私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

85、私の部屋。

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「とりあえずね、ルーク。……フリーだった1000年前ならともかく、私を『花』と知ってのこういう行動はどうかと思うよ?」


だってそれって、単なる横恋慕じゃん?
人間の私から見ると、いまいち意識や認識はできないけれど、番ってのは、最初っから恋人同士みたいなものなんでしょう?
『花』だからっていう条件をクリアしていたとしても、自分の番や相手の番に気持ちは?
そう考えると、あまり良いイメージは持てないのだけど。


「……花だった。1000年前も」

「へ?……私?」


不貞腐れたように、荷物を持って後ろをついてくるルークによって、明かされる真実。

学園内は人間以外の種族がごまんといた。もちろん人間もいたけどね。
人間以外にはわかる、というか、周囲を強烈に魅了し誘う香りを発していた私……。

……よく襲われなかったな!当時の私っ!


「1000年前も、見い出された花だった」

「自分の番に逢った記憶が全くございませんが……」


衝撃発言に、びっくりして振り向くと、私の反応に驚いているルークがいた。
「あれ、知らなかったの?」とでも言わんばかりなのだけど、知らなかったよ?


「人間は……探す力が退化してるからな……逢っても気づかなかったのかと」

「番と、というか誰とも恋愛沙汰になった記憶もございませんが……」


「そうか」とくすくすと笑い出すルーク。
亡くなるまで清い身体だったと自信を持って言えるぞ?
研究一色だったからね!


「君が人間の中でもさらに、鈍い感性の持ち主だということが、よくわかったよ」


そういうと、琥珀色の瞳に意地悪な色をたたえ、妖艶な笑みが浮かべる。


「ちなみにだが、私がシシリーという学生を知った時には既に花だった」

「えぇぇ……どういう事」

「……番が人間の場合はよくあることだ」


そう締め括られてしまうと、聞きにくいんだけど……当時の私シシリーの番って誰だったんだろう?
長命な種族の番が人間や、短命な種族だった場合は、死因が自殺や番に殺されたのでは無ければ、また番として生まれ変わってくるらしいんだ。

今の私セシリアの番は生まれたばかりだと聞いてるから、別の番ってことになるよね?
あれ、でも別の番でも今も昔も私が『花』だったと認識してるルーク。
あれ?どういうことだ?


「そういえば、ルークの番、今は?」

「フラれた」

「……は?…フラれたってどういう」

「私の番殿は今回も人間として生を受けて、探し出した時にはすでに人間と婚姻後だった。番であることは告げたが、そこで改めてフラれた」

「えぇ……」

「……まぁ人間の場合はよくあることだ」


こっちも!よくあることで締め括られてしまった!

まぁ、好きな人と結婚した後に「番だから」だなんて来られても、人間側からは判別つかないもんなぁ。
そうなるか。
逆に、本来の番であるルークの申し出を断れるくらい、幸せな結婚だったのかな?
……そうだといいな。


「……『花』としてのトラブルが嫌なら、次回、私は男として生まれてみるのも一考かもしれないわね」

「……それ、稀にあるから」

「あるの!?」

「同性の番という話ならいくらでも、ある。まぁ上位種族ともなると、性別不問な場合もあるからたいした問題ではないようだが」


……一瞬でも、なんて不毛な…と思った私は汚れているんだろうか。

ルークは私の反応を見てくすくすと笑い続けている。
番という人間には馴染みのないものに振り回されるのはシャクだけど、逆に人間以外の種族には当たり前の存在なのだから、知識を増やすという意味では良い機会なのかもしれない。

そう思いながら歩いているうちに、職員用施設の最奥にある、シシリーの執務室わたしのへやに到着した。


「ついた。……ちょっと不安だから、先に私だけ入室しても良い?」


扉を開ける前に、ある不安がよぎり、ルークに声をかける。
研究一色だったって言ったでしょう?
……つまり部屋の中は…汚部屋な記憶がありまして。

執務室兼『私室』だったのですよ……。
職員寮はちゃんとあって、そっちにも私の部屋はあったのだけどね。
少し遠かったから、この執務室でほぼ暮らしてた。


「危険なら私が先に見てくるが?」

「いいっ!そういう危険じゃないからっ!ちょっと待ってて!」


……脱ぎ散らかした衣類とか下着(!)とかあったら目も当てられないし!






******






ルークを廊下に待たせることにして、そーっとドアを開けて、ユージアを抱いたまま、隙間から滑り込むように入室した。

学園長室と同じボルドーの絨毯敷きの黒檀のアンティークな家具でまとめられた上品な執務室……執務机の脇に大量に畳まれて積まれた衣類…よし、見えるところに下着はない。

あとは……。


「なんだ、何もないじゃないか」


真後ろからルークの声が聞こえ、心臓が止まるかと思うほどに飛び上がってしまった。


「わあああっ!入ってこないでって言ったのに。びっくりした……」

「んん……どうしたの?」


私の大声で起こしてしまい、ユージアがモゾモゾと動きだしていた。
幼児って、起きかける時って寝起きは反り返るように全身で背伸びをするんだよね……可愛い。


「あぁ、ユージアごめん、まだ寝てていいよ。部屋についたところだから、ベッド用意するよ」

「うん……」


ぽんぽんとユージアの背をさすりながら、ソファーを向かい合わせにつっくけて置き、簡易の子供用のベッドを作り上げ、ユージアを寝かす。

この執務室という名のシシリーわたしの私室は、このメインの部屋から小部屋が左右に4つある。
本来であれば、研究室の分室や応接などに使うのだが……完全に小部屋すらも私室として使っていた。


一つは寝室、一つは小さな炊事場、一つは……あ。
ダメだ、後の二部屋は開けてはいけない。

ふと……ルークを見ると手に杖を持ち、臨戦態勢といった状態で周囲を警戒していたが、待てと言われた理由に気づいたのか、私と目が合うと吹き出すように笑いだす。


「執務室がまさかの私室になってるとはね……これは失礼した」

「……まぁ、私室にしてたのが今回は役に立ちそうで何よりですよ」


今度こそ、ついてこないようにと言い含め、個室のチェックを始める。


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