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はじまりはじまり。小さな冒険?
61、聖樹と。
しおりを挟む「私の管轄外ではあるのだが…20年ほど前に見た時は、有人での見張りが立っていたと記憶している」
管轄外。確かに管轄外だ。
魔術の研究機関の所長であるハンスイェルク が見張とかおかしいもんね。
適任はどちらかというと……実働の部門である騎士団の騎士達や父様達、魔術師団の魔術師だろうね。
そう思っていると、父様の後ろから声が聞こえてきた。
この場にいる、ということは王族の関係者なのか、もしくは宰相なのかな?
何にせよ、今回の件の真相を調べてくれている人になるのかな?
「あぁ、それはですね…前王退位からそして新王即位つまり、グレイシス王の即位のどさくさに紛れて、教会へ所有権が譲渡されていたのですよ。だから、新王として行政に従事された時点で既に報告が上がらないものとなっていたために、気づかれなかったのだと思います。なお、こちらは既に当時の担当者からの証言をもとに、数人を拘束してあります」
「これも教会がらみであったか」
そしてふと思い出した、ワンピースの隠しポケットをごそごそとして取り出したかったのだけど、頭からしっかりと抱え込まれてしまっているので、なんとかもぞもぞと動いて取り出す。
顔を上げると私が動き出したのが気になったのか、覗き込むルークと至近距離で目が合う。
微かに笑みをを浮かべて「どうした?」と首を傾げる様にされたので、握りしめていた手を広げて見せる。
「るーく、しゃま。これあげる。だいじ、でしょう?」
「あぁ、そういえばなんか貰ってたね」
胡桃の様な種が3つ。
すべて渡そうとしたのだけど、1つだけどうしても手にぴったりと張り付いて離れなかった。
……多分、聖樹の種。
育ててほしくて渡されたのだと思うから、それならエルフであるルークが適任だと思うんだよね。
「種……種か。託されたか。セシリア嬢…本人の素質であれば聖女なのだろうが、そうでなければ……君を花と見い出したのは相当な上位種のようだね」
「……ハンスイェルク。だから、セシリア嬢は龍の巫女だと話したよね?花だとわかってるなら、そう言うことだよ」
ふわりと青い髪の美貌の青年…少年?がにこにこと笑みを浮かべて姿を現した。
ここの国の守護龍のアナステシアスは、公式の場では青年、ある程度非公式だったり、くだけた場であるときは少年の姿をしている様だった。
「では、我が国の守護龍の…という事でしょうか?確かに守護龍の風の加護は感じますが」
「私じゃないよ。私には奥方がいるじゃないか。彼女が我が番だよ…唯一であって以外はない。あ、加護は与えたよ?見い出された時に。……キナ臭そうだったから」
『番』とは…
それぞれの種族にいるらしいんだけど、人間に関してはその嗅覚が退化してしまったのか、自ら見つけ出すことはすごく難しい、双方に対して唯一の存在。
中には番でしか子をなせない種族もいるから、かなり重要なことらしいよ。
あれだ、運命の人ってやつだね。
人間はその嗅覚が退化しちゃってるってのが困りもので。
まぁ、だから離婚とかあるんだろうけどさ……。
ちなみにその番ってのは、必ずしも同種族内でという区切りはないから、それこそ龍に対して、相手がエルフだったり、人間や獣人だってありうるんだよね。
そんなだから、番を見つけられずに一生を終えてしまうという場合もあるし、最初っから諦めて、親が決めた婚約者等々と結婚後に、まさかの番を見つけてしまい…というお話もよくあるそうで……まぁ、どう考えても修羅場だろうけど!
そう考えるとメアリローサ国の守護龍であるアナステシアスは幸運というか幸せ者(龍?)だね。
(でも、龍の番だというなら、それをそのまま言えばいいんじゃないかなぁ。龍の巫女とかわざわざ誤魔化す必要無いんじゃない?そうすれば、私も貴族の務めとか言われてる、家柄で選ぶ婚約とか、しなくて済むんだからある意味万々歳なんだけど)
なんか既に、王子との婚約が決まったとか、攫われる前に聞いてた気がするんだよね。
そう考えながら、アナステシアスを見ると、そのにこにこ笑顔にすっと影がさして、真面目な顔になる。
「正確にはね、私の子の1人が見い出した。ちょっと特殊な子でね。……ハンスイェルク、君たちエルフにも稀にいるだろう?上位格の因子を持って生まれてくるのが」
「まぁ、いるな」
『エルフの上位格』とは……
ハイエルフとかエンシェントエルフとか古代種っていわれる種族ですね。
エルフの血筋に連なるものではあるので、隔世遺伝とか突然変異的に発生するって聞いたことがある。
もしくは、長生きして強大な魔力を手に入れて、ランクアップするかのように体が変質してなれるとか、そういう感じで習ったな。
『龍の上位格』とは……
ドラゴン…まぁこちらでは竜だったり龍と呼ばれるものも古代種がいて、エンシェントドラゴン、龍帝とも呼ばれてたっけかな?
この種も、やっぱ突然変異的に遺伝の上から発生する場合と、自身の頑張りからランクアップする場合があったはずだ。
まぁどちらも絶対数が少ない種族のさらに上位格になるわけだから、ものすごく珍しい。
それと上位格だけあって、長い寿命はさらに長くなると聞いた。
ちなみにダンジョンなんかで敵としてこの種にあったら、素直に死を覚悟するレベルだし。
まぁ格が高いこともあってとても賢いからさ、だって今、目の前にいる、この国の守護龍であるアナステシアスより格の高い龍って事になるから。
あたりまえだけど意思疎通できるだろうし、そうそう敵対するようなことをしなければ、戦わなければいけないような事態にはならないというか、なり様が無いと思うんだけど。
なんかむかむかとしてきて、一言くらい文句言っても良いんじゃないかと思い始めてると、にこにことしながら、私の頭を撫で、周囲を見渡す。
「どういう嗅覚をしているのか、子の1人が殻から出た途端に離宮から一直線に飛び立ってしまってね。番を見い出してしまったんだよ……花だから、危険な目に合わせないために巫女としてそばにおく事になったんだ。セシリア嬢だって、こんなに小さいのに、番として、いきなり両親から引き離したくはないし」
「え……」
ルークにしては珍しく間の抜けた声が、出たのを耳にした。
なんだかとても呆れた空気が流れている。
一般的にいうと、成体として育つと番を探せるようになると聞いてる。
生まれたてであれば、まず成体ではないので、有り得ない。
ちなみに私はどう見ても3歳児なので、成体ではないですよ。
今になって、アナステシアスが夢で言った「マセガキ」の意味がわかった様な気がした。
どうやら私は赤ちゃん龍に一目惚れされたらしい?
「さて、ひとまず話を戻そう。セシリア嬢の属性と魔法についてだが、1つの仮定がある」
こほんと、咳払いする様に、ルークが話を切り替えようとする。
仮定……なんだろう?
なんかやばいこと言われませんように。
これ以上変な目で見られるのは御免ですよ。
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