギマギしつつ、「い、頂けますよ。いっくらでもどうぞ」と、ぼそぼそと返す。
俺のセリフが終わるや否や、未奈ちゃんは俺の右手の袖をガッと引いた。俺は転倒を避けるべく、未奈ちゃんが力を掛けるほうへ進む。
俺たちは教室、廊下と、周囲の視線を集めながら歩いていった。未奈ちゃんの歩行速度は異常に速く、引っぱられる俺については、「歩く」より「よろける」が正しいけれど。
人のいない階段を通り過ぎ、トイレまで達する。通り過ぎようとした未奈ちゃんだったが、ふいにストップ。男子トイレの中を覗き込み、ずんずんと侵入し始めた。
「ちょ、ちょっと未奈ちゃん。ここ、男子トイレだよ! 女人禁制だよ!」
「うっさい、あんたは黙ってなさい。女子トイレに連れ込むわけにはいかんでしょーが」
イライラしたような返答をした未奈ちゃんは、そのまま俺を引いていき、掃除用具入れへと入った。扉が自然に閉まって、未奈ちゃんと向かい合う。
「さーて、楽しい楽しい尋問タイムの始まりよー。どーして連行されたかわかってるわよねぇ。あんたさー、さっきの委員決め。私が手ぇー挙げたのを見て手ぇ挙げたでしょ」
未奈ちゃんの眼差しは、ビームが出そうなほど鋭い。うん、これはこれで可愛いな。新たな魅力発見。いやいや。そんな場合じゃないんだって。
「ちょっと未奈ちゃん。ぜんっぜん違うよ。早とちりしてもらっちゃー困る」
「ふん。早とちりも何も、あんた存在そのものがとちってんでしょ。で、何がどう違うのよ? 言ってみなさいよ」
「俺の手が挙がったのは、ほら、あれだよ。シンクロニシティ。ユング大先生が提唱した概念だよ。愛の集合的無意識で繋がった俺と未奈ちゃんの動作が、神秘の高次元で共鳴を起こして……」
バン! 怒り心頭の未奈ちゃんの左手が、俺の背後の壁を叩いた。未奈ちゃんに睨まれて、俺は固まる。
……こ、これが、噂の壁ドン。こんなに鬼気迫る状況でなされる物とはね。まったく、世界は広いぜ。
「おふざけもその辺にしときなさいよー。どー考えても、あんたは私に合わせて手を挙げたのよ。ってかあんた、空しくないの? ぜっっったいに振り向いてもらえない相手を追っ掛け続けてさー。フッラフラフラフラ、お好み焼きに乗ってる鰹節じゃあないんだからさ」
口を歪めた未奈ちゃんの表情が、呆れと怒りに染まり始める。
「いやいや、わかんないよ? 未奈ちゃんも俺と一緒にいたら、予想もしてなかった魅力を発見して、好きになっちゃうかもしれないし。人生何が起きるか、一寸先はまったくの闇なんだよ」
俺の理詰めの説得を聞いた未奈ちゃんは、だんだんと真顔になっていった。
「……わかった。じゃあ賭けをしましょう」
落ち着いた語調の未奈ちゃんに「賭け?」と聞き返す。
「明日の自主練の時間、ミニ・ゲームをするの。そっちは、あんたに十二組のCチームの二人を加えて三人。こっちは私と、私の出身チームの女子小学生選手の二人。あんたたちが勝ったら、あんたとデートをしたげる」
はっとした俺は、「え、マジで?」と聞き返した。
「その代わり私たちが勝ったら、あんたは私の言うことを、何でも一つ聞きなさい。どーお? 破格の提案でしょ? 女子選手二人に三人掛かりで勝ったら、憧れの美少女とデートができるんだもんねー」
未奈ちゃんの口調は、異常に間延びしていた。口角の上がった笑みは、俺を嬲るようだったが、俺のテンションは急上昇する。
三対二で勝ったら、未奈ちゃんとデート? 心、踊りまくりなんですけど。
「お、おう。ミニ・ゲーム、受けて立つよ。未奈ちゃんは今日から、デートで何を着ていくかとか、いろいろ考えといてよ。一生ものの思い出にしたげるからさ」
「あんたは、ミニ・ゲームでどんな悪足掻きをするか考えときなさい。一生もののぼろ負け試合にしてあげるから。時間は午後七時、場所はうちのフットサル・コート。コートの使用手続きは、私がしといたげる」
自信マンマンで告げた俺に、未奈ちゃんはクールに吐き捨てた。すぐに振り返って、男子トイレから出て行く。途中で男子と擦れ違ったけど、完全に無視だった。
未奈ちゃんの背を目で追う俺の胸に、疑念が渦巻き始める。
いくら未奈ちゃんが凄いからって、竜神のサッカー部でそこそこやれてる三人が相手だ。勝機はないだろ? どういうつもりだ?
……そうか、ミニ・ゲームでの敗北を口実にして、俺とデートがしたいんだね。素直に好きって、口にできないんだ。大丈夫。俺、そーゆーところも好きだからさ。
ロング・ホームルームも終わり、休み時間になった。十二組のクラス員のほぼ全てが残る教室では、あちこちで、初対面同士のぎこちない会話が展開されている。
委員決めの結果にホクホクの俺は、教室のアイスをブレイクすべく、立ち上がろうとした。幸せは、お裾分けしないといけないからね。
しかし。ダンッ! ふいに現れた人物の両手が、俺の机を力強く叩いた。
「星芝くーん、ちょっーとお話があるんだけど、お時間頂けるかしらぁ。」
にっこりスマイルの未奈ちゃんが、俺を見下ろしていた。ゆっくりとした声は、妙に甘ったるかった。
突然の急接近にドギマギしつつ、「い、頂けますよ。いっくらでもどうぞ」と、ぼそぼそと返す。
俺のセリフが終わるや否や、未奈ちゃんは俺の右手の袖をガッと引いた。俺は転倒を避けるべく、未奈ちゃんが力を掛けるほうへ進む。
俺たちは教室、廊下と、周囲の視線を集めながら歩いていった。未奈ちゃんの歩行速度は異常に速く、引っぱられる俺については、「歩く」より「よろける」が正しいけれど。
人のいない階段を通り過ぎ、トイレまで達する。通り過ぎようとした未奈ちゃんだったが、ふいにストップ。男子トイレの中を覗き込み、ずんずんと侵入し始めた。
「ちょ、ちょっと未奈ちゃん。ここ、男子トイレだよ! 女人禁制だよ!」
「うっさい、あんたは黙ってなさい。女子トイレに連れ込むわけにはいかんでしょーが」
イライラしたような返答をした未奈ちゃんは、そのまま俺を引いていき、掃除用具入れへと入った。扉が自然に閉まって、未奈ちゃんと向かい合う。
「さーて、楽しい楽しい尋問タイムの始まりよー。どーして連行されたかわかってるわよねぇ。あんたさー、さっきの委員決め。私が手ぇー挙げたのを見て手ぇ挙げたでしょ」
未奈ちゃんの眼差しは、ビームが出そうなほど鋭い。うん、これはこれで可愛いな。新たな魅力発見。いやいや。そんな場合じゃないんだって。
「ちょっと未奈ちゃん。ぜんっぜん違うよ。早とちりしてもらっちゃー困る」
「ふん。早とちりも何も、あんた存在そのものがとちってんでしょ。で、何がどう違うのよ? 言ってみなさいよ」
「俺の手が挙がったのは、ほら、あれだよ。シンクロニシティ。ユング大先生が提唱した概念だよ。愛の集合的無意識で繋がった俺と未奈ちゃんの動作が、神秘の高次元で共鳴を起こして……」
バン! 怒り心頭の未奈ちゃんの左手が、俺の背後の壁を叩いた。未奈ちゃんに睨まれて、俺は固まる。
……こ、これが、噂の壁ドン。こんなに鬼気迫る状況でなされる物とはね。まったく、世界は広いぜ。
「おふざけもその辺にしときなさいよー。どー考えても、あんたは私に合わせて手を挙げたのよ。ってかあんた、空しくないの? ぜっっったいに振り向いてもらえない相手を追っ掛け続けてさー。フッラフラフラフラ、お好み焼きに乗ってる鰹節じゃあないんだからさ」
口を歪めた未奈ちゃんの表情が、呆れと怒りに染まり始める。
「いやいや、わかんないよ? 未奈ちゃんも俺と一緒にいたら、予想もしてなかった魅力を発見して、好きになっちゃうかもしれないし。人生何が起きるか、一寸先はまったくの闇なんだよ」
俺の理詰めの説得を聞いた未奈ちゃんは、だんだんと真顔になっていった。
「……わかった。じゃあ賭けをしましょう」
落ち着いた語調の未奈ちゃんに「賭け?」と聞き返す。
「明日の自主練の時間、ミニ・ゲームをするの。そっちは、あんたに十二組のCチームの二人を加えて三人。こっちは私と、私の出身チームの女子小学生選手の二人。あんたたちが勝ったら、あんたとデートをしたげる」
はっとした俺は、「え、マジで?」と聞き返した。
「その代わり私たちが勝ったら、あんたは私の言うことを、何でも一つ聞きなさい。どーお? 破格の提案でしょ? 女子選手二人に三人掛かりで勝ったら、憧れの美少女とデートができるんだもんねー」
未奈ちゃんの口調は、異常に間延びしていた。口角の上がった笑みは、俺を嬲るようだったが、俺のテンションは急上昇する。
三対二で勝ったら、未奈ちゃんとデート? 心、踊りまくりなんですけど。
「お、おう。ミニ・ゲーム、受けて立つよ。未奈ちゃんは今日から、デートで何を着ていくかとか、いろいろ考えといてよ。一生ものの思い出にしたげるからさ」
「あんたは、ミニ・ゲームでどんな悪足掻きをするか考えときなさい。一生もののぼろ負け試合にしてあげるから。時間は午後七時、場所はうちのフットサル・コート。コートの使用手続きは、私がしといたげる」
自信マンマンで告げた俺に、未奈ちゃんはクールに吐き捨てた。すぐに振り返って、男子トイレから出て行く。途中で男子と擦れ違ったけど、完全に無視だった。
未奈ちゃんの背を目で追う俺の胸に、疑念が渦巻き始める。
いくら未奈ちゃんが凄いからって、竜神のサッカー部でそこそこやれてる三人が相手だ。勝機はないだろ? どういうつもりだ?
……そうか、ミニ・ゲームでの敗北を口実にして、俺とデートがしたいんだね。素直に好きって、口にできないんだ。大丈夫。俺、そーゆーところも好きだからさ。
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