私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

104、手紙。

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ほぼ黒歴史に近い、私のドレス姿!

なんで写真で残ってた!?
しかも変な顔してるし!
驚いたような、ものすごく居心地が悪そうな、何とも言えない顔。

……撮られた記憶はない。


「ユージアは風呂。この写真は、さっきの小箱に入ってた……綺麗だな」


少し意地悪な笑みを浮かべて、写真を私にもはっきり見えるように向きを直す。

写真の中のシシリーわたしは鮮やかな紫の髪をアップにして、藍色のドレスを着ている。
胸元に、着けるべきアクセサリーはつけておらず、いや、本当はつけてたんだけど、歩くたびに動くたびにきらきら、しゃらしゃらと胸元で動くものだから、無い胸に無駄に視線を集めている気がしたのと、普段アクセサリーなんてつけないから痒くなって……ホールを出てすぐに外してしまっていた。

ちなみにドレスも問題で、ルークは「綺麗」って言ってくれたけど、普段の服装から比べてしまうとかなり、ありえないほどに肉感的なドレスだったわけで。


(いや、あれ、ドレスって言ったって、布少なすぎだからね?自分の視界からでも、姿勢があまくなると胸の中身が見えかけた、というかささやかすぎて見えちゃうから!……見えないように、こっそり両面テープで貼り付けちゃう程度には、危険なドレスだった)


肩が思いっきり露出しているホルターネックの形状で、首の後ろで結いて上半身部分を支えている感じになっていて、背もだけどとにかく胸が深く大きく開き、さらにウエスト周りもタイトで体型がしっかりと出るタイプだった。
ストールもついてはいた…のだけど、やたらと透けるタイプで……私の体型や不安を隠してくれるという役目は、全くもって果たしてくれてはいなかった。

この日のためにとエスコートしてくれる相手から贈られたドレスなので、他のものを着るわけにもいかず、半ば発狂しつつ着付けた記憶がある。

ま……その上から魔導学院のローブを羽織ると、その薄いストールの裾がローブからぎりぎり出て、レースのようにふわりふわりと舞って可愛いし、ドレスもローブがあれば思いっきり見えることもないよね?
なんて安心してたら、ローブは入り口で回収されてしまうし、学園長も人気のある人だから、エスコートされて入場したあと時、あっさりとはぐれてしまうしで、初めての舞踏会は散々だった。


(周囲の視線がめちゃくちゃ怖かったし……もう二度と行くまいと心に誓ったのですよ)


案の定ではあるが、周囲から浮いていた。
悪目立ちしてたんだと思う。

……妙に避けられたのを良いことに、私は壁の花となった。
まぁ、ダンスも一般教養の授業でしか踊ったことがなかったので、誘われても困ってしまうのだけどね。

研究者としては、こういう場で出資者なんかを捕まえられると、有利に動けるっぽいけどねぇ。
無理だね。うん、私の性格を良い方に考えても絶望的に無理だった。


「こういうのも着るんだな。初めて見た……似合ってる」

「あ、ありがとう。私も初めて着たし……ていうか、そんな写真を入れた記憶がありません……」


ルークは寝起き早々に頭を抱える私を、面白いものでも見るかのように、楽しげにくすくすと笑い続けている。


「だろうな。箱の底に、この手紙と一緒に入ってたから」

「学園長……」


封蝋が、学園長のものだった。

布張りの小箱、その布張りの台座の下に、入っていたとか……いつ入れたんだろう?
ちなみにこのドレスの送り主も学園長。

それこそ、さっきの動画にあったルークの模擬戦があったお祭りの、成功を祝っての王城での舞踏会へと、学園長に誘われて参加した時のものだった。

騎士団員であるルークももちろん参加なので、もしかしたら会えるかな?とは思ったのだけど、結局会えずじまいだった。

大人気だったからね。模擬戦も大盛況だったし。


(いるのはわかったけど、とてもじゃないけど近づける雰囲気ではなかったんだよ)


……魔力測定会の時のレオンハルト王子のように女の子達にもみくちゃにされかける勢いで物凄い人だかりでね、さすがにあの人混みに混ざりたくはなかった。
無い胸を総動員して、頑張って着てるドレスから、いろいろポロリしそうだったし。

でも、それだけ人を集めれる、注目をされているってのも、やっぱりルークは凄いんだなって、頑張ったねって思えて嬉しかったから、満足だった。


(できれば、遠目でも姿を見たかったところなんだけどね)


スーツ姿って格好良いじゃない?
王城の舞踏会ともなると正服や礼服と呼ばれる、普段はあまり見ない、格の高いキチッとしたものになるから、素敵なんだよ。

しかもあの美貌のルークの正装ですよ?
周囲の令嬢どころか高齢のご婦人すら、頬を染めて見惚れてしまってたそうで……そんな評判が、広いグレートホールの端の壁の花の私にまで聞こえてきちゃうくらいですよ?
ちょっと見てみたかった。


(ていうか、ルークみたいな美人さんからの爽やかな笑顔とか、幸せな目覚めだったのに、まさかの黒歴史付き!……しかも犯人は学園長!ああああ~もう!)


思わず両手で顔を覆ってしまう。
そういえば、褒めたり持ちあげたりした後に、こうやって思いっきり落としたりオチをしっかり作ってくれる人だったわ……。
私、何か不興を招くようなことをしちゃってましたか?……ラディ学園長?


「見るか?」


私の様子に先程よりも楽しそうに笑いながら、封筒から数枚の便箋を出すと広げる。
ルークの様子からも、これはさっきの動画以上に何か、恥の上塗りになりそうなことが書かれているに違いない……そんな予感しかない。


『ルーク君、お誕生日おめでとう!……シシリーが「これは誕生日プレゼントだ!」と言っていたので、私も祝わせてもらうよ。言葉の足りないシシリーのために、私からもささやかながらプレゼントを用意したよ』


懐かしい、学園長の優しくて楽しげな声が響く。

これは……複数の人に聞かせたい家族への手紙や、パーティ時の祝辞なんかに使われるタイプの手紙だった。
書いた本人の声で再生される、まぁ、録音機能のある手紙です。

まだ、手紙の枚数はあった。なので、まだお話は続くのだろう。
そう思って、わくわくと耳をすましていると、なぜか学園長とシシリーわたしとの会話内容が流れ始めた。


『……しかし、何で時計にしたんだい?』

『あぁ、私よりもずっと永く一緒に居てくれそうだから。あの性格だもの。寂しくないようにね。それに、永く生きてると誕生日とか卒業とかそういう記念日って、忘れちゃうって聞いたので。誕生日くらいは、たまには思い出せるといいなって……あ、学園長、お砂糖も自動の設定ができますけど入れときます?』


かちゃかちゃと陶器の当たる音と、何かを作業中のような金属音。
あぁ、学園長室に置いてあった、ティーセットの微調整に行った日だな……この会話。
2人で向かい合って会話していた、というよりは、学園長は執務机で書類整理、私は応接テーブルでティーセットの微調整と、お互いの手元を見ながらの会話だから、微妙に棒読みみたいに聞こえる。



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