私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

125、会いたい。

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あの時にさらに前の記憶が蘇っていれば、きっと最高学府まで上り詰めたかもしれない。
あ……でも、それでもやっぱり主婦だったかも。

人生が変わった先で、旦那や息子たちに会えなくなるのは嫌だ。
とても幸せだったから、悔いはないし。


「辛い事だったか……?」


うっかり、前世にほんの自宅や家族の顔が一気に浮かび上がり、懐かしさとともにしょんぼりとしてしまった。
顔に出てしまったのかな?
ルークが心配そうに、私を見てる。


「あぁ、違うの。90歳まで生きたって言ったでしょう?珍しくお友達や家族にも恵まれた人生だったからね、思い出したらちょっと……寂しくなった。ごめん」


ごめん、と言い切る前に口が歪み、涙がぽろりと頬をころがりおちていった。

……本当に幸せだったの。
大好きな人たちがたくさんできて、お互いに大切にしあえて。


「もう、会えないのは……わかってるんだけどね」


貴方と出会えてから、毎日がさらに鮮やかで幸せな世界に変わった。

でも……ちゃんと見送ったじゃない。
ずっと、貴方を1人置いて先に逝きたくないって思ってたの。
だから、ちゃんと一緒に…最期まで側に居れて、見送ってあげられて、よかったって満足してたじゃない。


──記憶と想い、涙が、あふれて止まらない。


息子も孫もいるから、1人になっても寂しくないよ、貴方のおかげで大丈夫だよって、今まで本当にありがとうって、見送ったじゃない。
貴方と『最期は笑って見送る』って約束したから……涙が止まらなくて泣き笑いになってしまったけど、ちゃんと笑顔で見送れたじゃない。

……でも、やっぱり、また会いたい。


この幸せは、転生の条件に『次回は異世界へ』と入れた結果だった。
今回はその条件を入れてなかった。
そもそもその条件を付け足すべき、魔力も記憶も、その時に持ち合わせていなかったから。

すると元の世界へ戻ってきていた。と、いう事は、私の魂は異世界むこうではイレギュラーだったのだと思う。
そう考えると、旦那の生まれ変わりに会えるなんて事は、まずないんだろうなと……旦那は異世界むこうの魂だもの、こちらに渡って来る事はほぼ、無い。

手段があったとしても無理に呼び出すつもりも、無い。

幸せでいてほしいから。
私のわがままに巻き込んではいけない。


服の袖で拭っても拭っても、涙は止まらず、視界共有の酔いも影響したのか、あっさりと酸欠状態になってくらくらし始めた。


「ごめん、寝るね」

「こちらこそ……すまない」


ふらふらと、自分のベッドへと向かい、潜り込むと先に寝ているユージアを抱える。
熟睡中のユージアはぽかぽかで安心する……。


「気にしないでね。直近の記憶、に、なるっ…から、どうしても、感情の揺れ幅がっ、大きくて……」

「おやすみ」


ルークの声を聞いた後すぐに、すとんと寝てしまった。
泣き顔を見られるのが嫌で隠れたつもりだったんだけどね。
ユージアの体温に癒された、というか寝かしつけられてしまった。






******






……ふと目が覚めた。
というか、のぼせてたし、泣いてたし、で水分不足かなぁ…喉が乾いてる。

抱えていたはずのユージアは、腕から脱走して私のベッドと、ルークの寝ているベッドとの境い目で大の字になって転がっていたのが見えたので、毛布をかけ直してベッドから降り、執務室へと移動する。

水を飲むだけならゲストルーム側のシンクを使ってもよかったのだけど、音で起こしそうだし、執務室に大事なものを忘れてることを思い出したから。
ぽやーっとしながら執務室のソファーに腰掛けて、レモン水をオーダーして、隣を見つめる。


「ごめんね、寝てると言ったって1人は寂しいよね。遅くなっちゃったけど、迎えに来たよ」


聞こえてるかどうかはわからないけど、声をかけて卵を触る。
月明かりのような淡い光に調光された、擬似窓からの光を受けて、ほんわかと自ら光を放つように白く浮かび上がる卵。

保温の座布団の上に置かれていたので寒くはなかったかな?
ほんのり温かい。
ダチョウの卵より少し大きいくらいだった卵は、いつ起きるのかな?
気持ち大きくなってるような気がした。

レモン水を飲み干すと、そっと卵を抱えて私室へと戻る。

ベッドのそばに1人がけのサイドチェア……私が昼寝から起きた時に、ルークが座ってた椅子だね。
そこに卵をそっと置いた。
深めで布張りの、かなりクッション性の高いチェアだから、卵を置くとチェアが卵用の台座のように見えてちょっと笑えた。


「おやすみなさい」


卵をそっと触り、声をかけてからベッドに戻った。
ユージアは……毛布をかけてから出てきたのに、ものの数分で蹴飛ばしてしまったようで、私のベッドの足元のあたりに小さく丸くなって寝ているのが見えたので、引き寄せて抱えて寝直す。


(寒くなって縮こまるなら、毛布を蹴飛ばさなきゃいいのにね)


それでも蹴飛ばしちゃうのが幼児なんだけどさ……。

ま、そんな今のユージアは、私の抱き枕ですね。
持ち上げられたのに気づいたのか、一瞬ぐぐーっと大きく背伸びをすると、また寝なおしてしまった。
熟睡だね。
抵抗されずに素直に抱えられてくれるとさらに可愛い。

ま、寝相でかかと落としや、裏拳が飛んでくることもあるけどね。


「おやすみ」


月明かりのような淡い光からぼんやりと映し出されるユージアの頭を『いいこいいこ』と撫でたり、幼児特有の柔らかくて丸みのあるおでこから鼻筋、頬をつついたりと可愛らしさを満喫している間に、私もまた眠ってしまった。
やっぱり幼児の体温は癒される。
隣にいてくれるだけで安心するんだよね。






******






作業用の眼鏡を外して、大きく背伸びをすると、背中が大きくバキバキと音を立てた。


(あ……ここは執務室だ……夢?…まだ寝ぼけてるのかな私)


ここはシシリーわたしが私室に使ってるとこだ。


『よし!完成~やっと出来た!あとは画像入れるだけ!』

『あ、先輩、お疲れ様です。今回はまた、大奮発ですね…ルーク先輩いいな』


にこにこしながら、淡い紫色の髪の獣人の青年が、お茶とお菓子を応接テーブルに並べてくれている。
なんで獣人ってわかるか、それは簡単、この子はケモ耳を出しっぱなしにしているから。
そして、私が執務机で作っていたのは、懐中時計だ。


(……さっき、ルークにあげた懐中時計ってことは、やっぱ夢かな?)


確か……この時は誕生日が間近に迫って、必死になってたんだ。
彫金が難しくてね。


『今回は特別だからね!』


シシリーわたしは、獣人の青年……カイルザークに、にこりと笑って、自信満々に答える。
カイルザーク、そう、フレアが化けていた本人だ。
ルークも知っている共通の後輩。懐かしいなぁ……。


これは時期的には……そうだなぁ、多分、シシリーわたしが亡くなる少し前くらいだと思う。


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