103 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
103、黒歴史。
しおりを挟む「細工はそれで終わりだよ。蓋を一度閉めたらまた見れるから……」
名残惜しそうに、まだ龍頭をかりかりと回し始めたので、回しすぎて壊す前に教えておくことにした。
しかし、感動させるどころか、どうもシシリーの情けないとこばっかり映り込んでた気がしなくもない。というか、自分の黒歴史を思いっきり見せつけられた気分だわ……。
達成感で気持ちスッキリどころか、色々と削られて、私が泣きそうです。
「ちゃんと使ってね?出来上がるまで、結構大変だったのよ?……箱の中に入ってるチェーンと金具を使えば、ズボンにもジャケットにも着けれるからね」
「ありがとう……」
布張りの小箱を手渡そうと、ルークに向かって突き出すと、ずっと手の上にあった懐中時計の蓋を優しく閉め、そっとポケットへ仕舞い込んでから、受け取り、中身を確認し始めた。
……渡した後で、思った。
これって思いっきり古代の魔道具だよね。
しかも画像……じゃなくて動画まで保存されているという。
内容がアレだけど。
性能で言えば国宝級になるんだろうか。一応、当時でも最先端だったはず。
恐ろしい価値になりそうだね。
……願わくば、ルークにとって、それ以上に価値のある懐中時計になれますように。
今も、この技術は残っているのだろうか?
(個人的に言えば、残っていて、さらに進歩発展してくれている方が嬉しいな)
ユージアとかエルネストとか王子たち……可愛い盛りのちびっ子がいっぱいいるからね。
動画に残したい。残せたら、親としてはすごく嬉しいと思うよ。
写真とはまた違う感動があるからね。
赤ちゃんの時なんて、育児に必死すぎてそれどころじゃなくてもさ、何年か経って動画を見ちゃうと、もう、可愛くて可愛くて。
画面に手を突っ込んで直接触れたらなと、切望してしまうくらいに幸せを分けてもらえるよ。
赤ちゃんは泣くのが仕事だから、よく泣くけど、外出先なんかで泣かれると……結構焦ったりで『周囲に迷惑かな』とかそういうのも考えちゃうと、精神的にぐったりしちゃうんだよね。
(育児ノイローゼじゃないけどさ、どうしても睡眠時間が足りない状態でずっと育児していくから、どんなに頑張ってもしんどい時期があるんだよね……そうなっちゃうと、泣き声を聞いただけでうんざり……って。一緒に泣きたくなっちゃう)
それがさ、数年経ってから動画で見るともう、とにかく可愛くて可愛くて……。
おもちゃで釣って、カメラに目線合わせて必死に笑わせて……って、頑張って撮った写真や動画より、泣き顔の方が目を奪われる。
できるものなら手を突っ込んで、あやしたい思いっきり触りたい。
……そんなことを考えてたら、ユージアをぎゅっとしたくなってきたぞ。
ていうか、今のユージアも動画に残したい!
さて、相変わらずルークは懐中時計の入っていた布張りの小箱を凝視中なわけですが、私は眠くなってきたのですよ。
時刻は昼下がり。どう考えても、ユージアと同じく『お昼寝の時間』です。
ルークに抱きつかれたりでぽかぽかだったのもあるんだろうけど、とにかく眠い。
ていうか、ルークも動画で泣かなかったにせよ、しっかり『泣きました!』って感じに目に充血があったり、前髪が不自然に跳ねちゃってるし。
「あーあ、ずいぶん酷い顔してるね……喜んで欲しいから、渡したんだからね?あんまり泣かれると、私も居た堪れなくなるから……笑って?」
ずっと無表情なルークに笑いかけてみる。
無表情だし無反応だし、さっきから気になってた顔に涙で貼り付いてしまった髪をはがして、サイドへ流そうと手を差し入れると、そのまま背を押されて引き寄せられ抱きしめられてしまった。
やっぱり抱きつき魔だった……。
隣に座ってる状態から髪を直そうとしてたので、そこから抱き寄せられてしまうと、思いっきりバランスを崩して自然と私がルークの首に抱きつくような格好になってしまった。
また逃げられない。
そして、温かくてヤバい。眠い。
私の肩に顎を乗せ、髪に顔を埋めていて呼気が熱くて……また泣いてませんか?
泣いてますよね?
(もしかして無表情なのって、感情を必死に抑えてるからとか?)
とりあえず、そろそろ解放してもらわないと、本当にこのまま寝てしまいそうなくらいにまぶたが重くなってきたので、ルークの背中をさするように叩いてみる。
「ルーク~、ちょっと落ち着いて?」
「……シシリーに、直接……言いたかっ……た……」
時間差で号泣きました……。
肩口にぽたぽたと雫を感じた。
「大丈夫、ちゃんと渡せて満足したから……大事に…じゃない、ちゃんと使ってね」
……ルークには申し訳ないのだけど、抱きしめられている温もりが心地良すぎて、意識失いそう。
なんとか早く落ち着いてほしくて、宥めるように背をさすってみる。
細く見えるわりに、やはりというかしっかり鍛えてるようで背にしっかりと筋肉の凹凸があった。
ここって筋肉がないと真っ平らなんだよね。
肩から背にかけての、ちょうど今私の手が届く範囲の筋肉はそれこそ、腕の動作を強化することができる部分だ。
そりゃあの重い剣を軽々と使えるわけだ。
……そうじゃない、眠気から全く関係ないことが次から次へと浮かんでは、意識が飛びそうになる。
「ごめん…ちょっと限界……お昼寝タイムです。ルークも顔洗っておいで……廊下の突き当たりのドア、大浴場だから……」
ふああ…と、我慢してたのにもかかわらずあくびが出る。
抱きしめられていた腕が解けたので、そのまま立ち上がると、ふらふらと自室へのドアへ向かい歩き出す。
すでに、視界が怪しい。
「ルーク、ごめんね。ちょっと休ませてね…おやすみなさい」
「あ…ああ……」
朦朧としながら、自室のベッドに潜り込もうとして、先客であるユージアが小さく丸くなってるのを見つけた。
もちろん、ほくほくと腕の中に抱え込み、私も意識を手放した。
……子供湯たんぽ、最高です。
裏拳とか蹴りとかたまに飛んでくるけど。
逆に、無意識にすりすりされたり、ぎゅーって抱きつかれたりもするんですよ。
幸せだよ~。
******
「んん~。あれ……?」
目を覚ますと、抱きかかえて寝ていたはずのユージアがいなくなっていた。
代わりに、ルークがベッドサイドの1人がけの椅子に腰掛けてこちらを見ていた。
「おはよう」
「ユージアは……?おは……って!えええええ!何その写真っ!?どこからっ?」
さっきまでの泣き虫ルークはどこへ行ったのか、にこりとその美貌に爽やかな笑顔で挨拶と……その手に持っていた封書からちらりと見えた写真に、私は絶叫した。
6
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる