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はじまりはじまり。小さな冒険?
75、抱っこ。
しおりを挟む「クロウディアさま?…フィリー……ねえさま?」
「いや、セシリアだ」
離宮から王宮まで、馬車移動にしてもやけに距離があるなと思ってたら、王宮を素通りして、龍の離宮へ直行してました。
エルネストを思う存分、撫で倒してる間に到着してしまったので、心の準備がまだです。ちょっと待ってください。
そう思いつつ馬車から降りると、出迎えになんとシュトレイユ王子が来てました。
シュトレイユ王子はフィリー姉様と面識があるんだね。
優しく素敵な笑顔で、猛毒を吐く姉様です。
(セグシュ兄様のすぐ上のお姉さんで、えっと……上から第四子、次女で4番目の子ですね)
凄く頭の回転が良いのだと思うのだけど、あの家族達の弾丸トークで向かうところ敵無しといった…まぁ、外では物凄い猫を被ってるそうなのだけど、家族内でのちょっとした喧嘩では必ず勝ってしまう。
セグシュ兄様曰く、可愛い子猫の皮を被った魔王なのだそうで、まぁ確かに兄様と1番歳が近いから、衝突もよくあるだろうし、毎度こてんぱんにやられていたというのも頷ける。
(逆にいえば、セグシュ兄様のあの外面の良さは、フィリー姉様直伝って事なんだろうね)
ちょっと欲張りな願いかもしれないけど、歳の近い兄弟も欲しかったなと、思えてしまうほどに兄弟は仲がいいんだけどね。
しかし、欲はかきだすと本当にキリがないね。
前前世の私は孤児が多くて、1人でも良いから親族や身内が欲しい、自分のルーツが知りたいと思った。
前世で初めて家族がある環境で、育つ事ができた。
それでも兄弟は無くて、一人っ子で、周囲の兄弟がいる友達が羨ましいと思ってた。
今世は家族がある環境に生まれて、さらに、たくさんの兄と姉に恵まれた。
それでも、今度は兄と姉達とは少し歳が離れているのが気になって、同年代の兄弟が欲しいと思ってしまっている。
『兄弟多いとさぁ、我慢すること多いよ?一人っ子が羨ましいよ』
『姉妹と歳が近いと、物の貸し借りどころか熾烈な取り合いになるから、喧嘩もしょっちゅうだし、気が休まらないよ?1人でゆっくり好きな事がいっぱいできるのって、とても羨ましいんだけど』
周りからはそう言われてたけど、無い物ねだりは本当に全てが羨ましく見えてしまうんだ。
実際体験したら大変なのかもしれないけどね。
「シュトレイユ王子、おはようございます」
「……本当にセシリア…なの?」
エルネストを抱き上げたままなので、略式のカーテシーでご挨拶。
……馬車から降りて、一応、到着したのでエルネストを起こしたのだけれど、そのまま寝直してしまったので、私が抱いたまま移動してたのでした。
重さ的に15キロくらいじゃないかなぁ
くてっと脱力されてるので、それ以上の重さに感じることもあるんだけど、まぁ抱き方にコツがあってね……しっかり固定ができるように抱ければ、軽いもんなんだよ。
それよりね、抱き上げてる子供の温もりが、寝息が本当に安らかで心地が良くて、幸せなのですよ。
本当は、シュトレイユ王子も抱き上げたい衝動があるのだけれど、事前に怒られてるので我慢することにした。
(でも、シュトレイユ王子も……可愛い)
エルネストよりさらに小さくて、幼児らしさがさらに強くて…可愛すぎる。
しかも今は、いつもの華のある笑顔ではなくて、セシリアの姿に驚いて、鳩が豆鉄砲食らったように、アクアマリンのきらきらとした綺麗な瞳をまん丸にして戸惑っている。それがさらに可愛い。
(ギャップ萌えとかいうやつだろうか?可愛すぎる)
思わず、頭を撫でたくなってシュトレイユ王子に近づきかけたところ、背後からぐいっとドレスを引かれて我に返る。
振り向くと、すごい勢いで顔を横に振るユージアが私のドレスをつかんでいた。
……危ない危ない、うっかり襲い掛かるところだった。
「……きょうは、レオンにいさまとぼくも、ユージアとエルも…まずは守護龍から、おはなしがあるって、よばれてるんだ」
「左様でしたか、ではユージア2人を頼んだよ。終わったらエルネストとユージアは魔術師団の執務室に私を訪ねてくれ」
「はい」
父様とは、ここでお別れのようで。
というか、これから仕事だから、魔術師団に行くんだね。
レオンハルト王子も来てるんだね。龍の巫女のお仕事のはずなのに、みんな集めて何が始まるんだろう?
「セシリア……くれぐれも粗相しないように気をつけて」
「大丈夫ですよっ」
……いつもの威厳のあるかっこいい父様はどこへ行ってしまったのか、何かすごく疲れた色のある表情で、お願いされてしまった。
赤髪の短髪が映える精悍なキリッとしたカッコ良さが……台無しですよっ!
「確実に大丈夫じゃない気がするんだが……」
「父様!絶対に大丈夫です!」
にっこりと笑って、その場でくるりと回ってみせる。
フレアの強いドレスが綺麗に広がって、楽しい。
そういえばゼンも龍の離宮にいるんだものね。
私のお友達が勢ぞろいってことになるんじゃないかな?
楽しみすぎて、にこにこがとまりません。
そんな私の様子を、眉間にできたしわしわを隠すように手を当てて黙り込む父様。
「ユージア……頑張れ」
「善処、します……」
え、ちょっと待って?
ユージアだって、中身は幼いんでしょう?
セシリアの中身は一応大人ですよ?
なんでこんなに信用してもらえないんだろう?
ユージアまで心なしかすでに疲れてるように見えるんだけど、そんなに悪さはしてないはずだよ?!
「と、とりあえず、中に入ろう?」
視界が変わると見え方も変わってくるってよくいうけど、本当だね。
視界に入る物全てが新鮮で楽しくて、挙動不審になりつつ龍の離宮へ突入した。
「おや、全員揃ったようだね」
龍の離宮に入って最初の大広間にある、ソファーセットから、青い髪の美少年がこちらを向き、笑顔で手招きをしている。
この人はメアリローサ国の守護龍アナステシアスなんだけど……今の私と同じくらいの背格好をしている。魔力測定会の時に見た姿は、青年といった感じだったのに対し、それ以降では中高生くらいの背格好をしていたんだよ。
やっぱりどうも非公式の場では、こっちの姿なんだね。
これが人化の本来の姿なのか、好みであえて年齢を下げているのかは謎だけど。
龍とかエルフとか、寿命が果てしなく長い種族は、人化した時の姿が人間で言う、1番体が充実している位で見た目の年齢が止まるんだ。
……まぁそれが気に入らなければ、ユージアのように魔法で手を加えればいい話なんだけどね。
基本的にそういう種族たちは魔力が高い傾向にあるので対応としては簡単にできるんだ思う。
「本日より龍の巫女として、お仕えさせていただきますセシリアと申します。よろしくお願いします」
エルネストを抱えたままだったので今回も略式のカーテシーで挨拶をする。
顔を上げるとアナステシアスが座っているソファーセットには他にも誰か座っているのが見えた。
近づくと、そこにいたのはソフィア妃とレオンハルト王子、……あとハンスイェルク。
……そして皆様、やっぱりお揃いでびっくり顔です。
「セシリア嬢、その姿は……?元に戻したほうがいい…身体への負担が大きすぎると思うよ」
「朝、起きたらこの姿でした。直し方が分かりません」
「……精霊魔法のようだけど、心当たりはない?」
そう言われて反射的にハンスイェルク へと視線を走らせる。
精霊魔法といえば、1番詳しそうなのがそこにいるじゃないですか。
エルフの専売特許のような魔法ですよ?
(お前が犯人かぁぁぁぁぁっ!)
そう思っていると、周囲も同じようにハンスイェルクを見つめる。
するとハンスイェルクは軽く首を横に振ると、何事もなかったかのように紅茶に口をつける。
「確かに精霊魔法は使えますが、その魔法に関しては、私の管轄外のものです。私の精霊たちでの解除は可能でしょうが……属性が合わないのでセシリア嬢にもかなりの負担ががかってしまいます」
「うーん、困ったね。それだと私がやっても同じで、負担がきついと思うんだよ。かけた精霊本人に解除させるか、私やハンスイェルクのように相性や属性考えずに魔力で有無を言わさずにねじ伏せるか」
精霊魔法がこの異常成長の正体だったのね。
それなら心当たりがもう一件あるから、それは後でいいや。
メイドさんが、私が抱えているエルネストをそのまま寝かせておくためにと、そっとそばに大きめのソファーを運んできてくれてたのだけど、エルネストも呼ばれたってことは、エルネストにも聞かせなければいけないお話なんだろうし、残念だけど起こすことにした。
「エル、そろそろ起きよう~?みんな集まったよ~?」
「うー……っ。ああ!せーしーりーあああああ」
私の肩口にちょうどエルネストの頭がある格好になっているので、背中を強めにぽんぽんとさすりながら、耳のそばで囁く。
エルネストは一瞬、寝ぼけたようだけど、すぐに状況を理解し……というか思い出したのかな?
一気に顔真っ赤にして怒っている。
「やっぱ可愛い!」
「おろせええええええっ」
あまりの可愛らしさに、降ろしてあげようとしていたのを止めて思わずぎゅっと抱き直してしまい、さらに怒られてしまった……。
やっぱ、いやいや期だねこれは。可愛すぎる。
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