私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
59 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

59、注目。

しおりを挟む



レオンハルト王子の声、そして内容に、会場がしーんと静まった。
まぁそもそも、今回の参加者自体が大人数ってわけじゃないんだけどさ。
私に視線が集まるのを感じて、緊張で体が強張る。


「かぜじゃないの?トレーとばしてきたよね?」


目をキラキラさせながら、シュトレイユ王子が身を乗り出して喋る。
うん、確かに助けを呼びたくて、トレーは飛ばした。
ちゃんとお城に届いたんだね、障壁を壊したとかは知らないけど!


「……火だと思います。火の壁作ってたし」

「火の壁…あれは、報告にもあげたが、土と火の合成魔法だった。……俺も火は使えるが、火だけではあんな高温が持続するものは作れないよ」


エルネストがやや呆れているような口調で、発言をすると、アルフレド宰相、つまり父様がお手上げ、とでも言うように肩を竦めながら訂正を入れる。

ふぅ、とため息のような音の後に、ゼンの声が響く。


「水を使ってユージアの治療してたよ」

「えっ!痛いの痛いの飛んでけーって、教会で腹に超痛い治療されたけど、あれは光じゃないの?」

「その前だね、監獄でお前の傷が深すぎて、出血を抑えるのに水の魔法で、断面を繋ぎ合わせてた」


ゼンは相変わらずの白い大きな猫の長毛種メインクーンの姿で、アメジストのような紫の瞳が可愛らしい。
その長くてふわふわの尻尾を、ゆらりゆらりと大きく揺らしながら近づいてくる。

……確かに、必死に治した。
必死だったから、とにかく助けたかったから、周囲を気にするとか、余裕すらなくて。
魔法とか久し…じゃなくて、今世では初めてだったから、とにかく慎重に失敗の無いように、とだけは思ったんだけど。
とにかく必死すぎて、それどころじゃなかったんだ。


「繋ぎ……って、聞いてるだけで痛いんだけど!僕、セシリアに何されてたの…」

「見てるだけでも、グロかったぞ?足、取れかけてたし。腹も抉れてたし……血もほとんど無かったし、息もほとんど……」


ユージアの表情が血の気の引いたと表すにふさわしい、まさに青い顔になっていた。
それに合わせるかのように辺りも、ごくり、と唾を飲み込む音すら聞こえてしまいそうなほどに、静まり返ってしまった。

注目、というか、私に集まる視線が痛いです。


「確かに起きたときに、凄い血溜まりはあったけど……あれってもしかして」

「もしかしなくても、全部、お前から流れ出た血だ」


あぁ、俗にいう致死量は軽くあったもんね……。
服が血染めになるくらいは、流れてたし。

傷口の以前に着けてた衣類だって、服としての機能を果たせないほどに、ぼろぼろになってたってことはそれだけ切りつけられてたってことだし。
……本当は大人達には、晩餐なんかよりさっさと、教会へ……主に主犯格への報復に動いてもらいたいくらいなんだけどさ、そういう立場も権力もあるんだろうし。


「それ、僕死んでる……よね!?」

「まぁ、意識無かったからな。おかげで治療の痛みも(感じて)なかっただろ?」

「いや、それ、痛みとか言ってる場合じゃ無いじゃないか……助かって、よかった」


ユージアは完全に顔面蒼白といった様子で、自分の腕で自分を抱きしめるようにしてる。
ゼンはアメジストのような黒目がちの瞳を、徐々に丸く、悪戯っぽく輝かせながら、ふんと息をついてその様子を見つめてる。


「セシリアに感謝だな。どう見ても手遅れだったから止めたのに、泣きながら、必死に治してたからな」

「止めないであげてっ!……ほんと助かって、よかったぁ~」


ユージアは顔面蒼白通り越して、半泣きみたいになってるのをゼンは、なぜか少し嬉しそうに喉を鳴らして見ている。
……いまはそうやって笑って話せそうではあるけど、本当に怖かったし、悲しかった。

自分よりずっと若い子が、さらっと用済み扱いで殺されてしまうなんて。
まぁ……見た目で言えば、セシリアわたしは3歳児だから、全くもって説得力はなさそうだけどね。
一応、助けた理由としては「事件のあらましを知るために」とはすぐ言えるように考えてはおいたけどさ、正直なところで言えば……前世の自分の息子と重なった。

日本あちらでは未成年は法で守られている。
そんな未成年が起こしてしまった事件の内容次第では、その守られ方に賛否両論あるんだろうけどさ。

ユージアに至っては、意志まで操られた上で使い捨てのようにされたというのが許せない。
だって、そもそも本人の意思ですらない。
やり直す機会どころか、自分の行動の結果の事件ではないんだもの。

もし、それが自分や、それこそ息子がその立場にいたとしたら…そう考えてしまったら「助けない」という選択肢はなかったんだ。
結局のところ、私の考えはこの世界では甘いみたいで、警戒したゼンから、ユージアとは奴隷契約を交わすことになってしまったのだけれど。

って、ふと顔を上げると、周囲の視線を完全に一身に浴びている状況になっていることに気づき、怖くなって、じり…と後退りをすると、ふわりと風を感じ、身体が浮かび上がる。

……うん、浮かんでる。

浮かんだまま、移動を始めて……腰と膝裏に何か抵抗を感じで、バランスを崩し尻餅をつく!と思って手をばたつかせた瞬間、視界に浮かんだ理由が姿を現した。

真っ白な繊細なレースのワンピースを着た、小柄で可愛らしい女の子に、軽々とお姫様抱っこされていた。
そのまま少し後ろに下がると、黒い袖の太めの…というか大人の腕に受け渡された。
ここのところ抱いてるのがユージアだったから、その基準で考えたら、大人はどの腕も太いんだけどね。


風の乙女シルヴェストルっ!」


ユージアの少し怒った声が聞こえた。
私を抱き上げている人物を睨んで、こちらを見ている。
ユージアの抱っこより少し視界が高い。


『え~、だってその子、怯えてるよ?みんなして、小さな女の子を泣かすなんて最低よっ!』


風の乙女シルヴェストルと呼ばれた少女は、ユージアに向かって、ベーっと舌を出す。
えっと…風の乙女シルヴェストル……風の上位精霊だったはず。
良いなぁ…私もお友達になりたい。
かなりフレンドリーな感じだったから、この会場に契約している主人がいるんだろうけど。

種族的にも精霊と相性が良い龍やエルフがいるし、王宮だもんなぁ。

ん?……そういえば、あれ?……父様は目の前にいる。
じゃあ私を抱き上げているこの腕は誰だろう?
確認するために顔をあげようとしたら、そのまま頭を胸へと優しく固定されるように、抱え込まれると、ふわりと白檀の懐かしい香りが鼻腔をくすぐった。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...