私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

65、朝ですよ。

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ふわふわの久しぶりの温かベッドで寝てると、ベッドがガクッと揺れた。


「──ゼン、ゼン。そのまま、動くなよ……」


セグシュ兄様の声が聞こえた。


「これは…なんとも、可愛いな」

「絵姿に残したいわ……」


今まで聞いた2人のどの声よりも一番柔らかく、優しく喋る、王様と王妃様の声。


「しかし、正餐室せいさんしつにこのままにしておくのも……」

「ゼンがそんなに気持ちよかったのかしら…ふふふ」


ちょっと困ったふうの父様と優しく弾む母様の声。


「では、今日だけ特別に、子供たちは王子たちのお部屋にご招待しましょうね」


王妃の優しげな声が聞こえ、次の瞬間には柔らかで温かいベッドがさらに柔らかく沈み込む感覚があり、そのまま私の意識は夢の中へと沈んでいった。






******






……まぶたに光を感じて、うっすらと目を開ける。
見たことのない天井だった。


(そういえば離宮にお世話になってるんだっけ…それにしても)


ふわふわの毛並みの極上のベッド。……ん?毛並み?

寝ぼけまなこで起き上がろうとすると、きゅっと、細い腕に腰のあたりを抱きしめられる。
……柔らかくて細い腕、子供?

胸に…ぐりぐりという違和感を感じて胸元を見ると、金色の毛玉がもぞもぞとはりついていた。
布団のふわっふわの白い毛並みとはまた違った、つやつやさらさらの子供独特の猫っ毛のような細くて柔らかな髪。


(……誰だっけ?まぁいいや、綺麗な髪だなぁ)


その金髪の主は、私の胸に顔を埋め……れる、ような胸の膨らみは残念ながら今はまだ無いんだけど(まだ幼児だからね!?)私の胸に顔を押し当てて、すりすりしていた。可愛い。

しかし、本当に綺麗な髪。
昨日のもふもふに続き、これはまたとない機会かもと思い、そのサラサラとこぼれ落ちる金の髪を思う存分撫で回していると、少し撫で過ぎてしまったのか、その髪の主が、起きた。


「んん……っ!…う、うわああっ!?」


寝ぼけまなこであった深緑の双眸が、私と目があった直後、大きく見開かれ、悲鳴を上げられる。いや待て、この場合悲鳴を上げるなら、私の方でしょう……。


「あ、れおんはりゅとおうじだ!」


金髪の持ち主がレオンハルト王子だと気づき、思わず名を呼ぶと背後に人の気配があった。


「……レオンハルト王子、悲鳴の前に、その手!……何してるんですか、あははっ」


すごい勢いで、私に抱きついていた手が、引いていく。
あ、レオンハルト王子に抱きつかれていたのね。

レオンハルト王子の拘束がなくなったので、あらためて体を起こして周囲を見回す。
大きなベッドがあって、ふわふわの枕に……って、いつもよりさらに大きめのゼンだった。
ゼンのお腹を枕にして、その被毛に埋もれるようにして、私とレオンハルト王子の他に、シュトレイユ王子、エルネストとユージアが、長くてふわふわのゼンのしっぽを毛布に、すやすやと寝息をたてていた。

……大人の視線で見ると、子供達のそのあどけなく無防備な姿が、めちゃくちゃ可愛い光景だ。
私もだけど、みんなの服装もさり気なくスーツの上着が脱がされていて、首回りの飾りやタイ、ボタンも数段外されてあったのを見ると、可愛すぎて、それぞれの部屋に運び込むのが忍びなかったのだろう。
魔法でそのままの状態で移動させられたような感じだった。


(あれ、なんかユージアが……あれ?)


ユージアに少しだけ違和感を感じたけど、ひとまずはレオンハルト王子に声をかけていたセグシュ兄様にご挨拶。
セグシュ兄様は、ベッドのすぐそばの大きめのソファーで寝ていたみたいで、ソファーからこちらを見てにこにこしている。


「せぐーにいしゃま、おはようございましゅ」

「おはようセシー。レオンハルト王子も、おはようございます」


レオンハルト王子にも挨拶していなかったと思い、振り返って視線を向けると、顔どころか耳や首まで真っ赤にさせたレオンハルト王子がいた。照れてるのかな?可愛い。

4歳だと幼稚園年中くらいかな?
うーん、その頃のうちの息子たちは、照れる前に同じクラスの女の子たちにお世話されてる勢いだったんだけど……。
やっぱり、こっちは日本むこうと違って、成長が早いのか、ませているのか……あ、でも、成長早いなら、私のこの発音!なんとかならなかったんだろうか……。
同じ歳のシュトレイユ王子ははっきり喋れてるじゃん!この月齢で言えば、こういうのは女の子の方が羨ましいくらいに発達早かったのに……何故だ。


「れおんはりゅとおうじ、おはようございま…」

「おはよ…あっ!」

「セシリア!おはよう!かわいい!」

私たちの挨拶を遮るかのようにシュトレイユ王子の元気な声と、どんっと勢い良く視界が真っ白な布の塊に塞がれた。
さらにぎゅーっと圧迫されて、され過ぎて、窒息します……。


「ふっ…シュトレイユ王子、セシリアが窒息しますよ…あはっ」


セグシュ兄様、笑ってないで助けて……。
腕でシュトレイユ王子を少し押し返すと、ふわりと腕を解かれ、隣に座られる。


「ぼくも、なでてくれないの?レオン兄さまには、いっぱいしてたでしょう?」

「なっ……っ!」

「ぶふっ…そうだね…あははは」


ふわっと優しい笑みを浮かべて、シュトレイユ王子におねだりされた。
即座にレオンハルト王子が反論したかったのか、真っ赤な顔でこっちを見ていて、それをさらに少し離れたソファーにかけながら本を片手に大笑いしているセグシュ兄様。なんだこれ。

しかし、これはヤバイね。
歳の近い兄弟がいるとよくされるおねだりだけど、まさか同じ歳の子に言われるとは思わなかったわ……。

ていうか見てたんだね。いつから起きてたんだろう?


「しゅとれいゆおうじ、おはようございましゅ」

「レイでいいよ。おともだちだもんね!」


そう言うと再びぎゅーっと抱きつかれる。
シュトレイユ王子の頰が私の頰に押し当てられて、ふにふにされる。
視界の半分を埋めている栗毛のような淡い金の髪がふわふわと揺れる。

……近い親戚とはいえ、王子様の頭を撫で回すとか、しちゃっていいのだろうかと、少し思ったけど、まぁ、既にレオンハルト王子の髪も堪能させてもらったし、気にしないことにした。
手櫛の要領で頭頂から裾へと、なでなで。
シュトレイユ王子の髪は、レオンハルト王子よりも柔らかくて、幼児特有の柔らかさが強く、幸せな感触だった。

幸せに浸っていたところで、シュトレイユ王子の肩の向こうに、とんでもないものが見えた、見えてしまった。


「……セシリアはあたたかいね。これから…」

「ちょっと、ごめん…!」


ぐいっと、抱きついていたシュトレイユ王子をべりっと引き剥がし、そのまま奥へダイブした。


「いたた…」

「んっ…?は?……ああぁ…やめっ……!」


直後、あがる悲鳴たち。

……そして私の達成感。

シュトレイユ王子のすぐ後ろにあったもの。それは白から藤色へのグラデーションが美しい、ふわふわの……エルネストのしっぽ。

どうやら寝ている時は、耳もしっぽもしまわない、しまえないのかな?
がっしり捕まえて、もふもふもふ……。
撫でるたびにぴくぴくとしっぽの先が振れるのが本当に可愛いくて、一心不乱に撫で回す。


「……そろそろ、やめてやれ」


肩をぐいっと引かれて、振り向くと、なんともいえない顔の……少しまだ頰の赤いレオンハルト王子。

そして、視線を戻すとエルネストは顔を抱えるように隠して座り込んでいた。
襟ぐりから見えた首筋が、真っ赤に染めて。


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