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はじまりはじまり。小さな冒険?
95、生まれ。
しおりを挟む「らしいよ?ユージアは父さん似の方がお得だよ?」
「どう…お得なの……それ。さらに希少過ぎて、また捕まりかねないじゃないか」
ハイ・エルフはエルフの上位種と言われている。
エルフの上位というだけあって、寿命も魔力も倍近く長いし、高い。
長命の代表格と言われる龍種よりも長命らしい…という噂だ。
……噂なのはごめん。
人間では実際に調べようがないし、そもそも存在自体がものすごく少ないから。
だって、エルフ自体が少ないのに、そのエルフの上位種だからね。
もっともっと少ない確率でしか存在しない。
「まぁ、エルフの男ってだけで希少だからな」
「……それで僕、ハズレって殴られたんだな。エルフだったら高く売れたのにって。そういえば、男は希少ってのは聞いたことがあるけど、そこまで珍しいの?」
里にいた時に、拐われ……あ、当時のユージアは、幼すぎてそういう事情はまだわからなかったんだろうなぁ。
そういえば、ルークもそこそこ幼い頃から学園にいた気がするんだけど、希少であれば里を出るのも難しかったんじゃ……。
環境の違いなのかな。
「そうだな……人口の比率がとにかく極端で、女性が10人いるとしたら、男性は1人くらいだから。まぁそれについては色々逸話があるくらいだな」
「逸話……ね。少ないからって男性を大事にしすぎたら、結果的に極端な男尊女卑思考になってしまって、人口維持どころか、里自体が崩壊したってやつだね。あ、あと、あれって本当?出生児の男女比は同じくらいなのに、男性は成人できないことが多いから『じゃあ、成人した者の性別を変えてしまおう』って薬を開発したっていうやつ」
エルフはね『里』という環境で集団で暮らしているのだけど、魔力と知識が人間よりずば抜けているから、魔法薬のエキスパートでもあるんだ。
基本は採取になるような薬草も、技術の向上により里の中で一部栽培が可能に出来たとか、なかなかに芸が細かい。
問題としては、とても閉鎖的であるということ。
エルフ自身も一部の人間から見ると商品価値があるからね。主に人買いにね。
そのために襲撃を受けてしまうということもあって、人間と友好的な里は少ない。
ただ、稀に市場出回る高機能な魔法薬は、エルフの里との交易品であることが多くて『他にはどんな魔法薬が作れるのか?』というのはとても気になるところなんだよ。
今の薬については、それこそエルフの逸話と共に、都市伝説のように語られる魔法薬。
実在するなら、どんな物なのか、見てみたいと思わない?
そう期待を込めつつ、ルークに視界を向けると、私とユージア2人の視線に気づいたのか、本に向けていた顔を上げて、にやりと笑みを浮かべる。
……これは悪巧みを考えてる笑みだ。
「本当。あるし、作れる。ただしあれは一方通行でね。男性から女性になれる…だけで」
「え、それって使ったら、余計に女性が増えるじゃん」
あるんだ。へぇ、作れるんだ。男性を女性にするだけなんだ~。
ルークはくすくすと笑い出すと再び視線は、本に戻っていってしまった。
……そういえばさっき『上位種であれば同性の番でもさして問題は無い』って言ってたもんね。
ルークはエルフの上位種だもんね……うわ…『花』…この場合はどっちが『花』だかわからないけど、上位種の番が『人間男性』として生まれてきても、ルークにとっては全く問題ないんだね。
そう考えに至り、軽く戦慄をしていると、相変わらず視線は本のままでルークが笑いながら呟く。
「そう。ただ、稀にある男性同士の番の救済措置として重宝されているから……あの時、ユージアにも使おうかと……ふふっ」
「冗談でもそういうのは、やめてっ!?」
……やっぱり。
ユージアとの再会時、そのまま『花』だと勘違いされたままだったら、即座に、その薬を使おうかと、作ろうかと考えたんだろうなぁ。
恐ろしい。
というか微妙に他人事にも聞こえないので、怖すぎる。
「冗談に聞こえない……というか、冗談言う人だと思う?」
「……思わない…けど今のは冗談だと思わせて?」
「だって、再会でいきなり襲い掛かられたんでしょう?その時に使われてたらどうするのよ……」
「あ~…あの時ね。クロウディア様もいたから安心してたのに、クロウディア様もお茶飲みながらにこにこ眺めてるだけだったからね……」
「えっ!母様……何してるの」
まぁ確実に『絵になるわぁ』とか思ってたんでしょうけど。
母様、そういうの好きだから。
BLっぽいのが好きとかじゃなくてね、綺麗なものが好きだから。
そういう意味で眼福だったんだろうね。
……現状でもかなり眼福だし。
中身はともかく、可愛いのと綺麗なのと。
この世界にカメラがあったら、間違いなく2人を撮りまくっちゃうよ?
ビデオも欲しいなぁ。
「そういえば女性同士の番って聞いたことないよね。女性の場合の救済措置って無いのかなって思うと不思議だよね」
「そもそも女性同士の番ってのを聞いたことがないかな~」
「まぁ、生活としては男尊女卑傾向の村や種族も多いが、こと生殖においては女性優位だからな。番だろうが同族婚だろうが、求愛は女性側が受け入れなければ成立しない」
あ、ルークは今の番に振られたって言ってたもんね……。
ってことは拒否もできるんだね。
ん?でも、番は運命の相手というくらいに惹かれ合うらしいから、そもそも振られることが稀なはず。
……人間てそんなに鈍いのかしら。
ちょっと自分の番相手に申し訳なくなるね。
シシリーの時は、全く気づいていなかったみたいだし、実は知らずに振ってたかもしれない。
そう考えちゃうと、ごめんなさいって感じだね。
『女性優位』かぁ。どっちが優れているっていう考えは好きじゃないけど…だって、苦手があるのなら助け合えばいいってだけでしょう?
……でも、そうだね、小鳥や野生の生き物の雄が、鮮やかな羽を持っていたり体格が良いのは、求愛行動で他の雄達よりも自分の優秀さをアピールして『選んでもらう』ためだって、テレビで見たことがある。
雌も、優秀な子孫を残すために……って『選ぶ』んだもんね。
ほとんどの群れのボスは雄なのにね。面白いよね。
「じゃあ『花』のセシリアが受け入れてくれたら、僕が自分の番を見つけられなくても結婚できちゃうんだね」
花が咲くようにふわりと、可愛らしく笑むユージア。
思わず「そうね」って返事をしそうになってしまったのだけど……。
……いや、ちゃんと自分の番を探しに行きなさいよ?
それと、そういう台詞は、私の膝の上に座っている、というか抱きついたまま言うものじゃないよね。
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